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こちょクエ!? ⑦『見えてる地雷をワザワザ踏みに行くなど愚の骨頂だ! と、自分に教えてあげたい……』

7:『見えてる地雷をワザワザ踏みに行くなど愚の骨頂だ! と、自分に教えてあげたい……』 ――ラフレシアの森  その森は囲むように生えた木々によって昼でも薄暗く、似た景色が続くために迷うし罠を張るモンスターも多く迂闊に近寄るべきではない森であると村の人からは認識されている。  そんな、恐ろしい噂の立つ森に……たかだか10ゴールドぽっちの回復薬の原料を取りに行かされる私の身にもなれよとイライザに文句を言いたい所なのだが、私の隣にいるのはイライザではなく本性ドSなちび妖精だけであり、彼女に文句を言っても“良いからさっさと歩け”と窘められるだけである。  って言うか、わざわざこんな森に入らなくても回復草ならその辺にいくらでも生えているのだから、それを適当に捥ぎって渡せばいいのに……そういうのを渡そうとすればイライザはまるで“その草では品質が良くありませんわ”と言わんかとする様に、受け取るそぶりも見せず……代わりに森への行き方テキストを延々と繰り返し読み上げてくる。  どうせどんな草を使っても完成するのは【回復薬S】であり、体力を15パーセントしか回復できない劣悪品なのだから森へ行く意味はないと理解しているのだけど……私の想いとは裏腹に画面外のワタシの操作は軽快に私の足を動かして、丈の短いタンクトップに太腿丸出しのショートパンツ・素足にサンダルという舐めた格好で森の中へと踏み込ませている。  もう……道らしき場所を歩いていても路傍に生えた草が素足に触れて無性にこそばく感じるし、木々の葉が丸出しの肌に触れて痒みを引き起こしてジッとして居られなくなるしで、そこを歩いているだけで不快極まりない。  それでも、道中に現われる小型のモンスターにはしっかり戦って勝利し、変に時間を食う事なく奥へと進めているのは唯一有難いと思えた事案だ。  このまま何の問題もなくボスのラフ・ラフレシアまで到着してくれると嬉しいのだけど……  っと、私がその様に望みの薄い願いを想いに託していると……  早速この森最大の分岐路に辿り着く事になり、私はその道を見て思わず唾を呑み込む事となった。  右は鬱蒼と茂った草に埋め尽くされたほぼ獣道同然の道……左は比較的今まで通りの、ある程度整備された安全そうな道……  分岐路には立て看板が備えられてあって、正順路が“左”である事を示す矢印が太く強調されて書かれてある。逆に右の方を差している矢印はその先に“危険”が待ち構えているという事を示す髑髏マークが書かれてあり、その先に進むのは危険である事を視覚的に警告してくれている。 『これ……右に行ったら確か……罠が仕掛けられてて簡単なイベントが見られた筈よね? 左に進めばボスへの近道だった筈だから、ここは当然左の道一択に……』  っと、記憶を頼りに分岐路の内容を思い出しつつ、さりげなく立ち止まっていた脚を左に誘導しようと力を込めるのだが…… 『んぎっ!? 痛っっ! ちょっっ! 脚を曲げてる途中で強引に逆に曲げないでよっ!! 痛いじゃないの!!』  左に曲げようとした脚は曲がる途中で勝手に右へと方向転換し、膝や足首に軽い痛みを発してしまう。私はその痛みが悪化する事を恐れ、成り行きに任せる様にその謎の力に従ってしまうが……それに従ったが最後、右の足も左の足も髑髏マークの描かれている右の道へと向かって歩き始め、私の嫌な予感を増長させる事となる。 『い~~~~や~~~~だぁぁ! こっちは嫌ぁぁぁ!!』  私は駄々をこねる様に下半身を両手でポカポカと殴って脚を止めさせようとするが、私の抵抗も空しく脚は熟練の兵士のように規則正しく右・左と行進を続け私を地獄の戦場へと送り出してしまう。  もはや道と呼べるモノは無くなり、膝丈くらいまで伸びた草葉にほぼ素足の脚を突っ込ませつつ私はその獣道を歩かされた。 『ひぃぃぃ! 草が脚を撫でてこそばいぃぃ!! サンダルの隙間にも小さな葉っぱとかが入り込んで足裏までこそばいよぉォ!!』  その道を歩くだけでも私の下半身は草の筋や葉の先端などが触れて異常なこそばゆさを味わってしまう。  肌が敏感になっている事もあり、気を抜けばそこを歩くというだけで笑いが吐き出されてしまいそうになるが、私は必死に手を当てて笑わないよう口を閉じさせて我慢している。しかし、その様な態勢で歩いていると、たまにある丈の長い草などが今度は無防備になってしまった腋に触れてきて、不意のくすぐったさに思わず身を捩じらされる事になってしまう。  草を掻き分けて歩くという行為がまさかこんなにこそばゆく感じるとは思ってもみなかった私は、ここでもゲームの外と中とでの認識の違いを改めさせられる。 