赤や黄、茶色に色付き紅葉していた街路樹の葉はすっかりと枯れ落ち、最近はめっきりと冷え込んでいるため、どんよりとした曇り空からしんしんと雪が降りそうな季節となっていた。吐き出した息まで白くなる位に外気温は低くなっており、灯りがついているマンションの一室は暖房がつけられているため暖かい。
絨毯の上に座布団とローテーブルが置かれるリビングルームでは、成人している男女がたわいもない会話をしながら食事を楽しんでいる。じっくりコトコト煮込まれたビーフシチューからは美味しそうな匂いが湯気と共に室内に漂い、ローテーブルの上にはカリッと焼かれたバゲットや半熟卵の載ったシーザーサラダなどが並べられていた。
「んぅっ、このビーフシチューとっても美味しい!」
「昨日の夜から煮込んでたから。”冬美”も最近は忙しそうだったからその労いも兼ねてね」
「ふふっ、ありがとう。焦凍が寮に入ることになったりで家もバタバタしてたから凄く嬉しい」
「雄英に通ってる弟さんだよね。ヴィランの襲撃が起こったり物騒だったから……これで安全になったら良いね」
「本当にね……。そう言えば——」
雪のような白髪で所々に赤いメッシュが入った女性——”轟 冬美”と黒髪の男性、親友よりも更に一歩踏み込んだ親密な関係にある二人はお互いの近況を報告している。基本的に冬美は自分の家族のことや教師としての生活のことであり、彼の方は勤めている会社での出来事が殆どであるため社会人らしい話題が中心となっていた。
家での家事や仕事があるため週末や祝日にしか会えない二人だが、こうやってお家で寛いだり外に出掛けるデートが息抜きになっている。
「夏雄がこっそり教えてくれたんだけど、大学に付き合ってる女の子がいるんだって」
「……」
普段と変わらない様子の冬美であるが小学校から大学まで一緒であり、人生の大半を共にしている○○だけは彼女の些細な機微に気が付いていた。そして、子どもの頃に無個性である自分をイジメから庇ってくれた強い芯を持ち、複雑な家庭環境にありながら家事や学業、仕事を両立してきた辛抱強い冬美が弱音を滅多に吐かないことも熟知している。
「——○○君、聞いてる?」
「うん、聞いてるよ。夏雄君も一人暮らし始めてから、青春を楽しめてるみたいで良かったね」
話を聞くのは食事の後でも良いと考えた〇〇は、冬美の話に相槌を打って会話と食事を続けたのだ。
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「「——ごちそうさまでした」」
「〇〇君のご飯、本当に美味しかった!」
「それは良かった。いまお茶淹れるから」
「良いよ座ってて! 片付けとお茶くらいは私にさせてよ」
そう口にした冬美は二人分の重ねた食器を持って台所に向かい、皿洗いとお茶を淹れる準備を始めたのである。〇〇の家なのだが彼女は何処に何があるのかを把握しており、専用のエプロンまであることが同居や夫婦の一コマのようであった。
縦の黒セーターにベージュのデニムパンツ、機能性を重視したエプロンという冬美の格好、後ろで纏められた髪型からも若奥様といった雰囲気が強く醸し出されている。
——コトっ
「はいっ! 熱いから火傷に気を付けてね」
「うん、ありがとう」
暫くすると冬美から差し出された湯呑みを〇〇も手にして、二人がお茶を啜ってホッとするような息を吐くだけの音が響く心地の良い無言の時間が過ぎていく。お茶を飲み終わって空気が一旦落ち着いた頃、彼女が隠している本音を話し易いように彼は言葉を紡いでいくのであった。
「……話して欲しいな」
「——っ?! なっ、何のこと?」
「付き合いも長いんだから隠そうとしても分かるよ。恋人として頼り無いって言うなら諦めるけど」
「〜〜〜〜っッ、狡い言い方だなぁ……」
空っぽになった湯呑みを両手に持ったままでいる冬美は、自分の内心をポツポツと吐露していったのである。
父親であるエンデヴァーが発端となった母親の入院や長男の件、それにより引き起こされた家庭崩壊。ほぼ空中分解してしまっている家族をギリギリ繋ぎ止めて支えるために冬美は母親の代わりに家事全般をこなしながら、母親の入院先にも定期的に顔を出したり、父親への反抗期の真っ只中である弟達のことも気に掛けてきた。
自他共に認める程に忍耐強さには定評がある冬美であったが、弟である焦凍の雄英入学を切っ掛けに家族の形が良い意味でも悪い意味でも再び変わり始め、結果的には心労が更に増えたことで一言で表すのなら”疲れて”しまったのである。他人や友人、家族にすら零すことが出来ない愚痴であったのだが、自分に寄り添い支えてくれる恋人の〇〇にだけは心の底に溜まった澱んだ部分を曝け出すことが出来たのであった。
「——ちょっと疲れちゃってたのかも。はは……っ」
「話してくれてありがとう。俺には想像することしか出来ないけど、それでも冬美がいつも頑張ってるのは知ってるよ」
「————っ、〇〇君に話したらスッキリしちゃった。お茶のおかわり持ってくるね……」
恥ずかしさから居た堪れなくなってしまった冬美は、お茶のおかわりを準備するために台所に向かおうとする。そんな彼女の小さく見える背中を支えたい衝動に駆られた〇〇は、立ち上がって冬美のことを背後からギュッと抱き締めたのだ。
