「──由良は、鎮守府に来る前は、もともと憲兵隊所属の艦娘だったんです。」
私は皿に盛られたイバラキングに爪楊枝を刺そうとした手を止めた。
いきなりビッグニュースではないか。
「提督がまだ准将で、地方警備隊の司令官だった時の話です。
当時提督は大本営から”危険因子”としてマークされていました。
何せ、過去の記録が一切ないんです。
いつ海軍に入ったのか、どうやって戦果を挙げて准将まで上り詰めたのか。
それで当時憲兵隊所属だった由良が、提督の調査として、警備隊に派遣されることになりました。」
──やたら詳しいな、と思ったが、話の腰を折るわけにはいかない。このまま続けさせた。
「由良は艦隊から派遣された顧問艦娘、ということで警備隊に来たのですが、演習中に鎮守府近海で ”予期せぬ” 深海棲艦との遭遇戦となり、その戦いで由良は ”何故か” 深海棲艦から集中砲火を浴びて艤装が大破し、浸水を止めきれずに沈んでしまったのですが・・・」
「目が覚めた由良は、浜辺に横たわってました。隣には、ずぶ濡れの提督が。」
「何だかロマンチックじゃありません?」
「この一件で、由良は提督に厚い信頼を寄せるようになり、以降は憲兵隊に『まだ調査が必要』だとか『もう少しで重要な証拠が掴めそう、鎮守府での調査を続けさせてほしい』だとか言って、今まで('ω')提督の艦隊に居座り続けてたんです。」
──ちょっと待て。何だかおかしいぞ。
夕張は当時、まだこの鎮守府にはいなかったはず。
だが彼女の口調っぷりは、まるで当時自分もそこにいたかのような”体験談”だ。
そして、ひっかかるのが訓練中の遭遇戦の時の話だ。
”予期せぬ”遭遇戦、”何故か”集中砲火を浴びる・・・
一見して普通の文言だが、遭遇戦は予期せぬものだし、艦隊戦の中で集中砲火を浴びることも珍しいことではない。
まるで、深海との戦いは「予定にはなかった」ことで、由良が集中砲火を浴びることも「シナリオ外の出来事」だった、と言っているように聞こえる。
私の調査官としての勘が囁く。この女も、何か隠している。
つづく ('ω')