SakeTami
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ゲーム進捗と漫画の続き



以下、シナリオの先行公開です。

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進来「……さて、と……今日は、店についたらまず……」


午前中ではあるが、以前の職より遅い時間の出勤にも慣れた。


前職は内勤の会社員で、現職も社員と言えば社員だが、店舗内で働いているから店員と呼ばれる方が実体に近いかもしれない。


進来「ふう、っと……」


アパートの部屋を出て、空を見上げる。


今日もまあまあいい天気だ。


……見てのとおり、地味でもっさりしてて、モテない俺。


でも性欲と無駄な体力だけはあるから、始末が悪い。


それでも、以前の会社では一応彼女がいた。


いわゆる職場恋愛、社内恋愛だ。


一緒に仕事をしているうちになんとなく仲良くなって、なし崩しに付き合うようになって、それなりに楽しい日々だった。


しかし、俺はとにかく、地味でつまらない男である。


しばらくすると俺の彼女だったはずの女には新しい彼氏ができて、俺はあっさりふられて……


そして、社内でみんなが俺たちの仲を知っていたから、彼女も浮気、二股がきまりが悪かったのだろう。


俺のつまらなさ、真面目そうな割にやたらエロいだのなんだの、そういった欠点を大げさに言いふらし悪評をバラまいて、自分を正当化し始めた。


おかげで俺は、指差されてヒソヒソされることが増えて職場に居づらくなり、結局退職した。


それでも、人間関係が良く大好きな職場だったら、俺だって『人の噂も七十五日』とばかり、踏ん張ったかもしれない。


もともと、機会があれば転職したい、なんて以前から思っていた。


職場への小さな不満が、積もってきていた。


だからこれは、いい機会……だったと思い込むことにしている。


進来(夕飯は、店の売れ残り弁当でいいかぁ……)


というわけで俺の現在の職場は、地域ではスーパーも兼ねているような品揃えの、大型ドラッグストアである。


最近、やっと仕事に慣れてきた。


最初は、バイトの学生やパートのおばちゃんたちに教えてもらってばっかりだったけど、この頃は一応指示も出せるようになった。


給料だの休日だの、雇用条件は悪くない職場。


企業としても、もちろんこの国の人間なら誰もが聞いたことのある社名だ。


ただ、正社員とはいえ内勤ではなく商品管理から品出し、清掃やレジ打ちまでするせわしない接客業に近いから、退職者も多く入れ替わりが激しい。


おかげで、俺みたいな取り柄や資格、大した経験もない中途半端な時期の応募者でも、学生の新人バイトよりはと即戦力を期待されて採用された……んだと思う。


で、ついでに、心機一転とばかり住む家も変えた。


前は前の会社の近くのアパートにいたが、今は今の職場、店の近くのアパートに住んでいる。


こっちの方が、オフィス街に近かった前のアパートより家賃も安いし、建物もきれいで部屋も広い。


進来(……つまり、俺にとっては悪いことじゃなかったんだよな、この転機……と思うことにして……)


