こちょクエ!? ⑥『最初の依頼クエストが怖い! と、思っているのはどうやら私だけだったようで……』
Added 2025-08-12 14:03:53 +0000 UTC6:『最初の依頼クエストが怖い! と、思っているのはどうやら私だけだったようで……』 『ハァハァハァ……ふ、ふざけんじゃないわよ! なんで始まってすぐ……こんな目に……』 オートセーブから復帰した私は、ゼリーのくすぐり責めが本格化した場面からゲームを再開する事を余儀なくされた。 流石に一度はその場面で致したであろう外のワタシは開始直後の行動は冷静で、ゲーム開始後しばらくしてピリカへの行動を有効にし……拘束していたゼリーAを魔法にて簡単に始末させていた。しかしそれでも私が責められるのをしばらく眺めた後にその行動を取ったという事もあり、私の体力は再び極限まで削られて拘束から解放された。 解放された私は、笑い疲れてグッタリしたい気分ではあったが……しかし、鬼畜なゲームシステムによって身体は操られ落としていた剣を拾って敵と対峙させられる。 眩暈はするし息切れも激しいというのに……私はその剣を振り上げて構え、そしてゼリーBを剣の縦切りによって両断してしまったのだった。 その攻撃にて見事にモンスターの撃破は叶ったのだけど…… 『いやいや! 一撃で倒せるんなら最初から倒せよ!』という憤りだけが浮かんでしまい、私は敵を倒せた達成感など味わう事も出来なかった。 『まぁまぁ、そうプリプリ怒んないの♪ 良いじゃないか、村に着く前にちゃんとレべルが2に上がったんだし……』 そんな憤りを頭に浮かべていると、その言葉を諫める様に心の声が割り込んで聞こえて来る。 『ちょっ! ピリカぁ? 何であんたの声が私の頭の中に聞こえてくんの!?』 私はその聞き覚えのある声にすぐに反応し更なる憤りを言葉に乗せる。 『え? そりゃあ……テレパシーくらい使えるよ? だって僕……妖精だもん♪』 『いやいやいやっ! あんた……ゲームのキャラ演じてる時はただのAIに戻るんじゃなかったの?』 『身体は確かに君と違って自由は多少制限されているけど……でも、意識だけはそのままキャラの中に残してあるんだ。だから、こうやって会話する事くらいは出来るんだよ』 『うぐっ! じゃ、じゃあ……昨日の私との出会いの時から既にあんたの意志はキャラに宿っていたって事よね?』 『そっ♥ 君が僕の事を“ただのキャラ”だと油断して、勝手な事をし出した事もちゃ~~んと覚えてる♥ それを画面外の君に見せないようにデバッグしたのは僕なんだから、有難く思って貰いたいものだね♪』 『う、うぐぅぅ!! くぅぅ……』 『それよりも……流石難易度Cだよね? レベルが上がっても“くすぐりの抵抗値”が一切上がってなかったのはウケたわぁ~~~♥』 『ウケねぇし! な~~~んにも面白くねぇし! 何で体力だけはあんなに馬鹿みたいに増えんのよ! バランスおかしいんじゃない?』 『おかしくはないさ……。ほら、体力が増えればもっと長くくすぐりを受けても死なずに耐えられるようになるだろ?』 『それはもう立派なバグじゃないっ!! 今すぐ改善しろ、デバッカー!!』 『無理だね♥ これはそういう仕様なんだから諦めな~?』 『くっ! 現実のワタシに訴えて“レベルアップの仕様に要改善点アリ”って要望フォームにメール送らせてやるっ!!』 『ハハハ♪ 馬鹿だなぁ~~キミがそんなメール送る訳ないじゃないか♥ だってキミだよ? くすぐりフェチの権化であるキミがくすぐりが短くなるような改善案なんて送る訳がない♥』 『むぐぐぐ~~~~っ!』 『ほらほら、そう言っている間にも無事に村に到着したよ? 良かったじゃないか♪ これでちゃんとセーブして貰える♥』 『くぅぅ!!』 