『くぅぅ! こんなのイベントでも何でもない場面なのにぃぃ!! 何で歩くだけでこんなくすぐったい目に遭わなきゃなんないの? 理不尽よっ!!』  不満たらたらの面持ちでその様に心の中で憤りを爆発させる私に、不意にプレーヤーであるワタシは持ち物タブを開き始め突然私にあのドリンクを持たせ始めた。 『ん? コレ……さっき買った……【アシ・ヨワクナール】じゃない! コレを持たせたって事は……まさか!?』  私が嫌な予感を過らせた直後、私の手は勝手にそのアシ・ヨワクナールの瓶の蓋を開けて口へと運んで飲み始めてしまった。  私はそれを飲むのを拒否しようと吐き出そうとするが、口は清涼飲料水を飲んでいるかのようにスムーズにその謎液体を胃の中に取り込んで吐き出す事の方を拒否してしまう。  酸味の利いたその黄色い飲み物を飲んだ後はその薬液がすぐに効果を発揮させ、主に下半身に強烈な寒気を広げたかと思うと空気の揺らぎにすら耐えかねる程のむず痒さ発し始め私は驚かされてしまう事となる。 『うひっ!? ちょ……や、やだ! 脚がゾクゾクして……今まで以上に肌が敏感に……なった!?』  太腿から下の感覚神経が剥き出しになってしまったかのように敏感さが増した。それは寒気が常に駆け巡っているかのようなおぞましさで……操られていなければしゃがみ込んで足だけを守っていたくなってしまう程にムズ痒さが強調される薬効だった。  私はその薬を飲まされて、再び脚が勝手に歩みを始めると……今まで以上に触れる草がこそばゆさを増した事に耐え切れず、顎を痙攣させるように震わせてギリギリ笑う事を拒んだ。 『ひぃっ! 無理無理!! 何これ! くすぐったいにも程があるっ!! こんなの耐えらんない! 気を抜いたら歩くだけで笑わされちゃうっっ!!』  意志を持った手が羽根を操って巧みにくすぐってきているかのようなこそばゆさが歩くたびに脚全体に与えられ、私は目尻に涙を溜めながら上半身を震わせて笑いを堪えさせる事となった。  あまりにもくすぐったくて……歩きを止めてしまいたいと強く意志を込めるが、ワタシの操作は無情に脚を歩かせ私の脚を自然のくすぐり責めに晒していく。 『ウヒヒィィ〜っ!? やだっっくすぐったいってぇぇ! 歩かないでっ! ここで止まってぇぇっ!!』  もうこれだけで耐えられない程の苦悶を味合わされている私なのだが……勿論、現実のワタシがそれだけで済ます程の寛大さを見せる筈もなく……  見えている地雷であると言っても過言ではない、ウネウネと蠢いている草むらの方へと私を誘導する歩みを続けた。 『ま、ま、待って!! ソレ、罠っ! 罠だよ? ねぇ! 分かってんでしょ? 分かってんなら向かわないでっっ!! それ絶対ダメなヤツだからっ!!』  私の身長程に伸びた長細い緑の葉をオイデオイデと揺らしているその姿は、画面越しに見ていても明らかにそれが罠であると察する事が出来る筈だ。実際に生で見ると……おぞましい事この上ない。目も口も手もない草が私の事を認識している様に意志を持って誘っているのだ……それがホラーに映らない筈がない。  膝丈くらいしか生えていない草むらのド真ん中に、一際目立つようにそびえ立った違和感しかない数本の草……それが手招きするように揺れているのだから怖いと思わない方がネジが飛んでると言える。 『ひぃぃぃっ!! ダメ!! 近づいちゃ駄目っっ!! つ、捕まっちゃうっ!!』  草が間近に迫り、いよいよ拒絶の意思を強める私だが……私の想いがプレイヤーのワタシに伝わる事は決してない。脚は勝手に歩を進め、そして草の根元付近に両足が辿り着くと同時に…… 「キャッっ!?!?」  長く伸びていた草の数本が一斉に私の身体に巻き付いて来て行動の自由を素早く奪い去っていった。グルグルと……蜘蛛が獲物を糸で丸めて捕食するかの如く何重にも草が巻きつけられ、私の身体は草によって形成された緑色の繭に拘束されることを余儀なくされる。そしてある程度私の自由を奪い切ったと判断した草は、頭と足だけを出した状態にされた私を丁寧に地面に寝かせ、そこから逃げられないよう繭と地面を複数の蔦で繋ぎとめてしまう。 「ほらぁぁっ! 身動き取れなくなったじゃないのぉぉっ! ふざけんじゃないわよ! 今すぐどうにかしろぉぉ!!」  身動きが完全に取れなくなった状態になり、ようやくそこで私に行動の自由が許された。しかし、当然拘束された後なのだから自由に動かせるはずの手足の動きには制限がかかってしまい身動きなど取れようはずもない。  幾重にも巻き付いた草の繭は私の身体を拘束すると同時に手も身体に密着させる様にまとめて縛られた状態になっている。だからいくら腕を上げようとしたり手を振ろうとしたりしても繭の中の僅かな隙間をモゾモゾ動かす事しか出来ないため満足に抵抗すらさせてもらえない。  