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【肉畜証明書】屠畜の日☆羽柴美里の場合

成﨑直様の小説をもとに描かせていただいた旧作をリニューアルしたものです。

キャラクターは3名となります。


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作者:成﨑直


 僕が女の子の足裏に執着し、サディスティックな屠畜を求めるようになったきっかけは、高校時代、サクジョウ学園に在学していた頃に目撃した、ある屠畜の光景だった。あの時の出来事は今でも手に取るように思い出せるし、むしろ忘れられない。

 今、こうしてサクジョウ学園で屠畜スタッフとして働いているのも、すべてあの時の出来事がトリガーになっている。

 先日、学内の定期アンケートで、「どうして屠畜スタッフになったのか?」という質問を投げかけられた。

 どうして?

 理由はただ一つ。

 羽柴美里。彼女のせいなのだ。


    *   *   *


 サクジョウ学園は男女共学、偏差値の高い高校である。山の中にぽつんと取り残されているように建っているその校舎はピラミッドのような形をした独特の形状で、サクジョウ=三角形の校舎というイメージが世間でも定着している。

 そんなサクジョウ学園の中で最も優れた生徒は誰になるか?――そう問われれば、誰もが羽柴美里の名前を挙げるだろう。

 眼鏡が似合うその知的な容姿はもちろん、成績は常にトップクラスで、柔道部では主将を務め、また外部からの評価では、「制服肉畜グランプリ」の準優勝者として全国的に知られている――まさに文部両道、さらにその性格は極めて清楚で真面目であり、浮ついた噂などかけらもなく、まさにサクジョウ学園の基本理念「品格」にふさわしい生徒である。

 だからこそ、そんな彼女が掲げた屠畜案は、サクジョウの、いや、彼女を知る世間の声すべてをアッと言わせる内容であった。



    *   *   *


「――実は、みなさんに告白しなければならないことがあります。

 みなさんは、私に対して清廉な女子生徒あるいは堅物な女と、よくも悪くも、清いイメージを持たれているかと思います。

 しかし、それは違います。

 私は淫らな女です。実は、私はこの学校に通っているとある方と交際しています。私は常々、最期はその方と最高の快楽を味わいたいと思っていました。

 最高の快楽。それはきわめて倒錯的な嗜好です。みなさんは、きっとその品性のかけらもない嗜好に驚かれるでしょうが、それが私のありのままの姿です。

 みなさん。柔道とはどのようなスポーツでしょうか。

 武器を使わない。道着を身に着ける。礼儀を重んじる。どれも正解です。しかし、みなさん重要なことをお忘れではないでしょうか?

 柔道は裸足のスポーツです。

 私は――中学の頃、この裸足というものに目覚めてしまいました。異性でも同性でも、さらには自分のものでも、――自慢しているような言い方になってしまいましたが、私自身の足の形も綺麗だと思います――形の良い生足を見ると胸がドキドキとしてしまうのです。

 やがて、それは裸足であることだけではなく、加えて足の裏への興味に転化されていきました。

 足の裏は常に隠されている部分です。靴を脱ぐことはあれど、公の場で靴下を脱ぐことはそうそうないのではないでしょうか。

 例えば自宅。一番自分がリラックスできる場所になり、初めて露わにできる部分なのです。

 しかし、柔道――剣道や空手も該当しますが――はそのプライベートな部分を、常に晒して行う競技です。

 心身ともに鍛え上げた男女が、激闘を繰り広げる。一番プライベートな部分を、無防備にさらしながら……。

 私はどんな競技でも競技に集中していますが、ふと気が付けば選手の足を見てしまっています。

 試合中もそうです。寝技をかけて相手の足の裏が露わになるとき、私は興奮を隠しきれませんでした。

 相手のプライベートな部分を覗くことで、相手の弱点を知り尽くした気分になれるのです。

 そしてもう一つ。

 これは、みなさんの中にも身に覚えがある方がいらっしゃるかと思いますが、私は首を絞められることがたまらなく好きなのです。

 試合、稽古、場所は問いません。指、腕、紐。道具も問いません。

 私は、人間の素足、しかも足の裏で性の快感を味わってしまう。人のものではなく、自分の足の裏ですらその対象に入ってしまう。加えて、首を絞められて虐げられることが大好きな、変態で淫乱な性的倒錯者です。

