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暴虐王女の国2-①【酒場の看板娘ミシェルの受難編】

①女王が統治する国  かつてその国には暴君と呼ばれた国王が居た。  国民に重税を課し逆らう者を容赦なく処刑する悪逆非道な王……。その当時の事を暗黒期と呼ぶ国民も少なくはないが、国民にとって幸運だったのはその王が短命であったという事だった。  噂では……国の現状を憂うとある地下組織が国王を暗殺する為に刺客を差し向けた……という出所不明の話も度々囁かれているが、その真偽を知る者は誰もいない。  国王の死因は公表されず、間を置かずに王妃が20代目の国王として戴冠した為その話はうやむやにされ口に出す事も憚られる世情になってしまったのだ。そうであったが故に、今も“実は女王が暗殺したのでは?”という噂がまことしやかに囁かれ続けている。  暴君であった前国王の死後、即位したルイーザ女王は気品があり気性も穏やかであった為すぐに人々からの支持を得ることが出来た。  彼女は国民の税を軽くし、国民を“臣民”として大事に扱い、可能な限りの国民たちの要望を聞き入れてきた。  それは、王として当然の事をしたに過ぎないのだが……前国王の圧政が酷いものであったのが幸いしてか、普通の事をしただけでも国民は歓喜しルイーザ女王を救世主であるかのように奉る者までいるほどだった。  ルイーザ女王は前国王とは違い物欲が無く食事も娯楽も粛々と嗜む程度しか行わず、国民の為に経済を回す事を最優先に国庫を開く政策をとり続けた。それ故、国民も彼女は聖女であると崇める者もいたそうだが……それは“表向けの顔”である事は言うまでもない事だった。  表向きには国民ファーストな聖人君主的な振る舞いを取っているルイーザであるが、彼女もあの暴君の隣の席で彼の愚行を眺めていた人物の一人だったのだ……  前国王の残虐性を知って尚寄り添っていた彼女もまた、自身の中に眠る残虐性を隠して女王として君臨した。表向きにはその残虐性は隠されていたが、一歩国民からの視線が届かない場所へと踏み入れると……その抑え込んでいた残虐性を隠そうともせずに露わにしている。  特に、国家に歯向かう人間や自分を裏切った人間には容赦などしない……  彼女はそういう人間を好んで捕らえさせ、自分の“欲望のはけ口”として利用しているのだ。  その矛先として槍玉に挙げられたのは、前国王の体制に反感を持って台頭していた革命派の組織達であった。  女王は革命派の組織を国の脅威であると認定し、厳しく罰する事を公言した。  そして、女王を聖女だと崇める国民達にその仇敵を見張らせ、捕らえて連れて来た者には賞金を与えるという待遇までも約束した。  これにより……その国は臣民による“革命派狩り”が横行し、女王の裏の顔を知る多くの同志が捕まる事を余儀なくされた。  その中の一人に、ミシェルという若い女性の名があった。  彼女は酒場の看板娘として働く一方で、地下組織への情報伝達係を担う立場を与えられていた。  情報調査員と地下組織【深紅の鈎爪】との連絡調整役という表の世界と裏の世界の狭間で情報を橋渡しするのが彼女の役割であったが、しかし組織の人間とやり取りを行っている現場にタイミング悪く憲兵が現れ連行されることを余儀なくされた。  タイミングが悪い……というのはミシェルが抱いた最初の印象だったが、しかし彼女に憲兵をけしかけたのが組織の人間であったはずの“エリィ”であったと分かり彼女は怒りに打ち震えた。  数年前に女王によってエリィが捕らえられたという旨は彼女も知っていた事だったが、捕まったはずのエリィが釈放されて街に戻っていたというのは聞き及んではいなかった。  いつ解放されたのか……何故女王の許しを得る事が出来たのか? その様な疑問は解消されないままにミシェルとエリィは再会を果たす事になったのだが……その時エリィは切羽詰まった顔でミシェルに組織との橋渡しを要求してきた。  自由になれたからもう一度組織のメンバーに加えて欲しい……と言うのが彼女の願いであり、組織との繋がりが絶たれたからもう一度繋ぎの場を用意して貰いたい……と懇願されたものだから、ミシェルはそれを了承してしまった。  エリィと言う人物は、妹思いで忠義に厚く真面目で芯の有る人間であるとミシェルは称していた。そんなエリィが組織に戻りたいと願い出たのだから、それを断る理由をミシェルは持ち合わせてはいなかった。  ミシェルはすぐに組織の幹部と連絡を取り、顔を合わせる段取りを取り付けた。そして、次の日の夜……酒場の地下室にて会合が開かれる予定になっていたが、組織側から派遣された人間は組織の幹部ではなく末席の構成員の少女だった。  本来なら組織の人事を統括する幹部が出席するのが筋であるにもかかわらず、送られたのは事情を知りもしない組織に入りたての少女……  その少女が、何のために送り込まれたのか分からないとミシェルに告げた事で初めて……ミシェルは“組織”から警戒されていたのだと知る事ととなった。  何の知らせもなく解放されたエリィ……未だ解放されていないエリィの妹……そして、早急に組織へ戻りたいと願うエリィの訴え……  それらが幹部たちには怪しいと映ったようだ。だから、様子を見る為にここ最近組織に入ったばかりの新顔である“ユナ”という少女を向かわせて罠が無いかを調べさせたようだ。  その慎重さは組織側には功を奏し、待ち合わせ時間に現われたのはエリィではなく多くの憲兵たちだった。  ミシェルとユナは押しかけた憲兵たちに成す術なく捕らわれ……そして、城の地下室へと連れ込まれる事となったのだ。  女王が裏の顔を出すと噂されている……あの地下室へ……


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