4月7日。その日は朝から薄暗い曇りだった。
憲兵隊本部庁舎に出勤すると、何だか空気がピリついている。
すれ違う人は皆、落ち着かない。各所で怒号も飛び交っていた。
「一体どうしたというんだ」
デスクに着くと、同僚の憲兵に聞いてみる。
「わからん。だが、噂は耳にした。」
「どんな噂だ」
「先週ミッドウェー方面に出撃した、7個艦隊から成る大艦隊。全滅したらしい」
──血の気が引いた。
先月まで負け続けであった人類は、ここのところ局地的にではあるが深海棲艦に勝利を収めつつあった。
そこで気を良くした軍令部は、深海棲艦の拠点があるMI海域に対し未曾有の大攻勢に出るべく、全戦力の3分の2を投じた作戦を立案した。
その内容は馬鹿げたもので、軍令部のお偉方の「我々は、1個艦隊で深海の化物どもを蹴散らせるようになった。それが7個艦隊束になれば、敵の根拠地をも簡単に落とせるだろう」といった安易な考えに起因している。
今、MI海域に攻め込む戦略的価値はない。
それよりも、まずは近海の制海権を確立し、通商ルートを確保するのが先決。
用兵の基礎ともいうべき戦略を、連合艦隊の提督らもよくわかっていた。
だが、上からの命令とあらば出撃するほかない。
私は出撃する提督らの姿を、式典の陰から見ていた。
その中には、あの('ω')提督の姿もあった──。
つづく('ω')