 これらはすべて、私が所属する柔道部の活動の中で培われてきました。そして、日々吸収した知識が、私の中でこの嗜好を正当化しました。私はおかしな人間ではない――そう、身体に、脳に言い聞かせてしまった。いわば、この嗜好は私の集大成なのです。

 私はその正体、本当の自分を隠してずっと学園生活、いえ――一生を過ごしてまいりました。

 清く、正しい。そんな私を演出してきたのです。

 しかしながら、最期、最期くらい、自分の中の下品な感情をむき出しにしたい。ありのままの自分を解放しても、神様はきっとお許しになってくださるのではないでしょうか。」


    *   *   *


 美里の演説は、襲来した台風のように大きな爪痕を学内に残した。

 美里のイメージが崩れて失望した者、あるいはイメージが崩れたことによって親近感を覚えた者、勇気ある告白を讃える者、反響は様々だった。もっとも、美里本人はそれらの反響はどこ吹く風で、一切気にしていないようだったが。

 美里は演説の後、その足で、誰にも見つからないよう用心しながら体育館へ向かった。体育館には演説を聞くために人が去っている中、一人竹刀の素振りをしている者がいた。

「――美里」

 彼女――市来ほのかは素振りをやめて、美里を出迎えた。

「演説、終わったのか?」

「うん……終わった」

「おい、誰かいるかもしれないんだぞ。いいのか、ウチらの関係がバレても……」

「大丈夫。名前は出してないけど、付き合ってることはみんなの前で言っちゃった」

「……そうか」

 市来ほのか――長い髪をポニーテールでまとめ、その鋭い眼光や、立ち振る舞いから「武士(モノノフ)」とあだ名されている女生徒である。彼女は剣道部の主将で、歴代剣道部の中でも最強だろうという強さを誇り、校内、校外ともに美里に勝るとも劣らない知名度を誇っている。

 美里が完璧な女性だとすると、残念ながらほのかは完璧な女性ではない。

 ほのかは確かに強い。肉体的にも、精神的にも。だが、強さに偏りすぎて威圧感を与えてしまっている。美里はそんな、昔気質の父親のようなほのかの姿に、見惚れてしまっていた。

「なあ、美里」

「なに?」

「屠畜のことなんだが……」

「?」

 微笑んでいた美里の顔が、不穏な色に染まってゆく。

「いや、そんな悲しい話ではないんだ。その――屠畜で、手を下す役割を……。ウチにやらせてほしいんだ」

「え――?」

「やはり、恋仲になった相手の最期は、間近で看取りたい……もちろん、美里が嫌ならば、それでいい」

「嫌だなんて……」

「――」

「そんなわけ、ない。むしろ、私からお願いしようと思ってたところだし……それに」

「――なんだ?」

「それに、私からも、一つお願いがあるの……」

「ウチにできることなら、なんでもやるよ」

「……」

 美里はどこか言うのを躊躇っているようであったが、ほのかの目を見据えて、言った。

「私と一緒に、死んでほしい」

 めったなことでは表情を変えない――仏頂面とも言われるほのかでも、さすがに驚いたようだった。

「いいのか?」

「ほのかさんとなら。ううん、ほのかさんじゃないと頼めない」

 フッと、ほのかが笑う。

「ありがとう、美里――」

 ほのかは美里に抱きついた。美里は驚き対応に困ったが、すぐにほのかを抱きしめる。そのまま、ほのかの唇は美里の唇に重なり、濃厚なキスになった。

「武士」と揶揄される強い女の、家族にも見せたことがない、女性らしい姿だった。


    *   *   *


 屠畜当日――美里の最期は体育館で迎えることになった。

 陽の光が校舎に降り注ぐ午後三時。アリーナと隣接している体育倉庫は、美里の要望で入念に清掃されており、雑然とした日常の面影を完全に消し去っていた。床に敷かれた新品の畳が仄かな藺草の香りを漂わせ、厳粛な空間へと変容を遂げている。

