寿司屋での密会から1週間が経った。
('ω')提督は、先日の戦勝武功者として勲章が贈られ、「中将」への昇進が決まった。
提督を煙たがっている上層部にとっては面白くないだろうが、大敗から逆転勝利を成し遂げた立役者である('ω')提督を昇進させないのでは、軍隊の拠って立つところである”信賞必罰”と矛盾する。
また、中将になった提督は、同時に呉鎮守府司令長官の辞令を拝命した。
少し前まで地方警備隊の、いち司令官に過ぎなかったのが、異例の出世スピードだ。
同時に、私も呉へと異動となった。
何故なら、私は('ω')提督の調査担当だからだ。
異動先の憲兵隊への挨拶を手短に済ませ、呉鎮守府へと向かう。
『──そ。お察しの通り、味方に内通者がいる、てこと。』
先週から、ずっと考えていた。
あの時の('ω')提督の言葉。
──”内通者”の正体。
私は「誰だ」と迫るも、('ω')提督は「宿題だ」とばかり、答えなかった。
今日は、その時の答え合わせをしに行く。
私なりに調査し、ある程度の姿形が見えてきたからだ。
呉鎮守府は、業者のトラックが慌ただしく往来していた。
引っ越し作業真っ只中、といったところだ。
そんな中、長い黒髪の少女の後姿を見つけた。
磯風だろうか?
おい、磯風と呼んでみる。
すると少女は素早く回れ右をし、踵を揃えてビシッと敬礼した。
その瞬間、彼女は磯風ではないことがすぐにわかった。
何故なら、磯風はこんなにキビキビと敬礼しないだろうから。
「はっ!私をお呼びでしょうか?であれば私は朝潮型駆逐艦一番艦・朝潮です!」
その幼さが残る小さな顔から放たれる眼光は、まさに「ド真面目な軍人」のそれだった。
「そうか、間違えてしまったか。」
「はい!朝潮です!申し訳ありません!」
何故か謝罪された。普通、謝るのはこちらなのだが。
気を取り直して、提督の執務室を尋ねる。
「了解しました!この朝潮が、提督執務室までご案内します!」
再度、軍人のお手本とも言うべき節度ある敬礼を見せた後、くるりと回れ右をして、少女は歩き出す。
そのあどけない容姿と、士官学校の生徒のようにキビキビ歩く行動のギャップに、ふと笑いそうになるのを堪え、後をついていくことにした。
つづく ('ω')