夜の山奥。澄んだ空気に、獣の匂いが漂っていた。
ヴァルクは岩場に腰を下ろし、荒い呼吸を吐きながら天を仰ぐ。雲の切れ間から、白銀の月が姿を現す。その光が全身に降り注ぐたび、彼の肉体は微かに震え、内奥に眠る獣が牙を剥き始めた。
「……今夜も抑えきれねぇな。」
低く呟きながら、彼は胸元の首飾りを指でなぞった。
狼の牙と鉱石で作られた護符――それは代々受け継がれてきた抑制の象徴だ。
本来なら、この首飾りが完全な獣化を防ぎ、人の理性を残すはずだった。だがここ最近、効力は確実に弱まっている。昼間でもふとした拍子に喉から唸りが漏れ、鋭い爪が指先から覗くことすらあった。
だからこそ、彼はこうして人目を避け、山奥へと足を運ぶ。
満月の夜に全てを解放しなければ、日常生活の中で自分が獣に呑まれてしまう。
ヴァルクは立ち上がると、ゆっくりと衣服を脱ぎ捨てた。鎧も布もすべて岩の上に重ね、ついには全裸の肉体を月光に晒す。
鍛え上げられた広い肩、厚い胸板、割れた腹筋。無駄のない筋肉が皮膚の下で脈打ち、獣のように力強い躍動感を放つ。
股間からは濃い陰毛に包まれた太いペニスが重たげに垂れ下がり、たくましい陰嚢が月明かりに艶を帯びる。既に血流が集まり始め、半勃ちになった肉棒がぴくりと震えた。
「来い……」
そう呟いた瞬間、内側から熱が迸った。
背骨を駆け上がるような衝撃。胸が膨らみ、筋肉が硬直し、血管が浮き出す。
彼は大きく口を開け、咆哮した。牙が伸び、爪が黒々と変化していく。
――バキバキッ!
骨が鳴り、肉が盛り上がる。
大腿がさらに太く膨張し、胸板は岩のように厚くなった。首飾りが淡く光り、完全な獣化を必死に抑えているが、その力は抑えきれず漏れ出している。
股間のペニスもまた、変身の衝撃に反応するように硬度を増していた。熱で滾った血液が集まり、亀頭の先から透明な雫がにじみ落ちる。理性がかろうじて残っている今でも、獣性は肉体を昂ぶらせてやまない。
尻のあたりから、黒と茶の混じった尾が勢いよく生えた。
ヴァルクは四肢を震わせ、全身から汗を飛び散らせながら月に向かって吠える。
「オォォオオオオオオオオッ!!!」
その声は山々に反響し、夜を裂いた。
理性と本能の境界で揺れながら、彼は岩場を駆け下りた。
大地を蹴るたびに砕石が飛び散り、巨躯は信じられぬ速度で森を駆け抜ける。
木々の間を突き進み、谷を跳び越え、ただひたすらに走る。
汗が滴り、獣のように隆起した筋肉を濡らす。
硬くしなやかなペニスが太腿に打ち付けられ、先端からは興奮に耐えきれぬ透明な液が糸を引いて落ちる。
走るたびに胸毛が汗に濡れ、尾が大きく揺れる。その全てが「生きている肉体」であることを誇示していた。
「……俺は、俺だ……!」
苦悶の声が漏れる。
しかし次の瞬間、爪が無意識に岩をえぐり取り、黄金色の瞳がぎらりと輝いた。
首飾りが微かに軋む音を立てる。
――もしこれが壊れたら。もう二度と人には戻れない。
それでも、ヴァルクの胸には奇妙な昂揚が広がっていた。
獣の力を抑えつけることに疲れ果てた日常。
その枷から解き放たれ、ただ「獣」であることの喜び。
汗と唾液にまみれ、肉棒を滴らせながら駆け抜ける夜の自由。
「まだ……まだ足りねぇッ!!」
吠えながら、彼はさらに走った。
木々を薙ぎ倒し、岩を蹴り飛ばし、ただ獣のように夜を支配する。
月光を浴びた筋肉が煌めき、尾が大きく揺れ、透明な雫が先端から垂れ落ちる。
理性は細い糸のように揺らぎ、いつ切れてもおかしくなかった。
それでも、彼は最後の理性で「山奥に閉じこもる」選択をしていた。
人里に降りれば、獣は人を襲うだろう。
だからこそ、この孤独な山で発散し続けるしかない。
月はなおも輝き、夜は深まっていく。
ヴァルクの咆哮は山々を渡り歩き、汗と精を滴らせるその肉体とともに、獣と人の狭間で揺れる彼の魂を告げていた。