船内は人の気配が全くない。これだけの大型艦、通常であれば乗員は300人は下らないだろう。
磯風に連れられ、とある部屋の扉の前に到着した。
「ここだ。この艦の、提督執務室だ。」
先程までのひとけの無さとは、まったく逆だった。
この扉の向こうからは、物凄いプレッシャーを感じる。
今まで数々の修羅場を潜り抜けてきた私が、まだ見ぬ人物に恐れている・・・?
('ω')少将とは、それほどの人物なのだろうか。
私は意を決し、扉を開けた。
そこにいたのは、長い黒髪の少女と、軍服を着た、謎の・・・
「おやおや、どなたかな。客人が来る予定は、無かったはずだが・・・?」
なんだこの変な生き物は。
人間・・・なのか?
確かに四肢はある。ただ、顔が・・・半角記号だけで作れるような、とても簡単な作りだ。
その得も言われぬ無表情。何だか恐ろしさすら覚える。
私はふと我に返ると、すぐにピシッと背筋を正す。
そう、私は憲兵。弱みを見せてはいけない。
「私は憲兵だ。('ω')少将、貴官の司令部を担当することになった。今後は憲兵隊が、貴官並びに貴官の司令部を監査することになる。」
('ω')少将は、表情を全く変えない。
「へぇ、けんぺいさん。どうぞよろしく。」
差し出された手に、一瞬躊躇いながらも握手を交わす。
──なんだか、ヌメヌメしている。
「せっかくだし、紅茶でも飲んでいく?イギリスから良い茶葉を取り寄せたんだ」
ティーポットから、良い香りの紅茶が注がれる。
「いや、結構。本日は挨拶に来ただけだ。これにて失礼させてもらう」
('ω')少将は、相変わらずの表情で淹れた紅茶を啜った。
「そう、残念。秋月、けんぺいさんを外まで送って差し上げてくれ」
「はい、司令!了解しました!」
秋月と呼ばれた長い黒髪の少女に案内され、船を後にした。
これが、私と('ω')提督の、最初の出会いだった。
ただの艦隊司令と、憲兵。
だが、「あの事件」から、私達の関係は一変することになった。
──忘れもしない、ある年の4月7日のことだ。
つづく('ω')