……これからは、女を見る目を鍛えよう。


もう二度と、別れた後に自分に都合のいいように悪口をバラまくような女とは、関わるまいと――


【女性】

「こんにちは」


進来「……へ? あ、ああ、こんにちはっ……」


これまでのことを思い返しつつぼんやりと歩いていたら、向こうから歩いて来たらしい女性に挨拶をされた。


ここにいるってことは、同じアパートの住人だろう。


だから俺も、慌てて頭を下げて、挨拶を返して……


進来「あっ!!」


【女性】

「えっ?」


そして顔を上げた瞬間、俺は小さく叫んでいた。


俺の目の前に、あの人が……涼野真美先輩がいたから。


進来「あ、あの、すみません、もしかして、涼野先輩ですか!?」


【真美】

「え……どこかで会いました? 涼野は私の旧姓で、今は……ねえ、先輩ってことは学校の……?」


進来「あ、ええと、あの……あのっ、こ、高校の時に、卒業式の後、先輩に告白した近道進来です!」


進来「……って、覚えてないですよね、はは……先輩に告白した奴、かなりいましたもんね、あの頃……」


もう、しどろもどろだ。


変に思われたくないし、こんなこと言うつもりはなかったけど、先輩の顔を見て叫んでしまったから、仕方ない。


あのまま黙って逃げた方が変に思われるだろうし、先輩はどうやらこのアパートとも関係があるみたいだから、また顔を合わせることもありそうだし……


当時、この先輩に告白する男子学生は数多くいた。


それは、先輩を見ればわかるだろう。こんな美人が学校にいたら、男子学生たちは……


それで、告白部隊には彼女の同級生はもちろんのこと、俺みたいな下級生もいたし、2学年下の俺は知らないけど多分上級生もいたと思う。


だから、彼女にとっては俺なんてほとんど面識のない、その他大勢の一人だったと思う。


俺はいつもこの先輩を見ていたけど、先輩は……


先輩は、地味で不細工寄りの見た目の下級生なんて、認識もしてなかっただろう。


俺に告白されたことだって覚えてるわけがないのに、俺は恥の上塗りをしてしまって――


進来(しまった、言わなきゃよかった……しかもあの時は、恋人がいるから、ってフラれたからなぁ……)


フラれた上に彼氏がいると知って、当時はひどく落ち込んだものだ。


進来「…………」


【真美】

「くすっ……」


思わず黙りこくり、軽く唇を噛んで視線を落とす俺を見つめながら、先輩は微笑んでいた。


【真美】

「ん~……思い出せないわねぇ、ごめんなさいね? あなたみたいなイイ男なら、覚えてるはずなんだけど……」


進来「はは、は……」


優しい言葉が、胸にぐさりと来る。


実に申し訳ない気持ちだ。


振られただのなんだのと過去の恥を晒して、先輩を困らせてしまった。


社交辞令にしても、俺はこれまで、イイ男なんて言われたことはない。


せいぜい、真面目そう、いい人そう、とかその程度だ。


だから、かなりのお世辞を言うほど、ものすごく気を遣わせてしまったようで、ひどく申し訳ない。


【真美】

「まあ、でもそのうち、思い出せるかも。 これからよろしくね、ええと……近道くん」


【真美】

「私、このアパートに越してきたの。 この部屋とは少し離れてるけど、ほら、あっちの……」


進来「あ……よ、よろしくお願いしますっ……」


【真美】

「それで今、引っ越しの挨拶中で……って言っても、郵便受けに印刷のお手紙付きのタオルを入れて回ってるだけだけどね、ふふふ」


【真美】

「それじゃあね、近道くん」


進来「はは、は……お、お気をつけて……っ……」


にっこり微笑まれ手を振られて、俺はすっかり男子学生だったあの頃に戻って、憧れの先輩に見惚れてしまった。


進来「先輩……涼野……先輩……」


つい、その名を口の中で繰り返しつぶやいてしまう。


あの頃のことが、思い出される。


あの頃の気持ちが、甘酸っぱく息苦しく、蘇ってくる。


彼女がそよ風のようにふわりと背を向けて去って行った後にも、彼女のことばかりが頭に浮かんでくる。


まさに、あの姿が脳裏に焼き付いている。


……でも確か、涼野は旧姓だって言ってたような気がするし、左手の薬指には指輪が光っていた……ような気もする。


進来「既婚者かぁ……まあ、当たり前だよなあ……」


あんな美人が、俺より年上で独身のわけがない。


もしかしたら、というか、もう子供が2、3人いたってごく自然な話だ。


進来(しかし、あんないい女を奥さんにできるって……一体どんないい男なんだよ……高収入の優しいイケメン……とか?)


