部屋の中には白磁のソーサーとティーカップが当たる小気味の良い音が響いており、柑橘系の紅茶特有の芳醇でありながらフルーティーな香りが微かに漂っていた。机を挟みながら対面するように椅子に座っている黒髪の青年——”藤丸 立香”と銀髪の左側を三つ編みにしている美女——”オルガマリー・アニムスフィア”は、紅茶特有の苦味とお菓子の甘味を楽しむ心地の良いティータイムを堪能している。
「——ずず……っ、ふぅーーっ。今日も美味しいわね。このフィナンシェとも良く合ってるわ」
「ありがとう。フィナンシェはタマモキャットが『作り過ぎちゃったからご主人にあげるぞっ』てくれたんだ」
「そうなのね。後で私の方からもお礼を言っておくわ」
「うん、タマモキャットも喜んでくれると思うよ」
オルガマリーは所長と職員という関係であるのにも関わらず、お友達のような感覚でマスターと共にお茶をすることに対して否定的であった。だが、紅茶や珈琲を淹れるのが上手くて人誑しの権化のような性格をしているマスターに少しずつ懐柔されていき、ツンツンしていた彼女の態度も軟化していったのである。
気付けば休憩時のティータイムは二人の中で習慣となり、オルガマリーはマスターの部屋に足繁く通うようになっていた。
「もう一杯飲む?」
「ありがとう、貰うわ」
普段のオルガマリーのことを知っていれば知っている人ほど、穏やかな表情と雰囲気の柔らかさに驚いてしまうだろう。
オルガマリー・アニムスフィアという人物は基本的に責任感の塊であり、それ故に自分にも他人にも厳しく人から嫌われやすいという損な性格をしている。常に余裕が無さそうで言葉の端々に棘が含まれたキツい言動をしている彼女だが、それさえマスターは優しく受け止めたことで肩の力を抜いても良い居場所になったのだ。
透き通った琥珀色をしている紅茶によって出来ている水面には、オルガマリーの美貌が鏡のように映し出されている。自分でも驚いてしまう位に穏やかな笑みを浮かべている水面を彼女はぼーっと見つめながら、人理保障機関カルデアでマスターと初めて出会った時のことを思い出していた。
「……本当は初対面なのに目の前で寝るような人嫌いだったわ」
「ごほ——っ、んっ。あっ、あの時はシミュレーションの影響っ」
突然のオルガマリーの発言によって紅茶が気管に入ってしまったマスターは、口元を右手で覆いながらゴホゴホと咽せてしまう。そして、シミュレーションの負荷による影響だったことを慌てて説明しようとする彼に対して、揶揄うつもりだったことを伝えるように彼女はクスクスと笑みを浮かべたのである。
「ふふふっ、今なら分かるわよ。あなたがそんな不真面目な人間じゃないって」
「そっ、そっか。良かったぁ……」
胸を撫で下ろしているマスターの姿を見詰めるオルガマリーは、現在の彼に対しての想いを口にするのであった。
「今のちゃんと朝礼を聞いてくれるようになったあなたのことは好きよ。……それに紅茶を淹れるのも上手だし」
「俺も厳しいけどいつも真剣なマリー所長のことが好きだよ」
「————っッ♡♡♡ はっ、恥ずかしいから止めなさい……っ♡♡」
照れ隠しで紅茶が淹れるのが上手いと誤魔化しながらの好きというオルガマリーからの言葉に対して、マスターも彼女のことが好きであることを伝えたのである。予想外の反撃を受けたオルガマリーは頬を染めながら止めようとするのだが、彼は追撃するように更に具体的に思っていることを口にするのだ。
「不測の事態になるとヒステリックになったり、プライドが高くていつも素直になれない」
「ちょっ、ちょっとっ! 私のことそんな風に思ってたのっ!?」
「でも、本当は寂しがり屋で気が小さくて臆病な所もある」
「うぅ……っ、確かにそうだけど。そこまで言わなくても良いじゃなぃ……っ」
芯を捉えるように心当たりのある自分の駄目な部分を指摘されたオルガマリーは、動揺しながら声がか細くなってしまう位に落ち込んでしまう。だが、マスターは負の部分を含めて彼女のことを受け入れているということの証であり、本当に好意があるということを言葉として紡いでいくのである。
「それでも自身の欠点から目を背けたりしないのも知ってる。今も所長としての責任を全うしようと頑張ってるよね。頑張り屋さんで強い責任感があって、本当は優しい所が好きだ……愛してる」
「〜〜〜〜っッ?!!♡♡♡♡ ぁッ♡♡ そっ、そのっ♡♡♡ いきなり……っ♡♡」