 畳の中央で、純白の柔道着に身を包んだ美里が静かに正座していた。トレードマークのメガネは脇に置かれ、イヤーマフが外界の喧騒を遮る中、長い睫毛を伏せたまま深い瞑想に沈む。白い生地越しにわずかに浮かぶ胸の起伏だけが、規則正しい呼吸のリズムを刻んでいた。

 瞑想を終えると、イヤーマフを外し、立ち上がって倉庫の扉を引き開けた。

 その瞬間――そこには予想を超える数の群集が詰めかけていた。みな美里の屠畜を目当てにやってきたのだ。

 美里がその数に驚いていると、トン、と顔に何かが当たった。

 見ると、なんと人間の裸足ではないか。そのまま目線を上に向けると、天井からぶら下がっている女生徒の死に顔があった。

 それは、1年生の佐藤祐実だった。ショートカットを金色に染めた少年的な女生徒で、染髪だけでなく、耳にピアスをつけた、サクジョウの「品格」とはかけ離れている彼女。Tシャツにホットパンツというラフな私服姿で、虚ろな瞳をしたまま、口をぽかんと開け、舌を垂らしていた。美里の嗜好通り、靴も靴下も履いていない。



「こ、これは……?」

 困惑する美里のもとに、剣道着に面をつけた女性が駆け寄ってくる。

 美里の前に着くなり、面を取る。――その正体は、市来ほのかだった。

 市来ほのか!――学園一の有名人である美里の屠畜現場に現れたもう一人の有名人に、会場は沸いた。

「ほのかさん……!」

「悪い。言う時間がなかった。さすがに、人の首を絞めたことはないから、ウチも不安になってしまって。先生に相談したら、佐藤さんを紹介してくれたんだ。もともと学園祭で食肉として屠畜される予定だったから、美里のために死ぬのは、この上なく光栄なことだって、喜んで引き受けてくれた。それで、ウチの実験台になって貰った。本当なら、美里と二人きりがよかったのだが……」

「ほのかさん」

「ん?」

「ほのかさん、手、震えてる……そうだよね、首を斬るのに慣れてたって、絞殺なんて、そんな簡単にできることじゃないよね……。ごめんなさい、やっぱり私の屠畜は一人で――」

「いや!」

 ほのかが強く否定をする。

「いや、違うんだ……確かに、人を絞め殺すなんて初めてだったから、怖くなった部分もあった。だが、だが、それ以上に、首を絞めたとき、胸の奥が熱くなった。胸の高鳴りがやまない。――ウチ、絞殺を楽しんでいるのかもしれない……」

「……」

「美里にはマゾの血が流れていて、ウチにはサドの血が流れているのかも。だとしたら、ウチらやっぱり相性がいいんだよ」

「ほのかさん……」

「だから――美里、……一緒に逝かせてくれ」

 頼む!――そう言って、ほのかは頭を下げた。

「ほのかさん、頭を上げて」

 ほのかがゆっくりと頭を上げると――、ニッコリと、最上の笑顔を浮かべた美里がいた。


    *   *   *


 そして、美里の死が訪れる番となった。

 美里が床に座ると、群集側に足を投げ出して、裸の足裏を見せていた。

 ほのかが太いロープを持ち出し、美里の首元に巻き付けた。

 時間が止まったかのような静寂が張り詰める中、美里は群集を一望した。陽射しが彼女の顔を優しく照らし、その表情には不思議な穏やかさが浮かんでいた。

「では、皆さんさようなら。

 3年A組、柔道部所属、羽柴美里、3サイズは85、61、89、Eカップ……」

 と、帯を解き、柔道着の襟に両手をかけると、一気に左右へと引き開いた。普段は柔道着の下に包帯を巻いていた胸が今日は何も着けていなく、柔道着の白い生地の間からマシュマロのような巨乳が現れ、かつて「制服肉畜グランプリ」で披露した凛々しい佇まいと変わらぬ美しさを放っていた。

 その仕草には無駄な動きが一切なく、まるで柔道の技をかける時のような、完璧な所作だった。最期に自らの美巨乳を晒すことに、どんな思いを込めたのか。だが、美里の瞳には、迷いのない強い意志に満ちていた。