繭は草で出来ているとは思えない程頑丈で、それが幾重にも重なって巻き付いてい形となっているから私の力では内側からそれを破る事など出来そうもない。  結局……折角身体の操作から自由を取り戻しても、自由に動かせるのは顔と足先だけで……私に真の自由など許される事は無かった。 「ねぇ、ピリカぁぁ助けてよぉ! この草を外してぇぇ!!」  自分の力ではどうにもならない事を悟った私は、拘束され仰向けにされた私の顔をフヨフヨと浮かんで覗き込んでいるピリカに助けを求める。  しかし、私の懇願は彼女の能面だった顔にいやらしい笑みを作らせ……心から私の不運を嘲笑う言葉を口から吐き出して私に聞かせた。 『アハハ、良いねぇ~~♪ 丁度、今日は足裏の修行もしたいって思ってたとこなんだ……折角だからしばらくこの草たちに遊んで貰ったらいいよ♥』  そんな事を言い放つもんだから、私は懇願を怒りに変えて語気を強めてしまう。 「ふざけんな! 遊びで済む話じゃないだろっての!! コッチとら敏感な足を更に敏感にさせられてんのよ? 冗談では済まないんだからっっ!!」  怒気を込めてその様に反論するが、ピリカの方はどこ吹く風で口笛すら吹く始末……  私はその態度に更に力を込めて怒りを発露しようと口を開くが…… 「……ッっ!?」  いつの間にか足元に伸びていた草が私の足を唯一守っていたサンダルを脱がせ私の足を易々と裸足に剥いてしまい、私の怒りは急速に不安へと書き換えられてしまう。 「やっ! やめっ!」  私は必死に足をバタつかせて抵抗を試みるが、簀巻きの状態になって横にされている今の状態ではせいぜい足先を上下にバタつかせる事くらいしかさせて貰えない。 「ちょっっ! やだ! 嘘でしょ? や、やめて……」  抵抗できない事を改めて悟らされた私は、怒りの不安の色で塗りつぶしていた表情を更に青くさせ絶望の表情へと塗り替えていった。  草たちはそんな私の絶望を理解しようともせずに、裸足になった私の足裏に凶器にも勝る柔らかい葉を忍ばせそれで蹂躙を始める。 ーーコチョコチョコチョコチョコチョコチョ♥ 「ぷっひっっ!? うひっっひひひ!? あひひひひひひひひひひひひ、ちょ、やだ、足の裏が……突然こそばくなったぁはひゃひゃひゃひゃひゃ!!?」  足裏を取り囲むように伸びて来た蔦が、私の足裏に向けて一斉に蔦先に生えた葉を這わせてコチョコチョとくすぐらせ始めた。  その葉は針葉樹の葉を模したように細く鋭く硬い感触であり、それが撫でる動作を始めるとそこにはしっかりとした“こそばゆさ”が感じられる触感を味わう事となった。 「おひょ~~~~っほほほほほほほほほほほほほほほほほほほ、んぁははははははははははははははははははははははは、やめっっ、こしょばいっひひひひひひひひひひひひひひひ!! マジでこしょばいってぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」  尖った葉先はまるで意志を持つかのようにソヨソヨと上下に動き、私の敏感になった足裏を優しく撫でてくすぐって来る。その葉は1枚や2枚ではなく、次々に蔦の先から分岐するように増えてきて私の足裏を埋め尽くす程の枚数で同じくすぐる動作を繰り返していく。 「だひゃ~~ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、うぃひぃっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、やめっへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、こしょばくて堪んないぃぃぃひひひひひひひひひひひひひ、滅茶苦茶こしょばいぃぃぃぃっっっ!!」  その全ての葉の刺激は優しく撫でるだけの刺激ではあるが、神経が剥き出しになる程に敏感になった私の足裏には効きすぎる程のこそばゆさが生み出され、私の口から無様な笑いを搾り取って行ってしまう。  触られただけで電気を浴びせられたような衝撃と限界以上に増幅した痒みが融合し、死ぬほどこそばゆい感触を脳が覚えてしまうが……それらが単体ではなく複数同時に足裏を襲うためもはや私の脳はどの刺激に反応して良いやら判断できていない。  結果、脳で考えてくすぐったいと感じるよりも早く私の身体は勝手に笑いを生成し勝手にそれを口から吐き出してしまうため、まさに制御不能という状態で私は笑わされてしまっている。 「ギャ~~~~ッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、だめだめっ! もうダメ!! 許して! こんなの耐えらんないぃぃ~~~ひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ぁははははははははははははははははははははははははは!!」  