真っ直ぐ相手の顔を見詰めながらのマスターからの愛の告白を受け、オルガマリーは驚きと恥ずかしさから視線を逸らしてまともな言葉すら発せなくなっていた。席から立ち上がった彼は歩み寄りながら屈むことで顔を近付け、動揺してトパーズ色の瞳を揺らしている彼女からの告白の返答を聞き出す。
「俺はマリー所長のことが異性として好きですけど、マリー所長は俺のこと異性としてどう思ってますか?」
「そっ、それは——っッ♡♡♡ すっ、すき……っ、てっ?!♡♡ なっ、なんで言わなくちゃいけないのよっ!!♡♡♡♡ ぜっ、絶対に言わないんだから……っ♡♡」
動揺したまま自分の気持ちを話しそうになるオルガマリーだが、寸前の所で正気に戻ったのか絶対に口にしないと宣言したのである。しかし、所長と職員という関係であるのと共に現在の二人は”マスター”と”サーヴァント”であり、マスターは右手の甲に刻まれている盾を模した令呪を輝かせた。
「令呪を持って命じる。素直な気持ちを話せっ!」
「〜〜〜〜っっッ゛?!!♡♡♡♡ きょっ、強制しようとしても無駄よっ!♡♡ カルデアの令呪は頑張れば耐えられるんだからっ♡♡♡」
「——重ねて命じる。本心を口にしろっ!!」
「あ——っッ♡♡♡ すっ、すk……っ♡♡ んぅ゛〜〜っっッ゛♡♡♡♡ れっ、令呪を無駄遣いするなぁ゛……っ♡♡♡」
ギリギリの所で我慢することが出来たオルガマリーであったが、令呪はあと一画だけだが残っている。使わないように阻止しようしているが無駄な抵抗であり、止めを刺すようにマスターは最後の一画も消費してしまう。
「更に重ねて命じる。自分の気持ちに素直になれっ!」
「————っッ?!♡♡♡ もっ、もうっ♡♡ 好きっ♡♡♡ 好きよっ!♡♡ あなたのことが大好きですっ♡♡♡♡ はぁーーっ♡♡ はぁ……ッ♡♡♡ これで満足っ♡♡」
決壊してしまったダムのようにマスターの好意があることを口にしたオルガマリーは、半ば自棄を起こしながらも相思相愛であることに嬉しさと恥ずかしさを感じてしまっていた。
「相思相愛だって知れて満足です。それじゃあ改めて……俺の恋人になって欲しいです」
「〜〜〜〜っっッ゛♡♡♡♡ ほっ、本当に直球なんだから……っ♡♡ そっ、そのッ♡♡♡ よろしくお願いします……っ♡♡」
こうして二人っ切りのティータイム中に恋人同士となり、マスターとオルガマリーは所長と所員、マスターとサーヴァント以上に親密な関係となったのである。
「”マリー”こっち向いて」
「いっ、いきなり呼び捨てっ♡♡ んむぅ〜〜っっッ゛?!!♡♡♡♡」
突然の呼び捨てに驚いてオルガマリーが顔を上げた瞬間、マスターは彼女の瑞々しくぷるぷるの唇を奪ってしまう。ファーストキスを奪われたオルガマリーは両の瞳をカッと見開き、身体を強張らせたまま口内で悲鳴を上げた。
サーヴァントの腕力なら簡単に振り解くことが出来るのだが、オルガマリーは呼吸すらどうして良いか分からずに固まっている。
「んむっ♡♡ んッ♡ ちゅぷぅ……っ♡♡♡ ん゛ぅ゛——っ♡♡」
唇が押し当てられたまま擦れ合うことで水音が鳴っており、それが気持ち良さと恥ずかしさに拍車を掛けてしまう。実際には二人が口付けをしていたのは一分にも満たない短時間であったのだが、ファーストキスであったオルガマリーには瞬きのような一瞬にも永遠のようにも感じられた。
「んちゅぅ〜〜っ♡♡♡ んむ……っ♡♡ ぷはぁ゛ーーっ♡♡♡ はぁ゛……っ♡♡」
「ふぅ……っ、これから恋人らしいこと沢山しましょうか」
「〜〜〜〜っっッ゛??!!!♡♡♡♡ はぁーーっ♡♡ ふぅ゛ッ♡♡♡ そっ、その……っ♡ ゆっくり段階を踏んでいきましょうっ♡♡♡ ぁッ♡♡ んむぅ゛——ッ!?♡♡♡」
こうして恋人関係となったマスターとオルガマリーは、紅茶の匂いで満たされた室内で愛情を確かめながら更に深め合う。
「——キスが甘酸っぱいって本当だったのね♡♡♡」
「それは紅茶のせいですよ。本当のキスの味を教えて上げます」
「ちょっ、ちょっとまだ慣れてないんだからっ♡♡ んむぅ……ッ♡♡♡ ちゅぷるるぅ〜〜っッ♡♡」
その後も大人のキスの仕方まで覚え込まされたオルガマリーは、舌や唾液を絡ませ合う味までタップリと堪能することとなった。だが、彼女は頬を膨らませながら唇を軽く尖らせる可愛らしく不貞腐れた表情を浮かべながら、本人にしか聞こえないような声量で『やっぱり甘いわよ……っ♡♡』と口にしたのである。
【FGO10周年記念作品】 堅物所長のオルガマリー・アニムスフィアはクソ雑魚オマンコをマスターにハメ潰され 種付けアクメに溺れながらお嫁さんになる 一部・先行公開