「……私は、こんなにも素晴らしい死に際を迎えられて幸せ者でした」

 目を細め、微笑みを浮かべると、後ろに振り向き、ほのかにゆっくりとうなずく。

 これが合図となり、いよいよ美里の屠畜が始まった。

 ほのかが、美里の首元に巻いたロープを一気に締め上げた。

「ウヘッ!?」

 間抜けな声を出してしまったことを一瞬恥ずかしそうにする美里。最期まで柔道部主将としての威厳を保とうとしていたが、その穏やかな面持ちが一瞬で崩れ去って、頬は朱に染まり、額には汗が浮かび始めていた。

「ンッ!ウン、ムグッ」

 苦しいそうな喘ぎ声が零れる。汗が真珠のように煌めく。過去の試合で投げられた時でさえこんな声は上げなかった彼女だったが、今は違う。

 ほのかは、そんな美里を見て辛そうだったが、手の力を緩めることはしなかった。

 やがて、美里の表情は徐々に快楽のものへと変化していく。全身が小刻みに震え、背中や脚が強張っていく。その様子から、首を絞められたまま絶頂に達したことは明白だった。股間に広がるシミも、その事実を裏付けていた。

「あっ!あぁー…!」

 目を剥いて、その綺麗な高い声で苦しみ抜いていく美里。普段の落ち着いた声色とは全く異なる、生々しい叫びがアリーナに響き渡る。

 普段は鋭い光を宿していた瞳から焦点が失われ、完璧に制御されていた肉体が意思とは無関係に暴れ出してしまい、足をバタつかせて抵抗を始めた。

 それでも、その汗に濡れた顔には、ある種の満足感と解放感が漂っていた。どこか余裕が生まれたのか、かすかな微笑みが浮かんでいるようにも見えた。

「ヒ…エッ…エゲッ…」

 美しい声から一転、獣のような声を囁くように出すと、柔道着の股間からじんわりと染みが出てきた。

 美里は失禁していた。それも、意外と量が多い。白い柔道着が徐々に色を変え、体育館の床に黄色の液体が静かに広がっていく。

 そろそろ最期の時が近い。

 虚ろな目をまっすぐと前を見据え、美里は痙攣を始めた。

 白い首筋が激しく震え、かつて微笑みを湛えていた唇は開閉を繰り返して、だらしなく涎を垂らしていた。

 柔道の試合で見せていた凛々しく姿はすっかり消えてしまい、両足は舞踏のように不規則に痙攣し続ける。やがて足のバタつきが鈍くなり、力の入った足の指がピンと反る。

「――――――」

 一際強く痙攣が走ると、足の指から力が抜けたと思うと、そのまま体全体が力尽きるように脱力し、やがて動かなくなった。

 その美しい顔を苦痛と快楽の入り混じったアヘ顔に変えて、ピンク色の舌をだらりと垂らし、目は思い切り見開かれ、黒目は寄り目気味になっている。

 投げ出した脚と足裏は美しく、その間からまだ小水が続いていたのか、ゆっくりとシミを大きくしていく。


    *   *   *


「はあ、はあ……」

 息を切らしたほのか。その顔は紅潮し、額に汗がきらきらと光っている。明らかに、美里を絞殺する途中で絶頂に達してしまっていた。

 ほのかは、息が落ち着くのを待って、群集に向かって宣言した。

「私は今から、美里……私のたった一人の恋人の後を追う。

 美里と共に生き、共に死ぬ。それが、私の選んだ道だ」

 その一言に、会場にはどよめきが起きた。

『羽柴美里と市来ほのかが恋人同士?』

『でも確かに、いつも一緒にいて、部活の後も……』

『市来ほのかが死ぬ?ここで?』

『まさか、三人目の屠畜を目にすることになるなんて……』

『なんて素敵な愛なの!死を共にするなんて、ロマンティックすぎる……!』

『ほのか先輩、私たち、ちゃんとほのか先輩を送りたかった……!』

 様々な声が会場内にこだまする。驚き、興奮、そして祝福。そのすべてが抑えきれずに溢れ出していた。

「どうか悪く思わないでくれ」

 しかし、ほのかはただ、驚くほどに冷たい声で言い放ち、美里の遺体を物色した。その声には、あたかも生者の世界から既に一歩踏み出したかのように、静かで深い余韻を伴っていた。