進来「はあ……あぁあ……」


ため息が止まらない。


わかってる。


どうせ俺なんて、相手にされるわけがない。


でも、俺が相手にされるわけない、んだけどさぁ、でもさぁ……なんて、いつまでもうじうじしてしまう。


節史「おはよう、近道くん。 今日はポイント3倍デーだからお客さんが多くて忙しくなりそうだね、はは……おっとっと……」


進来「おはようございま……って、大丈夫ですか店長! 転ばないでくださいよ?」


節史「……ああ、大丈夫……僕、たまにあるんだよねぇ、なんにもないところで転んじゃったり、はは、は……」


進来「はは、俺もありますよ。 つんのめって家具の角に小指ぶつけたり……こないだも、店で……気をつけます……」


そんな俺の職場に、少し前、俺の入社よりも後になってから配属されてきた店長、遠野さん。


このとおり人柄は良く、目下の俺たちに対しても威張ったりしない優しいおじさんだが、小太りで俺よりモサい。


だから、なんとなく親近感が湧いてしまう。


店長というこの店舗でのトップなのに、うだつが上がらない感じで、抜けたところがあって……


もちろん、女にもモテない……と思う。


多分、いい人よね、で終わるタイプ。


で、40過ぎてるのかと思ってたけど、まだ30代なことにも驚いた。


でも、結婚指輪はしてるし、たまに『うちの奥さんも行きたがってたよ』なんて言ってた気がするから、奥さんはいるんだろう。


……きっと、店長みたいに小太りでにこやかなタイプだと思うけど、案外物好きな……と言っちゃ悪いが、男を顔で選ばないタイプの女性なのだろう。


進来(は~、今日も終わり、っと……ふう、マジで忙しかったな、ポイントの多くなる日は……)


その日の仕事を終えて、夕飯は適当に店内で売れ残り値下げ品を買い込んで、帰路についている。


今日は本当に、忙しかった。


まあ、ポイントが多くつく日とか安売りの日、目玉商品がある日、土日なんかはいつもそうなのだが。


進来(最近の俺の休日って、平日ばっかりだよなぁ……ま、土日休みは子持ちに譲って……平日はどこ行っても混んでなくていいしな)