——ぎゅぅっ
「学生の頃は、冬美に助けてもらった。だから今度は、俺が冬美の助けになりたい」
「そっ、そんなの小さい頃の話だよ……っ」
「でも、俺にとってはどんなヒーローよりも冬美がヒーローだった。……だから冬美には弱音を幾らでも吐いて欲しい。全部、受け止めたいんだ」
「〜〜〜〜っッ。もう……っ」
〇〇は冬美の華奢な肩や鎖骨の辺りに両腕を回すように抱き締めており、彼女はその腕に触れながら小さく身体を震わせた。自分のことを愛してくれる存在に冬美の心は救われ、奥底に溜まった澱みを洗い流すように泣き続けたのである。
暫くしてスッキリした冬美は泣き顔を〇〇に見られるのは恥ずかしかったのか、顔を洗ってくると洗面所に逃げ込むように消えていったのだ。
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「……ご迷惑をお掛けしました」
「迷惑なんかじゃ無かったよ。冬美に頼って貰えて嬉しかった」
「〜〜〜〜っっッ?!!♡♡」
洗面所から戻って来た冬美は恥ずかしそうにしながら〇〇に甘えたいという気持ちが強くなったのか『失礼します……♡』と呟き、対面座位のような形で彼の膝上に座りながら抱き付いたのである。
普段よりも可愛らさが増している冬美のことを受け入れていることを態度で示すよう、〇〇は腰の辺りを優しく抱き締めることで後ろに倒れることが無いように支えながら囁く。
「もっと甘えて欲しい。俺に出来ることなら何でもするから」
「……それじゃあ——」
自分から抱き付いているのに恥ずかしくて〇〇の顔を見られなかった冬美は、ゆっくり顔を上げて彼の頬を両手で挟むように触れたのであった。成人した後でも結婚前であるため比較的プラトニックなお付き合いをしている二人だが、それでも次に何をするのかは分かっているため互いに瞳を閉じながら顔を近付けていったのである。
——ちゅぅっ♡♡
「んむ……っ♡♡♡ ふぅ゛ーーっッ♡♡ ちゅぷぅ……っ♡♡♡♡」
唇同士を触れ合わせるだけのキスであるが、それでも濃厚であり情熱的なものであった。そんな冬美の愛情タップリである口付けに応えるよう、〇〇も更に強く彼女の肢体を抱き締めることで肢体を更に密着させたのである。
——ちゅっ♡♡ んむ……っ♡ ちゅぅっ♡♡ ちゅぷっ♡♡♡
一度キスをすれば愛情が溢れてしまい歯止めが効かなくなり、二人は唇を密着させては僅かに離すリップキスを何度も繰り返した。リビングには小さくともエッチな水音が何度も響き、ゆっくりとだが確かに興奮を高めていく。
「んむ……っ♡♡♡ ぷはぁーーっ♡♡」
「はぁ……っ」
一瞬にも数十分にも錯覚してしまう口付けが終わって二人の熱っぽい吐息が漏れており、冬美のウルウルと濡れた瞳には無意識に更なる熱を欲する情欲の炎が灯っている。彼女の瞳を見詰めるだけで〇〇はドキッと心臓の鼓動を高鳴らせ、お互いにもっと”深い”愛情表現を求めているのだと自分の欲望を正当化させたのだ。
呼吸を整えた二人は再び瞳を閉じながら、唇を近付けていったのである。
——ちゅぅっ♡♡
触れ合う唇から甘く痺れるような快感が走るのだが、今回の口付けはここで終わらない。今ままでしたことが無いディープキスをするため、二人は戸惑いながらも上唇と下唇の隙間から唾液に塗れた舌先を伸ばした。
——れろぉ〜〜っ♡♡♡
「〜〜〜〜〜っっッ゛!!???♡♡♡♡♡♡ ちゅぷぷぅ……っ♡♡ ちゅるぅっ♡♡♡ れろろぉ〜〜っッ♡♡」
唇を触れ合わせながら舌先同士を絡み付かせる淫らな深い口付け、初めてのディープキスであるが溢れる愛情と情欲が唇や舌を動かすのである。唇同士を密着させるキスは甘く痺れるような快感を齎したのだが、舌同士を絡ませ合う深い口付けはお互いの境目が曖昧になり一つに蕩け合うような快楽が生み出された。
舌を動かすせば動かす程に情欲の炎は更に燃え上がることとなり、二人は抱き合いながら唾液を掻き混ぜるようにネットリと舌を絡ませている。
「じゅるぅ……っ♡♡♡ ちゅぷっ♡ ん゛く゛ッ♡♡ ん゛……っ♡♡♡ ふぅ゛っ♡♡ ふぅ゛ーーッ♡♡♡ ぢゅぷるるるぅっ♡♡♡♡」
二人分の唾液は掻き混ぜられてブクブクと泡立ちながら、混ざり合った唾液をコクコクと喉を鳴らすことで嚥下していた。嚥下し切れずに唇の隙間から溢れた唾液で口元は濡れており形の良い顎先にまで伝い、冬美が着ている縦の黒セーターの豊かに膨らむ胸元の谷間の辺りにポタポタと滴り落ちている。
タップリと甘い口付けを交わした二人は、名残惜しそうにしながらも唇を離した。
「ちゅぷぷ……っ♡♡ ぷはぁーーっ♡ はぁ゛……っ♡♡♡」
唇が離れた後も冬美と〇〇の視線は絡み付いたままであり、彼は野暮であると思いながらも最終確認をする。
「……良いんだよね?」
「甘えても良いし、何でもしてくれるんでしょっ♡♡」
頬を赤く染める冬美は恥ずかしそうにしながら、〇〇にして欲しいことを口にするのであった。
「……私を抱いてっ♡♡♡」
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