簀巻きにされた身体では満足に抵抗する事も出来ない。くすぐったさから逃げようと身体を捻ろうとしても繭が地面に固定されているから左右に転がる事も出来ない。  仕方ないからと足だけでもくすぐりから逃れさせようと足を上下左右にバタつかようとするが、足を揃えて簀巻きにされた状態では足先を少し曲げるか足指をジタバタさせる事くらいしかさせて貰えない。だから、一番被害にあっている“足の裏”をくすぐりから逃がす事は出来ずいつまでもこそばゆい刺激に晒され続けることになる。もはや逃げることは不可能……と、自覚出来ているが、あまりにこそばゆすぎるこの刺激から少しでも逃げたいと私の本能が勝手に足を暴れさせてしまう。無駄だと分かっていても、そのくすぐったさがあまりに苦し過ぎて……どうしても反射的に抵抗しようと動いてしまうのだ。 「アヒャ~~~~ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、うひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ェヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘ!! たしゅけてぇへへへへへへへへへへへへへへへ、ピリカぁぁ! たしゅけてぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、うぁはははははははははははははははははははははは!!」  いくらピリカに助けを求めても彼女は私の顔を見てニヤニヤと愉悦の笑みを浮かべる事しかしない。笑い悶える顔が大好物だと言わんばかりに舌舐めずりをして見せ、私の事を助ける素振りも見せない。挙句にはこんな事まで言ってのける始末…… 『安心しなよ♪ このイベントは死にイベントじゃないから……草たちが飽きたら勝手に拘束を解いてくれる筈さ♥』 「ちょほほほほほほほほほほほ、んぁははははははははははははははははは!! 飽きるっていつまでぇへへへへへへへへ? いつまでこうしてれば良いのぉほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほ??」 『飽きるまでって言ったら……飽きるまでだね。もしかしたら、すぐかもしれないし……三日三晩かかるかもしれないねぇ……』  そのように言うもんだから私は絶望感が増し、ついついこのような発言を彼女にしてしまう…… 「そんにゃあぁぁはははははははははははははははははははははははは、今すぐ止めてよぉぉほほほほほほほほほほほほほほほほほほほ、もう死ぬほど苦しいんだってぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!! このままじゃすぐ死んじゃう! 力尽きちゃうぅぅぅ!!」  私のこの言葉を聞いた瞬間ピリカは急に真剣な表情を作って、私の笑い顔を訝しそうに覗き込んで質問を投げかけて来た。 『力尽きる? それって……もう……本当に体力が底を尽きるという意味かい?』 「そう、そうそうっっ!! 死ぬっふふふふふふふふふふふふふふふ、このままじゃ死んじゃうぅぅぅふふふふふふふふふふふふふ、だから助けてぇへへへへへへへへへへへへへへへ!!」 『それは困るねぇ……。死にイベじゃないのに死なれては……システム的に困る……』 「でしょっっほほほほほほほほほほほほ! だったら、今すぐ助けへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、すぐ助けてぇへへへへへへへへへへへへへへへへ!! もう無理ぃ~~~!!」  私は、腕を組んで考え込む格好をし始めたピリカに必死に縋り込んだ。本当はまだ笑う体力も気力も死ぬほどに追い詰められたという状況ではなかったが……このままの状態がいつまで続くか分からない私にとっては今すぐにこの無慈悲な責めを止めさせたかった。だから、多少の嘘を混ぜてその様に助けを求めたのだが…… 『仕方ないなぁ~~~勝手にシステムに逆らって死なれても困るから……今回は助けてあげよう♪』  私の嘘に気付かなかったのか、ピリカはヤレヤレと手を横に曲げて私の要求に耳を貸してくれた。 「ハヒハヒ、はひひひひひひひひひひひひ、早くぅぅふふふふふふふふふふふ!! 早く助けてぇへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」  ピリカは目を閉じて手を前に突き出し何やら呪文を唱え始める。私はその呪文がこの繭から私を助け出してくれる呪文であると信じて、足裏を襲っているこそばゆさに必死に耐えた。