そうやってのんびりアパートの廊下を歩いていると……


【真美】

「あっ」


買い物帰りの彼女が、現れたのである。


進来「あ……」


【真美】

「あら、近道くん! 今帰りなの? お疲れ様~」


進来「え? あ、お、おかえりなさい……じゃなくて、ただいま、ですっ……」


その姿を目にして、まずは一瞬止まってしまった。


それから、夕日に照らされ、きらきらと輝くように美しい彼女の姿に見とれて、ぼんやりしてしまっていたようだ。


挨拶されただけなのにどぎまぎして、なんだか必死になって、妙なテンポ遅れて返事をしてしまう。


【真美】

「そういえば近道くん、うちの夫とおんなじ職場なのね! びっくりしたわ、ふふふ」


進来「へ?」


【真美】

「私、さっきお買い物に行ってたんだけど、気づかなかった? 近道くん、お客さんが多くて忙しそうだったし、声かけなかったんだけど……」


進来「えっ!? 先輩、来てたんですか!? ぜ、全然気づきませんでした、すみません……ちょっと忙しかったんで、はは……」


同校の後輩だとわかってから、先輩は気さくに接してくれるようになった。


それが、すごく嬉しい。


でも、デレデレしつつも先ほどの彼女の言葉を思い出して、ハッとした。


進来「あ……えっと、あの、旦那さん、ウチの職場にいるんですか? ええっ、だ、誰だろう……?」


うちの店は結構従業員の数が多いけど、女性社員やパートのおばちゃん、バイトの学生を除くと、かなり搾られる。


その中で、真美さんの旦那候補といえば? 特に、20~30代くらいの男性と言えば……


【真美】

「あら、同じ苗字なのに、気づかなかった? うちの人、店長やってると思うんだけど……」


進来「え、店長、って……」


先輩との再会の衝撃が大きすぎて、あの時先輩が名乗った今の苗字が、頭に入ってなかった。


でも、店長……店長といえば……


進来「て、店長……あの、遠野店長が旦那さんっ!?」


まさかの事実に、思わず大きな声が出てしまう。


危うく『まさかっ! ウソっ、信じられない!!』なんて言ってしまうところだった。


【真美】

「ええ、うふふ、すっごいイイ男でしょ? もー、お店で働いてる人もお客さんも、女の人が多いから心配で……なんてね、くすっ……」


進来「は、はあ……」


進来(う、嘘だろ……? あの店長の奥さんが、先輩……? 先輩が、あの店長の奥さん!?)


進来(あ、ありえない……っていうかイイ男って、お世辞にも……いくらなんでも……店長は俺よりも、その……)


そこで俺は、はっとした。


学生時代の、涼野先輩の噂を思い出したのである。


涼野先輩は……あんな美人なのに、根っからのB専、不細工専門……という話だった。


明らかにデマだろ、と当時はまったく信じられなかったが、今になってその噂が真実だったと知ってしまった。


……多分、俺が入学した時にはすでに卒業していたであろう、先輩の彼氏とやらを見た人たちの間では、有名な話だったんだと思う。


【真美】

「……大丈夫? どうかした? ぼんやりして、ハアハアしながら黙りこくって……具合でも悪いの?」


進来「い、いえ……その、すみません、驚いちゃって……て、店長の奥さんだったんですか、ははは、はっ……」


あまりのことに、唖然として言葉が出なくなっていた。


なんとか声を搾り出しても、かすれて途切れてしまう。


【真美】

「ふふ、イイ男が2人も働いてるんだから、お店もきっと大繁盛よ。 でも、そうなるとますますうちの人のことが心配ね……」


進来「あはは……は、繁盛するといいなぁ……」


【真美】

「ふふ、じゃあ、またね。 これからは、夫ともどもよろしくねー」


進来「は、はい、よろしくお願いしまっ……っ、うっ……」


先輩が去った後にも、俺はこの場に呆然とたたずんでいる。


数分は、ぼんやりしていたと思う。


誰も通りかからなかったからよかったものの、はたから見れば不審者か、血の気を失って動けなくなってる急病人だと思われたかもしれない。


進来(い、イイ男2人って……もしかして俺と店長のこと……か? 先輩って、マジで目、どうかしてんのかな…?)


進来(てか、前に俺に言ってたのも社交辞令じゃなくて……マジだったのか……)


明らかにB専の女性にイイ男と言われ、正直複雑な気持ちだ。


進来「……イイ男、って……先輩、何言って……、っ……」


……でも、彼女にとってはイイ男、だと思われてるなんて、やっぱり嬉しい。


彼女は俺の『好きだった女の子』であり、俺は今でも彼女に憧れてる……からか。


その後はもう、帰宅してからも頭がぐるぐるして目まで回りそうで、食事もろくに取れずどうしようもなかった。


ここ数日で、いろんなことが起こり過ぎてる。


頭がついていかない。


思考が回らない。


衝撃が強すぎて脳が情報処理できない、ってヤツか。


進来(でもなぁ……俺なんかをイイ男って言ってくれる人なんて、男でも女でもいないよ……)


進来(でも、先輩はそういう好みだから……つまりは俺のことも好みの男、で……)


進来(じゃ、じゃあ、先輩が学生時代の彼氏と別れた後……店長より先に俺が出会ってたら、俺が先輩と結婚できてた可能性も……)


進来(……俺が、先輩を奥さんにできてた可能性もあるのかな……はあ……俺、どこまでツイてないんだよ、まったく……)


高校時代の、彼女。


今は店長の奥さんの遠野真美だけど、当時は涼野真美という名の女子高校生だった真美さん。


あれは、俺が高校に入学してしばらくの頃だったと思う。

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今回はいつもとは少し異なり、美女と野獣です。

なるべくイラスト上で不快感などは無いように修正する予定です。

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