SakeTami
濁り丸
濁り丸

fanbox


甲賀のくノ一は任務を忘れて、快楽に溺れる 前編-1

 ”望月 千代女”は戦国時代に活躍した女性である。  日本という島国を舞台に武将達が天下統一を目指して鎬を削り合う群雄割拠の時代は、蠱毒を生み出している最中の猛毒を持った蟲達が犇めき合う悍ましい壺の中身を彷彿とさせた。弱肉強食を凝縮して煮詰めたような環境の中で頭角を現す武将は、武力や知略、カリスマ性が突出した強者だけである。  猛々しい勇名を轟かせる武将達の中でも、特に名を馳せた人物が二人いるのだが——  毘沙門天の化身を名乗り泰平の世のために戦い、越後の龍とまで呼ばれた”上杉 謙信”は、強過ぎる余りまともな勝負が成立する相手すら殆どいないレベルの猛者であった。絶対的な強者である”彼女”と五度に渡る激戦を繰り広げた唯一の存在が、当時最強とされた武田軍を率いていた”武田 信玄”であり、軍神や龍と対になる甲斐の虎と謳われた豪傑である。  強さだけが正義であった戦国の世に於いて、強さの象徴と呼んでも過言ではない虎や龍に例えられ、終生のライバルであった二人は本当に珍しい。  現代よりも遥かに影響力が強かったお寺を焼き討ちしたり、神仏にすら弓引く第六天魔王を名乗った”織田 信長”でさえ、鬼神の如き強さと知略に秀でた武田の存在を恐れていたとされている。旗印に記された【疾如風 徐如林 侵掠如火 不動如山】という”風林火山”の通称でも有名な武田家に仕えたとされるのが、望月 千代女という甲賀に連なる女性忍者——所謂”くノ一”であった。  史実準拠の歴史的観点で見るのであれば、彼女が忍者であったのかは定かではない。  千代女自身が甲賀に連なる忍者の家系出身であったこと、信濃国を治める城主の妻でありながら身分の低い”歩き巫女”と深い関わりを持っていたことの二点が、後世の歴史家が彼女がくノ一であったのでは無いかと推察されている要因である。  基本的に忍者とは隠密活動による諜報や暗殺を旨としているが、千代女は”高名な忍者”としての名前や逸話が現代まで残っていた。そう言った意味でも彼女の存在は、忍者としての本質とは矛盾しておりある意味で皮肉が効いている。  千代女のご先祖様であると同時に甲賀流の開祖でもある”甲賀 三郎”という人物は、ハサンを殺すハサンという死の概念と化したグランドアサシン”山の翁”と同様、暗殺者や忍者という括りでは収まり切らない傑物なのであった。『諏訪縁起事』と『大岡寺観音堂縁起』に記された伝説の主人公である甲賀 三郎は、近江国甲賀郡に住まう”伊吹山の神”から直に呪詛を受けたことで祟られている。  経緯も兄弟から騙されて伊吹山の異界となる”地底の国”へと迷い込んでしまい、地上へと生還した時には竜にも近しい蛇体となっていた本物の”魔人”であった。最終的には人へと戻った後に神道の法を授かって神通力を会得、信濃国岡屋庄に”諏訪大明神”として祀られたという完全に人間の範疇を逸脱した存在である。  神格化までされた甲賀 三郎の子孫である千代女にも、所有者の肉体や精神を蝕む特級の”呪い”が受け継がれていた。その身に宿った呪いを転用した術や宝具も強力無比なものであり、口寄せにより”邪神・八岐大蛇”の分霊を限定的に召喚・使役することで対象を絞め殺すように呪殺することが可能である。  厳密に語るのならば千代女は甲賀という本家の血筋では非ず、家名もとうの昔に変わっている分家であった。それでも彼女は忍として主君にお仕えする傍ら、荒ぶる神の御魂を鎮めるために大蛇の巫女として祈りを捧げ続ける生涯を送ったのである。 『——甲賀上忍、真名を望月千代女。クラスはアサシン。どうぞ拙者に、主命をお与えください』  誰かに仕え続けてきた千代女が死亡した後に英霊となり、心根が優しく責任感が強い”藤丸 立香”に忠義を尽くすようになったのは必然であったのかも知れない。         ——————————————————  先日、断続的に発生している亜種特異点の攻略が一つ終わったばかりであるカルデアは、緊張状態が解けたことにより良い意味でも少し緩んだ雰囲気が漂っている。有事の際には適度な緊張感が必要になってくるのだが、逆に緊張状態が長期に渡って続けば何処かしらで綻びが生じるのは自明の理であった。  これまでの特異点攻略によって経験を積んだことにより、カルデアという組織もベテランと呼べるレベルで成熟している。だが、罷り間違っても中央管制室の空気が常に張り詰め、息苦しい状態になることを望んでは無かった。  日頃の労いを込めて職員達には全員一斉には無理だが順番に休暇が与えられており、サーヴァント達は普段通りの自己鍛錬や趣味などに時間を費やす生活に戻っている。また、有事の時には最も大きな責任が伸し掛かり、命の危険にも晒されてしまうマスターも与えられた休暇で心身を癒した後、普段通りの訓練やレポート作成、素材調達といった通常業務を再開していた。 「ふぅーーっ、今日も何とか乗り切った。部屋のシャワーでも浴びてサッパリしよ」  様々な状況を想定した指揮を含めた戦闘訓練やいざという時に動けるようにする為の自己鍛錬、英霊の再臨やスキル強化に必要な素材周回を終えたマスターは、張った筋肉を解すように右肩をゆっくりと回す動作をしながら自室に向かって歩いている。