しかし……その呪文は私の想像していた救いの魔法なのではなく…… 『……大地の精霊よこの者を癒せ! スペル・ヒール!』  私に掛けられた魔法は、私の消費されていた体力を回復させてしまう魔法だった。 「はひひひひぇへ?? ちょっっほ?? 何をっっ……」  てっきりここでくすぐり責めから解放されると勘違いしていた私は、回復された体力のお陰で再び笑う力を取り戻してしまい……今まで以上に激しい笑いを口から吐き出す事を余儀なくされた。 「ほぎゃ~~~~~~~っっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、にゃんでぇへへへへへへへへへへへへへへへ? にゃんで回復ぅぅふふふふふふふふふふふふふふふふ??」  再び活気を取り戻すように笑い始めた私を見て、ピリカは優しげな表情を顔に作り私の言葉に当然のように回答を返し始める。 『え? 何でって? そりゃあ……死なれたら困るからねぇ♪ 回復してあげたんだよ?』 「違っはははははははははははははははははは、回復しなくていいからぁはははははははははははははははははははは、助けてよぉォ! 今すぐ助けてって言ったじゃんっっ!! ふぎゃぁははははははははははははははははははははははははははは!!」 『それは無理な相談だよ? だって……これ、草が飽きるまで続けるって決められたイベントだし。僕が勝手に助ける事なんて出来る訳ないじゃん♪』 「そんにゃああぁぁぁはははははははははははははははははは、助けてくれるんじゃにゃかったのぉぉほほほほほほほほほほほほほほほ??」 『死なれたら困るから回復はするけど……助ける事はしないよ? だから死にそうになったらすぐ言ってね? いつでも体力回復をしてあ・げ・る……から♥』 「ひぎゃ~~~~っははははははははははははははははははははは、やだやだぁぁはははははははははははははは、そんな余計な事はしなくて良いぃぃひひひひひひひひひひ!!」 『余計な事ではないさ……。これもゲームのシステムを守るデバッカーの役目だよ♪』 「はひぃはひぃ! 苦ひぃ! 苦ひぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!! 死ぬほど苦しいぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!」 『フフフ……ちなみに、君は知らないようだから一つ教えておいてあげるね?』 「あひへ? にゃにぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひ?」 『草が飽きるまで……ってさっき言ったと思うけど、この基準ってね……実は君の残りの体力量に応じて決まっているんだ♪』 「にゃひ?? た、たいりょくりょ~っふふふふふふふふふふふふふふふふふ!? うぐくぅぅふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ!!」 『正確には体力が全体の10パーセント未満になったらやめるってシステムで決められているんだ。だから、このイベントでは絶対死なないようになっていたんだよ♪』 「にゃ、にゃんでずっでぇへへへへへへへへ?」 『つまり、君はさっき僕に堂々と嘘をついたって事になるよね? もう死んじゃうから助けてって懇願してたけどさ……本当に死にかけてたんなら、先にくすぐりのほうが終わってたはずだから君が嘘をついていたのは明確なんだよ♥』 「ちょほ~~っっほほほほほほほほほほほほほほ、いぎぃひひひひひひひひひひひひひひひははははははははははははははははははははは!! 違っっふふふふふふふ、あの時は本当にィ……」 『言い訳しようったって無駄だよ? だってあの時の君の体力は……まだ40パーセント以上も残っていたって知ってるんだからね……』 「ヒギャ~~~ッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、そ、そ、そんにゃ事も分かるのっほほほほほほ? 私の体力までぇへへへへへへへへへ、バレてんのぉほほほほほほほ??」 『当たり前じゃないか。だって僕は……デバッカーだよ? 不都合があったら訂正するのが仕事だから、そういう内部情報もシステム側にアクセスすれば教えて貰えるんだよ♪』 「じゃ、じゃあ……にゃんでその事を教えずにぃ私の事回復したのっほほほほほほほほほほほほほほ!! 回復したらぁはははははははははははははははは、いつまでもくすぐりが終わんないじゃないっひひひひひひひひひひひひひひひひ!!」 「あぁ……それは決まってるじゃん♪」  そう言ってピリカは穏やかだった顔に意地悪な笑みを浮かべ直して、私の顔の前からスッと飛び立って移動を開始する。 