「すぐ、逝くからな……」

 こと切れた美里に声をかけ、最後にもう一度唇を重ねた後、まだ彼女の温もりが残る紐を柔道着のズボンから解き取った。

 紐の端を壁のフックに結びつけて輪を作ると、それを迷うことなく自らの首に掛け、剣道着の襟を左右へと引き広げた。美里にも引けを取らぬ豊かな巨乳があらわになり、その姿に、群集からは小さな歓声が上がった。

「では、ここでお別れだ。

 3年F組、剣道部所属、市来ほのか、3サイズは…いや、もういい」

 彼女は首を横に振り、ほっとしたように微笑んだ。

「『最後の告白』などもはや不要だ。今はただ、恋人の後を追い死ぬのみ」

 そう言って、ほのかは足を伸ばし、わざと群集に裸の足裏を晒すように、勢いよく座り込んだ。

「ウッ!? ンムゥーッ!」

 一気にほのかの首が絞まり、顔が赤く染まっていく。豊満な乳房がブルンブルンと揺れ動き、足指は何かを掴むかのようにギュッと丸められた。この衝撃だけで、再び絶頂へ追いやられたようだ。

「あっ…かっ…」

 目に涙を浮かべた。しかし、その表情に苦痛の影はなく、むしろ恍惚とした色を帯びていた。

 紐が首に食い込み、気管を圧迫して呼吸を奪っていくにつれ、彼女の顔は赤から紫に変わっていった。

「……み、みさ……」

 口から唾液を零していく。身体は痙攣を始め、足の裏をピンと反らした。

 目をガン開きにしたが、意識は既に飛んでいるようだ。もはや瞳の中に光はなく、虚空を見つめているだけだった。

 それから、1分もしないうちに再び意識を取り戻した。

 しかし、先程とは様子が違う。

 目は開いているものの焦点があっておらず、口からは舌を大きく突き出していた。

 全身は汗で濡れ、時折ヒクッと体を震わせ、まだ生きているのか、あるいはもう死んでいるのかわからない状態だった。

 だが、それでも意識はあるようで、群集の方を見て、何か喋ろうとしている。

 もちろん、首を絞められ、舌を突き出しているため、声は出ない。ただ、唇だけが小さく動いている。

 ほのかは、震えながら手を伸ばす。

 その手が触れたのは……美里の死体だった。

 恋人の手を握った瞬間、まるでスイッチが入ったかのように、体が2度、3度大きく痙攣し、その震えが全身に波及し始めた。剣道部主将の誇りと共に鍛え上げられたしなやかな体は、今や制御できなくなり、ただひたすらに快楽へと身を委ねるだけになっていた。

 酸素が致命的に不足した脳が、無意識のうちに体を突き動かし、背が弓なりに反り返る。美しい裸足が天に向かってピンと伸びたかと思うと、そのまま床に叩きつけられた。

 しかし、これが最後だった。

 ジョロロォ…という微かな音とともに、袴の股間が濃く染まり、体育館の床へと新たな水たまりが静かに広がっていった。

 ほのかの端正な顔から、徐々に生気が抜けていく。

 瞳孔は拡張し、顔は真っ青を通り越して土気色に変わり、ついに手足の力が完全に抜け、足指だけがピクピクと微かに痙攣していた。

 ゆっくりと最後の痙攣が収まり、ほのかの身体は完全に静止した。

 その死に顔には、美里と同じように、恍惚の表情が浮かんだまま固まっていた。



    *   *   *


 その年のサクジョウ学園祭の目玉として、とある剥製が展示された。

 凛々しく知的な印象を与える元柔道部主将の美少女と、堂々たる風格と強さを感じさせる元剣道部主将の美少女、その百合カップルの剥製。生きている人間以上に瑞々しく、艶やかな光沢を放っている。

