いつもご支援ありがとうございます。彩春です。
新刊『爪痕』
お手に取って下さった方、本当にありがとうございます。
今回はこの本の制作裏話を書いていこうと思います。
思えば制作裏話の記事を書くのは『傷跡』以来ですね。
傷跡の制作裏話はこちらの記事から読めます↓

いつもご支援ありがとうございます。彩春です。 新刊「傷跡」 お手に取って読んで頂いた方、本当にありがとうございます。 自分のFANBOXの投稿記事を見返していたら、 原稿やばい間に合わない!という記事の後に 「イベントお疲れ様でした」とか言ってて、間がかなりすっぽ抜けていましたね… 今更感満載ですが、無事脱稿...
今読み返すとちょっと恥ずかしいのですが笑
そもそも凪人はもう描きません!あいつのことは忘れてください!
とか言っているのに、その後の『とりどりのかぜ』にもちゃっかり登場してるし
何なら今回メイン張ってるし。何やねん…
すぐに変わりゆく彩春の創作心ですが、どうかお付き合い下さい。
そういえば『とりどりのかぜ』の裏話も書こう書こうと思っていたのに
結局書けていなくてすみません。でも、いつかは必ず書きたいと思っています。
今回は私自身が『爪痕』の感覚や記憶を無くさない内に書いておきたいので
とりどりは今回はお預けです。すみません。
では、本題に移りまして…
彩春がこの本に詰めたこだわり、癖、思いなどを書いていきます。
長いです。熱く語り過ぎてキモいと思います。
大丈夫という方はご覧下さい。
※壮大なネタバレ含みます
※『傷跡』のネタバレも含みます
※『爪痕』を既に読んで頂いた方、又は今後読む予定ない方のみご覧下さい。
皆さんは「爪痕」という言葉をどのように捉えていますか?
最近では爪痕という言葉は、何か成果を残すというような
プラスの意味で使われることがあります。
ですが、私はこの言葉をマイナスの意味で捉えています。
何か大きな災害が起こったあと。取り返しのつかない未曾有の爪痕。
この作品にも、そんな思いを込めています。
12歳、154cm
『傷跡』で出てきた、あの凪人の少年時代の姿です。
この物語は『傷跡』同様、凪人視点の物語であり、
かつ読み手の方が凪人に感情移入しやすいように
凪人以外のモノローグを一切入れていません。
これは私自身の話になるのですが
凪人の過去話を描こう!と決めてプロットを組もうとした時、
最初何も書けなかったんです。ほんとに…
物語が思いつかないんじゃなくて、凪人のことが分からない。
分からないから描けない。この悪循環でした。この時初めて、
「ああ、私は凪人のこと何も知らなかったんだな」と気が付きました。
自分が生み出したキャラクターなのに何だか不思議ですよね。
なので、『傷跡』を何度も何度も読み返して深掘りしました。
それでもまだまだ分からないことだらけです。思えば颯太の時もそうでした。
作品を作り上げるというのは、キャラクターを作り上げることなんだなと…
どうしたらこのキャラクターが一人歩きできるようになるんだろうか。
どうしたらこのキャラクターの魅力を引き出すことができるんだろうか。
私が生み出しただけであってこのキャラは私ではない。本当に難しい
最後までずっと悩みながら作っていました。
物語は凪人が引越しをして、母親と共に
その地の神社に参拝に行くシーンから始まります。
両親が離婚をして、目まぐるしく環境が変わる中で神社に参拝に行くというのは
子どもにとってはよく分からないけれど、どこか強く記憶に残っている。
凪人もそんな感覚だったんじゃないでしょうか。
これが後の『傷跡』の冒頭、凪人が颯太のいる神社に
参拝に行くシーンに重ねています。
実は私は今まで4回ほど引越しをしているのですが
いつも母親から「引っ越した時は、まずはその地の神社に挨拶に行きなさい」
と言われていました。
神さまとのご縁をつくり、神さまに見守ってもらう。
凪人も凪人の母親も、どこかすがる思いで神社へ参拝にしにいったのだと思います。
物語が進むにつれて居場所を失っていく凪人。
親が行為をしている隣でカップラーメンを食べる凪人のシーンは
描いていて最高に楽しかったシーンです。
凪人の心が蝕まれていく様子を表現できていたら嬉しいです。
すごく細かいこだわりなのですが
このシーン、凪人のお箸の持ち方を敢えてぎこちなく描いています。
地頭が良くて頭の回転が速い凪人ですが、マナーがあまり分かっていない
親が凪人に対して放任的であった事をここで表しています。
凪人も凪人で最初からヤバい奴だったのではなく、周りの環境がそうさせた
ただ凪人の心の闇が日に日に剥き出しになっていった
環境の変化、楓と関わることで変化した凪人の心情が伝わっていればいいな…と思います。
10歳、135cm
神社で花を見つめていた少年。鈍臭くてぼーっとしています。
Xで原稿の進捗として楓のコマを上げた時、
この子が颯太だと勘違いしている方がよくいらっしゃいました。
実はキャラクターデザインは、敢えて颯太に似せています。
(あとただ単に私の描き分けが下手なんです)
『傷跡』で凪人が颯太に心を奪われた理由のひとつがこれです。
ただ、颯太と楓は決定的な違いがあります。それは後ほど説明しますね。
楓が見つめていた花について。
実は、あの花はピンク色のコスモスです。
