港町の、少し町外れにある、なんてことない寿司屋だ。
仮にも帝国海軍少将。提督という肩書を持つ高給取りなら、もう少し高名な寿司屋を使ったらどうなんだ?
という余計なお世話は置いておき、私も寿司屋の戸を開く。
「お待ちしておりました、憲兵さん。どうぞ、こちらへ。」
出迎えたのは、秋月だ。
奥では('ω')提督が手招きをしている。
なるほど。尾行も気づかれていた、ということか。
私は制帽を脱ぎ、コートを秋月に預けると、カウンターに座る('ω')提督の隣に座した。
奥の座敷では、('ω')提督の艦娘が数人見受けられた。
「ささ、まずは一杯。」
('ω')提督から差し出された熱燗に口を付け、早速本題を切り出す。
「で、どうやったんだ。空母と護衛の駆逐艦が数隻の、1つの機動艦隊だけで。」
「大将~、えんがわ一つ~」
「アイヨッ!!」
すぐにえんがわが出てくる。
「・・・おい、聞いているのか?」
('ω')提督はガリをつまみながら、あっさり答えた。
「味方に囮になってもらったんだよ。ついでに私自身も」
──なんだって?味方と自分を、囮に?
意味を飲み込めずにいる私を見て、('ω')提督が続ける。
「まぁ、それだけじゃないんだけど・・・ここから先は、タダじゃないよ。大将~、イクラお願い、艦娘の分もね~」
「アイヨッ!!」
2秒でイクラが人数分出てきた。この大将、タダものでは無い・・・
「わかったよ。ここは私が奢ろう。」
その言葉を待ってました、とばかりに('ω')提督がニヤっと笑う。いや、常に無表情だから笑っているのかわからんが。
「よーし、聞いたかみんな?今日はけんぺいさまのオゴリだ、じゃんじゃん頼め!」
奥の座敷から黄色い歓声が聞こえる。
だが、私は自身の軽率な言動に、後悔することになった。
わいわいと湧き上がる艦娘の中に、ただ一人、静かに目を輝かせる艦娘。
──空母・赤城の姿を見たからだ。
つづく ('ω')
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2021-04-16 06:09:54 +0000 UTC