この駆逐艦は知っている。
白露型二番艦、時雨だ。
手を動かすのも億劫な私はオレンジジュースに目をやり、これは君が?と問う。
彼女は微笑を浮かべただけで、私の質問には答えなかった。
「提督から依頼を受けたようだね、憲兵に探りを入れろって。」
私も彼女に倣い、何も答えなかった。
「でも、今は別の事に興味が移っている。──提督の秘密について。」
彼女はゆっくりと歩み寄ってきた。
「違うかい?」
アイスブルーの瞳が私を捉えて離さない。
私は未だに、何も答えないでいた。
否、答えられなかった。
今となっては恥ずかしいことだが、この華奢な少女の放つ言い知れぬ不気味さに、言葉を発することができなかったのだ。
しばらくして、彼女は私から離れた。
そして踵を返すと、私に忠告を放った。
「提督のことは、調べないほうがいい。きっと、後悔することになるから。」
動けぬ私を尻目に、彼女は部屋を後にした。
つづく ('ω')