彼が疲労しているのは間違い無かったが、その足取りはどこか軽やかでこの後にある”何か”を楽しみにしているようであった。  それもその筈——  目的地であるマイルームに辿り着けば、古今東西の美女達が待っていたからだ。  女としての悦びを覚え込まされてハメ潰された結果——心も身体も堕とされている女性サーヴァント達は、マスターに内緒で夜伽の当番を決めているため、日替わり定食のようにマイルームにいる夜伽の相手が変わっていた。  モードレッドとアルトリアの親子やゴルゴーン三姉妹、酒呑童子と茨木童子の鬼娘達など、男性が一度は考えてしまう組み合わせの美少女と美女達が、自分と交尾するために秘所をビチャビチャに濡らしながら三つ指を突いて待っているのだ。  他にもチャイナドレスや学生服、バニーガール衣装など、旦那様を楽しませる為のコスプレ衣装を着てくれることも増えていた。最近はシチュエーションプレイにも熱を注いでおり、メイド服によるご主人様へのご奉仕プレイやナース服や女医のコスプレによる治療と称した搾精プレイなどにも興じている。  男性からすれば夢のような状況が待っているのに、マスターを含めて心が踊らない雄など滅多にいないのだ。 「今日は誰がいるのかな——」  そう呟きながら自室の扉を開いた彼の瞳に映り込んだのは、主君の前で忍びが跪く時の”跪座”と呼ばれる片膝だけを床に突いた姿勢をする”望月 千代女”の姿であった。  直立していても床に髪が触れる長さをした黒鴉の濡れ羽根のように艶を帯びた黒髪が床の上に扇状に広がっており、”立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花”という言葉があるが、正しく今の彼女の姿は可憐に咲いた花のようである。  普段と違う千代女に見惚れていたマスターであったが、暫くすると正気に戻ったのか声を掛けた。 「千代女さん……何かあったの?」 「はっ! ダヴィンチ殿からご依頼を頂き、此処に馳せ参じましたっ」  未だに理解が追い付いていない彼に対して、彼女は順序立てて経緯を説明する。 「ダヴィンチちゃんから?」 「はいっ! ダヴィンチ殿は親方様の精力が強過ぎる余り、カルデア全体の風紀が乱れつつあると仰っておりました。そこで殿方を満足させるくノ一仕込みの手練手管を習得している拙者が抜擢され、親方様が所構わず女子とまぐわうことが無いよう、褥を共にさせて頂き精を搾り尽くすこととなりましたっ♡♡」  どこか挑発するような上目遣いによりマスターのことをジッと見詰める千代女は、開いた口から蛇のように長い舌を伸ばして唾液に濡れた舌先をチロチロと動かして見せる。そして、淫猥な表情と同時に両手で太く長い棒状の”何か”を掴むような仕草すると、上下に扱き上げる手コキを彷彿とさせる助平なジェスチャーを披露した。 「————っ」  伸ばした手が届くような近さで彼女の痴態を目撃した彼は、喉を動かして生唾のゴクリと呑み込んで、分厚く頑丈なズボンの上からでも丸分かりなレベルでグググっと股間の辺りを膨張させる。普段の戦闘やカルデアの生活などでは忠実に任務を全うする忍びらしい姿しか見ていなかったが、現在の千代女は完全に相手に”メス”であると意識させる女性的な部分を前面に出していた。 「〜〜〜〜っっッ゛♡♡♡♡ 親方様もその気になって頂けたようで、拙者も幸せにございますっ♡♡♡」  巨大なテントを張っているズボンに気付き、熱を孕んだ視線を向ける彼女は、自分が他の美しい女性英霊達と同様に魅力的なメスであると思われていることに悦びを覚えてしまう。また、悦びを覚えるのと同時に自罰的な性格でもある千代女は、自分がどうしようも無いふしだらな女であると心の中で自嘲する。 (あぁ……これはただの任務であるのにっ。何故こうも心臓が高鳴ってしまうのか。これではあの時の酒呑童子殿の言葉を戯言だと、切り捨てられなくなってしまいまするっ)  既に親方様と呼んでいるマスターに永劫の忠節を誓っており、今回のように仕事としてなら身体を重ねることすら吝かでは無い千代女は、傍から見れば彼に惚れていると勘違いされてしまうレベルで好意を寄せた態度を取っていた。それこそ伊吹山の神に連なる部分で因縁を持った”酒呑 童子”から『浮気しはるん?』と、マスターとの関係を揶揄い半分に邪推されたこともあった程である。  酒呑の言葉を一度は完全に否定した筈なのに、此度のダ・ヴィンチからの依頼には、ほぼ逡巡すらせずに二つ返事で了承していた。それも彼と口付けさえしなければ、ただの任務だから問題無いと自分ルールを設けてしまっている。 「猛った肉竿の鎮め方は熟知しておりますっ♡♡♡」  生前に身に付けたくノ一の男を骨抜きにする技術、身体を売って金銭を得ていた”歩き巫女”との関わり由来の男を悦ばせる性知識によって、どのような仕草や表情、行動を取ったら男性が”その気”になってくれるのかを知り尽くしていた。故に彼女は性に関する事には絶対の自信を持っており、マスターに対して媚びが隠し切れないご奉仕を開始する。   「——存分にご堪能下さいっ♡♡」  千代女の白蛇のようにしなやかな指先が、彼の股間に向かって伸びていく。

甲賀のくノ一は任務を忘れて、快楽に溺れる 前編-1

More Creators