「・・・迷った?」
「いっ、いっ、いえっ!確かこの辺り・・・」
廊下を突き当たると、どう見ても提督執務室とは程遠い、女子トイレだ。
提督執務室に案内する、と意気込む朝潮についていくこと30分。
ギクシャクと振り返る朝潮は、汗だくだった。
「えと・・・その・・・」
ぶるぶると肩を震わせながら、涙目になった円らな瞳を逸らしている。
何だか、こちらが申し訳ない気持ちになってきた。
その時、トイレの奥から水の流れる音、そして('ω')提督がハンカチで手を拭きながらやってきた。
「おや、朝潮ちゃん。こんなところで、どうしたのかな?」
「しっ、司令官~」
緊張が一気に解けたのか、提督に泣きつく朝潮。
探していた提督に会えたはいいが・・・
「・・・貴様、こんな所で何をしている?」
('ω')提督は、朝潮を撫でながらこちらに向き直った。
「おや、けんぺいさん。言ってなかったっけ?今日から呉チンの司令官になったんだ。だから、今日からここは、僕のおうち。」
いや、そういう意味で言ったのではないのだが・・・
「まあ、立ち話も何だから、新しい執務室においでよ。極上のオレンジジュースが手に入ったから、一緒に飲もう。」
朝潮と手をつなぎながら歩く提督に追従し、執務室へとやってきた。
新たな提督執務室は、とにかく広かった。
赤いカーペットが敷かれ、奥には提督用の小さな机が鎮座していた。
いや、決して机が小さいわけではない。この部屋が広すぎて、相対的に小さく見えるのだ。
執務室の応接用ソファに腰掛けると、朝潮がオレンジジュースを出してくれた。
口を付ける前に、本題を切り出す。
「先週の件──内通者の話だ。私なりに捜査し、3人まで容疑者を絞ってきた。」
提督はオレンジジュースに挿されたストローを咥え、頬を窄ませながら一気に飲み干す。
ふう、とため息をつく也、ソファにもたれ掛かって言い放つ。
「ぶっぶー、不正解」
「・・・なんだと?まだ、3人のうち、誰が内通者かは言っていないぞ。」
チッチッチ、と指を振りながら提督は首を振る。
「3人、てのが既に間違いだよ。何故なら、内通者はその10倍以上はいるんだから。」
頭が真っ白になった。
この組織に、敵がそんなに───
いや、冷静になれ、私。
「俄かに信じ難いな。そもそも、何故貴官が内通者の数を知っている?」
「──知りたい?」
提督が僅かに腰を上げ、懐に手を入れた。
刹那、背筋が凍りつく感覚に襲われ、私は無意識のうちに帯刀していたサーベルに手を掛けた。
つづく('ω')