言いたいことは山ほどあるが、確かに村へと着いた事は安堵すべき事案だった。 このままオートセーブ→ゼリーのくすぐり地獄→オートセーブ→またゼリーのくすぐり地獄……というループに陥ってしまっては身も心も持たない。そういう事をしでかす愚かな私ではないと自覚してはいるけど……本当にその様な事にならなかったのだと分かるとやはり安堵の気持ちも一入だ。 ワタシは村に入るなり村人と話す事もなく一目散に宿屋へと私を向かわせ素早くカウンターでセーブを行うと、休憩する素振りも見せることなく宿屋の外へと出るよう誘導した。 村は見た目には牧歌的で住民も穏やかに生活を営んでいるように見える。 村の中央には共用の井戸があり、その周りには露店が複数並んでいる。 露店は、食べ物の素材、薬草、雑貨、パン……など、質素な村にお似合いな質素な品揃えであり、ますますこの村を牧歌的な村だと主張しているようだ。 私はそこの露店で「パンが美味しそうだな~」と遠回しなおねだりを操作主にしてみるのだが、操作しているワタシはその様なおねだりなど聞く耳持たず(っというか聞こえてすらいない)で最初のイベントフラグが立つ“商人の娘”へと話しかけに行ってしまった。 「まぁ! 勇者【コチョコチョ ヨワコ】様ではありませんか! 会えて光栄です! わたくしはこの村の商人の娘で“イライザ”と申します。どうぞお見知りおきを……」 私を見るなり初対面である筈なのにすでに私の事を勇者だと認識しているようで、彼女はあの恥ずかしい私の変名を恥ずかしげもなく口に出しニコリと笑みを浮かべてくれた。 私はその名前で呼ばれ頬をヒクつかせながらも彼女の姿を興味深げに観察した。 牧歌的な村に相応しい赤と青の入り混じった生地に花柄が刺繍されたフレアスカートを身に着け、上着には白地に赤の差し色の入った半袖ブラウスを纏った……いかにも商人の娘! と名乗っているような綺麗な衣姿の女性が私を見ている。 淡い栗毛色のストレートの髪に白いカチューシャを着けた綺麗顔のその少女は、私の姿を見るなり少し頬を染めて私に右手を差し出して握手をねだって来る。 『モニター越しに見るイライザはただのモブ村人ってイメージだったけど……実際に見ると美人で優しそうな顔してたんだなぁ~』 などと、ぼんやり感想を浮かべながらその握手に応えるべく手を差し出すと……その手を掴んだイライザの顔が若干意地悪な目になったような錯覚を覚えてしまう。 『あれ?? 心なしか握る手に力がこもり過ぎているような……』 と、痛いくらいに握手に力を込めるイライザに不審の念を覚え始めると……そう言えば、主要な村人のAI一人一人にもピリカみたいに人格が宿っている筈だよね? と思い出し、私は警戒するように彼女の表情を注視してしまう。 見た感じは優しくて包容力のあるお姉さんというイメージだが……その目と口は、何かを“知ってるぞ”と言いたげに意地悪な吊り上がりが見て取れる。まるで「今朝宿屋で変なプレイしてただろ?」と言いたげなその口元は、その言葉こそ出さないまでも態度で雄弁にそれを物語っていた。 私はその表情を見てそこはかとない不気味さを覚え、思わず視線を外そうと顔を横に向けてしまう。 そんな私の不安が膨らんでいく顔を見てか、イライザはふと我に返る様に表情を神妙な顔に戻し握手を解除して私に向かって定型文のような言葉を投げかけ始めた。 「勇者様、折り入って相談があるのですが……聞いてくださいますでしょうか?」 私はその言葉を聞いてハッとなり、再びイライザの方に向き直って彼女の顔に視線を戻す。 イライザは神妙な顔をしつつもその端々に薄い笑みを浮かべ私の不安を煽って来る。 