 美女・美少女揃い、学園最大規模の剥製とあって見学者は長蛇の列を作った。

 なお、美里に報いて死んだパンクな少女は、生前の希望から食用へと回された。


    *   *   *


 羽柴美里と市来ほのかが屠畜される際、僕は入学したての一年生だった。

 学園一の美少女が屠畜されるというだけあって、見学の席は例年の十倍もの競争率となったが、僕は奇跡的に、最前列で屠畜を見物することができた。

 まずは佐藤祐実。

 僕と同じ学年で、ロックバンドを組んでいた女の子。ギター担当だった。何度か話したことはあるが、特に親しくはなかった。

 彼女が屠畜されたのは、羽柴美里が屠畜会場に現れる直前だった。

 剣道着姿で現れた市来ほのかが、佐藤祐実の首を絞めて殺した。

 佐藤祐実は悶絶し、女子から出ているとは思えない汚いうなり声を挙げた。

 汚いうなり声、と言っても、僕にとっては心地よかった。僕の中の加虐心をくすぐってくる。

 どうやら、窒息と快楽によって失神してしまったようだ。

 完全に白目を剥いて、口元からはヨダレが垂れていた。

 だが、それでも市来ほのかは緩まない。

 むしろ、さらに締まるばかり。

 やがて、佐藤祐実の首からゴキッという音が鳴り、それと共に彼女の全身が硬直する――しばらくして、弛緩した。

 彼女は、まるで壊された人形のように体を震わせながら、やがて力尽きて事切れた。目は見開かれ、だらしなく開いた口から舌を垂らしながら、ちょろちょろと尿がふとともを伝った。

 その裸足はかすかに揺れ、派手に染め上げられた金髪は、アリーナに差し込む陽光を浴びて、不気味なほど鮮やかに輝いていた。

 だが――あの場で一番加虐心をくすぐられたのは、市来ほのかだったらしい。面をつけていたが、顔が見えなくてもわかる。市来ほのかの中の加虐心は燃料をこれでもかというほどに注がれ、燃え盛っていた。

 続いて、羽柴美里だ。

 羽柴美里がどんなに苦しもうとも、市来ほのかは力を緩めることはしなかった。むしろ、羽柴美里が苦しめば苦しむほど、力を強めた――僕にはそう見えた。

 羽柴美里は絞める力が強まるほど、苦悶の表情の中に快楽を見せていたし、市来ほのかは完全に快感一色に染まっていた。

 こと切れた羽柴美里の足の裏を僕は間近で見ることができた。

 完璧な女性は、足の裏まで美しいのかと思うくらいには綺麗だった。

 不思議と、僕のイチモツはここでギンギンに膨れ上がっていた。

 最期に、市来ほのか。

 自らを殺したので、心中に入る。あれだけの強さを誇った逞しい市来ほのかが、苦痛に顔をゆがめて、あえぐような声を出している。

 強い女を蹂躙する――それが僕には心地よかった。

 やがて、市来ほのかもこと切れる。

 僕のイチモツはそろそろ限界に近付いていた。

 ドスンッ!という音を立てて、佐藤祐実の身体が地に落ちた。首を吊っていたロープが切れたらしい。

 彼女の顔と目が合ってしまい、僕は目を背ける。

 その目を背けた先には、羽柴美里と市来ほのかがいた。

 大股を開き、はしたなく絶命している羽柴美里。屠畜される前に自ら襟を左右に引き開いたため、美しい乳房があらわになっている。

 市来ほのかも、最初から自ら襟を引き開き、乳房を露わにしていた。しかも、あまりに激しく抵抗したせいで体は崩れ、剣道着も乱れきっていた。

 美少女3人の遺体と、遺体になるまでの悶絶、そして3人それぞれの美しい足裏。そこに学園の中でもトップクラスに形が良い巨乳。

 気づけば、僕は制服のズボンを精液で汚していた。


    *   *   *


 そういったわけで、僕は羽柴美里の足裏への執着と、市来ほのかのサディスティックな面を合わせ持つ人間になった。

 屠畜を望む女の子次第ではあるが、足裏も拝める。また、安らかな死を選ばなければ、ほとんどの場合、僕の加虐心は満たされる。

 僕は、今日も屠畜の仕事が入っている。

 だが、羽柴美里、市来ほのかほどに自分の性癖に忠実になった肉畜、また淫らな表情の中に、あそこまでの幸せを隠した肉畜には、未だ出会っていない。


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