「はぎひっ? イギヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ、はひはひ!」  顔の前から足元へと移動したピリカに、私はそこはかとなく嫌な予感を覚え顔を青くさせていった。 「僕に……嘘をついた……バ~ツ〜♥」  足元に移動したピリカはその様に可愛く言い放つと、その小さな両手を伸ばして私の無防備な足裏を草に混じってコチョコチョとくすぐり始めた。  そのくすぐりに晒された私は、目が飛び出さんとする勢いで瞳孔を開き……溜まっていた笑い涙を垂れ流しながら今まで以上の笑いを吐き出す羽目になった。 「ひっ!? ちょ、イギャ~~~~ッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、にゃにすんのぉぉぉほほほほほほほほほほほほほほほほほほ!? ピリカぁははははははははははははははははははははは!! やめぇへへへへへへへへへへへへへ!! やめでぇ~っへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、だははははははははははははははははははははははははははは!!」  ピリカの小さな手が、葉先のくすぐりに混じって強烈に私の足裏の肌をコチョコチョと撫で回して来る。もうそのくすぐったさは、笑いを堪えるという動作を一切行わせないという強い意志を感じさせるほどで……私はそれに何の抵抗も出来ずに笑い狂わされる事となった。 「ほ~~れ、コチョコチョコチョコチョ~♥ どうだ? 苦しいだろ? もっとくすぐって苦しめてやるから覚悟しろ~? コチョコチョコチョ~♥」 「ぎゃ~~~っはははははははははははははははははははははははは、イヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、死にゅぅぅふふふふふふふふふふふふふふふ、こんなの死んじゃうぅぅふふふふふふふふ、ぁははははははははははははははははははは!!」 「あれぇ~? また死にそうなのかい? だったらまた回復してやろうか? 折角、体力が30パーセントを切りそうだったのに……また全回復しちゃうよぉ? 良いの?」 「ほぎゃ~~はははははははははははははははははははははは、待っでぇへへへへへへへへへへへへへへへ、ゴメンっ! 嘘っっ! 今の嘘ぉぉほほほほほほほほほほほほほほほほほほほ!! 回復しないれぇへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」 「ふぅ~~~ん? また懲りずに僕に嘘ついたんだぁ? じゃあ……仕方ないね? また回復させたろ♪」 「ひっ! 待っでぇへへへへへへへへへへへへへへへ!! もうヤダぁははははは、もうヤぁははははははははははははははははははははははははははは!!」 「問答無用♪ ほ~れ、スペル・ヒール♥」 「ほぎゃ~~~~~~はははははははははははははははははははははははは、この鬼ぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、人でなしぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひ!!」 「はいはい、私は鬼でもヒトでもない素敵な妖精さんですよぉ~~だ♥ そんな事よりもぉ……ほれ、もっと笑え〜〜! コチョコチョコチョコチョ~♪」 「ぎょほわぁぁ~~っはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、ヒギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、死にゅぅぅ~~~~~~~!!」  っと、こんなやり取りを何度も繰り返し私は体力が10パーセントになるまでくすぐられ続け、このイベントから満身創痍で解放される事となった。  その途中では何度も現実世界のワタシはキーボードから手を放し、オートモードで責めを見て自慰に耽っていたのは言うまでもない。しかし、今回は……どんなに致してもワタシはこのゲームをシャットダウンしなかった。まるで、この章は最後まで堪能し尽くさないと気が済まない……と言わんばかりに、罠イベントが終わっても休憩など挟まずに私の操作を始めてしまったのだ。  この先には……最初のボスであるラフ・ラフレシアが待っている。  現実世界のワタシはそのイベントを楽しみにしているのだろう……  私のゲッソリと萎えた気力とは異なり、脚は軽快に森の奥へと歩みを続けていく……  その先にあるお宝でも……楽しみにしているかのように……


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