「実は……村で売る為のポーションが不足しておりまして、その原材料である【薬草】を森へ取りに行って貰いたいのです」 っというイライザの依頼を聞き、私はようやくこのクエストがどういう内容であったかを明確に思い出してしまう。 『このクエストのボスは確か“ラフ・ラフレシア”っていう植物系の大型ボスだった筈!』 今までは、序盤の出来事なんていちいち思い出せない……と、記憶を辿ろうともしなかったが……しかしこのイベントには覚えがある。 覚えがあるというか……忘れたくても忘れられないと表現する方が正しい。 何せ……このクエストのボスであるラフ・ラフレシアに敗北すると……世にも恐ろしい勇者の処刑シーンが流されるのだから……。 私はこの処刑シーンを見て、ライトな性癖から今のヘビィな性癖に曲げられたと言っても過言ではない程に衝撃を受けたのだ。 コレを初めて見た当時の私は……まだくすぐり界隈にSNS垢を作りたてくらいの初心者だった。性癖も初心者であるが故に、比較的ライトなくすぐり描写を好んでいたのだけど……この敗北イベを見た瞬間にその考え方は一変してしまった。 あまりにも生々しく残酷に描写された勇者の死に……恐怖と絶望と……そして性癖の歪みが私の頭を駆け巡ってしまった。 今でもあの衝撃は忘れていないし、なんなら見るのも躊躇われるレベルの悲惨さだと理解しているが……でも、あのイベントによって歪められた性癖は、私の足をリョナ好き(猟奇的な描写を好む性癖)の道に踏み外させ、くすぐりはハードな責めしか勝たんと豪語するようになるキッカケになったと今でも覚えている。 それ程に残酷さとくすぐりのエロさを前面に押し出したイベントであるのだから、外のワタシがこのイベントを見逃すはずがない。 絶対にわざと負けてそのイベントを見る気満々だろうと分かってしまうから、尚更私はその申し出に拒絶の意を示してしまう。 『や、やだよ? 絶対……嫌だからね? 見るのは百歩譲って好きだと認めるけど、私自身があんな目に遭わされるっていうのは真っ平ごめんよ! 絶対拒否よ! その依頼は断って! 今すぐにっ!!』 ゼリーにヤられて分かった事だが……くすぐりにイジメられているのをただ見るのと、実際に味わうのとでは天と地ほど興奮度合いは変わってくる。 実際にヤられれば、見ている時とは違う“ナマの辛さ”を体感してしまうため……ヤられている最中はいくらくすぐり好きだと言えど興奮など出来ないのだ。 ただ苦しい……ただキツイ……ただ怖い……という苦行が続くだけで、最中は一切性的興奮など味わえない。それが分かってしまったのだから、このくすぐりイベは是が非でも拒否したいという思いで一杯だ。そう思っているのが本音だが…… 「勿論、良いですよ。それで? その薬草は何処に生えているのですか?」 しかし、高みの見物が出来る外のワタシは私の拒絶など意に介す事無く快くその依頼を了承してしまう。その返事を聞いたイライザは再び口元にニヤリと笑みを浮かべさせ手続きを話し始める。 「ありがとうございます。薬草はこの村から少し西に向かった先にある“ラフレシアの森”の最奥に生えていると聞きます」 「分かりました。では早速森へと向かってみます……」 断れといくら叫んでも、選択肢を選ぶワタシの手は間も開けず了承を選んでしまう。そりゃあ……このクエストをクリアしないと次のクエストのフラグが立たないのだから選ぶのは当然だが……それにしても私に覚悟を決める時間くらい作ってもらいたいものだ。 こんなにホイホイと先に進まれては……折角のくすぐりイベに興奮したくても出来ないではないか! 私がそんなことをブツブツと心の中で呟いていると、真面目な顔をしたイライザが神妙な表情のまま話の続きを私に零してくる。 「しかし勇者様、決して警戒は怠らないで下さいませ……」 「……?」 