花言葉は「純潔」という意味を持つそうです。
つまり、あの花は穢れのない楓の事を暗示しています。
結末で凪人はこの花を踏み潰しますが…
このシーンは「穢れのない楓はもういない」そんな意味を込めています。
凪人にとっては、楓のことを壊せなかったので
せめて楓のような花を潰してやろうという事ですね。
ヤバすぎだろあいつ
これは物語に直接関係しないし、絵に描くまでもないかなと思って省いた
完全な裏話なのですが…
実は楓って養子なんです。
楓本人も、それを理解していました。
10歳の楓。なのに母親はおばあちゃんみたい。
一人っ子。やたらと大きい家。
楓は艶のあるストレートな髪なのに、母親は癖っ毛。
凪人は楓とこの母親が、本当の家族ではない事にうっすら気付いていました。
終盤で凪人は楓に「良かったな!幸せな家に生まれてこれて」と吐き捨てていますが
楓がより精神的ダメージを受けるように、敢えてこの言葉を選んで言っています。
颯太と楓の違いについて。
楓は凪人に依存していました。これが颯太との決定的な違いです。
颯太はなんだかんだ言って神社のお手伝いが心の拠り所で、
周りの大人たちにかわいがられ
凪人がいなくても毎日楽しく過ごしていました。
凪人自身が颯太に引き寄せられていたんです。
それに比べて、楓はずっとひとりぼっちでした。
いじめられていた中で、唯一仲良くしてくれたのが凪人だったので
出会いのシーンで凪人から差し伸べられた手は、楓にとっては
救いの手のように見えたのでしょうね。
楓の方が一方的に凪人に引き寄せられていたんです。
「楓がいじめられていた」という描写についてですが、
この作品の中では楓の主張というか描写をなるべく減らしたくて
(凪人にとって楓はそこまで大きな存在ではなかったから)
どうしたらいじめられていたことをさりげなく読み手に伝えられるかな?と
ずっと考えていました。
考えた結果、直接的な描写は入れず、間接的に伝えるようにしました。
凪人も多分、楓がいじめられている現場は見たことがないと思うし
読み手がなるべく凪人の視点に近づけるように、
なんとなく「この子いじめられてるんだな」と伝われば良いと思いました。
楓の花言葉は「大切な思い出」という意味を持ちます。
凪人と過ごした時間。楓に向けられた凪人の気まぐれの優しさ。
それこそ正に、楓にとっては大切な思い出でした。
だからこそ、凪人にあんなに酷いことをされても
全部自分が悪い、自分さえ我慢すれば
前のような凪人に戻ると、また自分と遊んでくれると
最後の最後まで信じて待っていたんですね。
楓のお話も…またいつか描きたいです。いつになるか分かりませんが…
最後に「爪痕」の意味について
冒頭でもお話ししたように、私は「爪痕」という言葉を
マイナスの意味で捉えています。
でも、凪人にとっては?
「傷跡」は颯太ただひとりが抱え、颯太自身にのみ残ったもの。
「爪痕」は凪人を含む、凪人に関わるもの全てに残ったもの。
凪人の母親、楓、楓の母、学校の先生
全てに爪痕が残りました。
でも、凪人自身はそれを悪いことだと思っていません。
寧ろ最後にやり切ったような顔をしてますよね。
凪人にとって、これらの出来事は「成果を上げた」事だったのかもしれません。
それが凪人にとっての爪痕です。
このシーンは私がこの作品の中で一番描きたかったシーンであり、
一番最初に描き始めたシーンです。このページに凪人の全てを詰めました。
「傷跡」は颯太の笑顔がなくなっていく
「爪痕」は凪人の笑顔が増えていく
この二つの作品は相対的な面を持っています。
両作品を読んで下さっている方は、その違いも楽しんでいただけると嬉しいです。
(もちろん『とりどりのかぜ』もよろしくお願いします!笑)
長々と語りすぎてしまいすみません!
でも、この作品は私の癖全開でこだわりを詰め込んだ大切な作品なんです。
過去一攻めたお話ですが、過去一描いていて楽しいシーンが
多かった作品でもあります。
颯太が出てこないから、最初は描くのがすごく辛かったのですが
描き進めるにつれて、凪人の事をもっと好きになれました。
正直この作品は世に出すのが本当に怖かったです。
でも、思いのほか
ポジティブな感想をたくさんいただいて本当に嬉しかったです。
もちろんそればかりではないのですが、後悔は一切していません。
110pという長編になってしまいましたが
読んで下さった全ての方に、心よりお礼申し上げます。
本当に本当にありがとうございました。
来月からは次回作の原稿に着手します。
次作はちょっと鬱作品は休憩…ということで、颯太のちょっとした
ほっこり話を描けたらなあと思っています!とは言っても成人向けですが…
時系列的には『とりどりのかぜ』と『傷跡』の間くらいの話になります。
それ以外でも、まだまだ描きたい話(颯太の続編や兄弟の話など…)
はたくさんあるので
是非楽しみにしていただけると嬉しいです!
ここまで読んで下さりありがとうございました!
また来月お会いしましょう!
彩春
彩春
2025-01-30 10:03:25 +0000 UTCゆい@雨
2025-01-25 07:01:34 +0000 UTC彩春
2024-11-12 07:35:42 +0000 UTC洒落君
2024-10-31 21:58:51 +0000 UTC