「噂によるとその最奥には……巨大な“人食い花”が生息していると聞きますので……」 「人食い花ですか……それは恐ろしいですね」 その人食い花というのがラフ・ラフレシアというデカい花なのだが……その敵は図体の割に普通に戦う分にはそんなに強くはない。強くはないのだけど……困った事にこのゲームはボスに敗北後にくすぐりイベントがあるタイプであるため、いくらボスが弱くてもまともに戦うプレイヤーなどいやしない。 しかも厄介なことに、序盤で弱いボスであるという反動からなのか……本当に負けイベは残酷極まりない描写が加えられ、普通の感覚で見れば引いてしまくらいリョナ成分高めなのだ。 まぁ、それがこの“こちょクエ”の魅力であり……くすぐりゲーというよりはリョナゲーのジャンルの方にカテゴライズされている要因なのだけど…… 体感する身となっている私からすれば迷惑でしかない話だ。まだ先の展開が分かっていないのであればこのような憂慮などしないだろうけど……何度もクリアしたことのある私はどういう展開が待ち構えているか分かってしまっている。先々の苦しみや苦痛が分かっているのだから……それを想像するだけで失神してしまいたくなる程の不安が湧き上がって来てしまっても仕方がないというものなのだ。 「もしも、準備が整っていないのでしたら商人である私から道具を買い揃えてから行かれてはいかがですか? 少しなら薬なども持っていますし……」 出来る事なら真面目にボスを瞬殺してくれると大変ありがたいのだけど…… それを助けてくれるアイテムをイライザが売ってくれると助かるのだけど…… と、一縷の望みを込めて私はイライザの商品ラインナップを確認するのだが……彼女の見せた商品があまりに見当違いなモノであったため、私は思わず心のなかでツッコミを入れざるを得なくなってしまった。 イライザの持ち物―― 【ワキ・ヨワクナール】 【アシ・ヨワクナール】 【オシリ・ビンカンニナール】 『……って、こいつ!! 私に全然勝たせる気ないじゃないっっ!!』 イライザの提示した商品がいちいちくすぐりに弱くさせるデバフ効果しか生まない薬ばかりだと分かり、私は絶望をより深めてしまう。 これで何の準備をしろというのか? まるで敗北イベントを楽しませる為だけにある様なラインナップであり、私に何の助けにもならない薬ばかり…… しかし、それを見た外のワタシは迷うことなく先程のゼリーとの戦闘で得た貴重なゴールドを消費して、全てのデバフ薬を購入し所持品に加えてしまった。 『ちょ! 貴重なお金をそんな馬鹿みたいな薬に使うなぁぁ!! せめて装備を整える資金に使えぇっ!! 馬鹿じゃないの? 頭湧いてんじゃないの?』 これにより……(外の)ワタシ自身も敗北イベントを見る気満々だと悟らされる事となった。 まるで映画を見る前にポップコーンとジュースを買って楽しみにしているかのようにデバフアイテムを買い占めている。 なんと愚かで……なんと頭の悪い選択をワタシはしてしまっているのか? その素直さはもはや快楽の奴隷であると言っても過言ではない。 私はワタシに自己嫌悪を抱きつつ、盛大な溜息を吐いて落胆の意をイライザの前で示してしまう。 イライザはそんな私を見て、何か言いたげな表情を作って見せるが……ついぞその言葉は私には届けられる事は無かった。 代わりに“気を付けて行って来てくださいませ~♪”という呑気な送り言葉を聞かせ、彼女はさっさと露店の仕事に戻って行ってしまった。 私は再び落胆しきった溜息をついて、勝手に動いかされる体に恨めしいジト目を向ける。 ピリカはそんな私に我関せずの能面顔を張り付けたまま無慈悲な促しを言葉に託す。 「ではヨワコ様、ラフレシアの森へ向かいましょう」 ……と。