※モブとの性行為描写が含まれます。
騎士となって数年。
それは、私がまだ二十歳の半ばにもなっていない頃のことだった。
「おい、フレデリク。娼館に行くぞ。奢ってやる」
騎士らしいしっかりとした足取りで前を歩いていた上官が振り返り、突拍子もないことを言い出したのだ。
街の近くに突然現れた魔獣の群れを討伐した任務の帰り道。冒険者達と合同で行う初めての大規模討伐任務で、数え切れないほどの魔獣を斬った。命のやり取りの現場に自分がいるという現実、その緊張感と興奮で気は未だ張り詰めたままだ。
上官も、普段と同じような笑顔を作ってはいるが、その目はギラギラと血走っていた。
「い……今からですか?」
「今だからこそだ。人間の本能って奴なんだろうな。命のやりとりをするような任務の後は、一発ヤらないと寝むれやしない。どうせ、お前もムラムラしてんだろ?」
戦闘の興奮と無事に任務を終えられた安堵から体が昂っているのは事実だが、それを他人にぶつけて発散しようだなんて、騎士として相応しい振る舞いだとは思えない。
しかし、上官の誘いを無下に断ることもできなかった。
「なに戸惑ってるんだ? ああ、さてはお前童貞かァ?ははは」
「……騎士として、己を鍛えなければならない私にはそんな時間はありません。 おかしいですか?」
「悪い悪い、怒るなよ。突っ込む方でも突っ込まれる方でも、まぁ……好みで選べばいいが、童貞なんてサッサと捨てちまえばいい。ほら、行こうぜ」
未経験であることをからかわれ、流石に言い返したが、上官はどこ吹く風だ。
結局、私は上機嫌の上官に腕を掴まれて、引きずられるようにして娼館に連れ込まれてしまう。
「ここは在籍している娼婦も娼夫も魔人ばかりだから、みんな貪欲な上に頑丈でな。任務帰りは、つい手加減が効かなくなるが、多少乱暴にしても怒られない。何と言っても自ら好んでここで働いてる連中ばっかりだからな。趣味と実益を兼ねてる奴らだから、真面目なお前でもここなら文句はないだろう」
『魔人』という種族……もちろん知っている。魔の力をその身に宿した種族。今ではほとんど先祖返りばかりだが、過去にはとんでもない力を持った純血種もいたとか……。そして、その特性は過剰なまでの性欲。食事の代わりといわんばかりに、男女問わず相手の精を貪り満たされるという。その差は個人差も大きいようだが、身近に『魔人』代表のような奴がいるから、『魔人』のことには多少詳しい。
そうして入った店の中は、一見すると普通の宿屋のように見えた。
受付には、いかにも娼館の女主人といった風体の女性が座っていて、気怠げに煙草をくゆらせている。
「ああ、騎士様いらっしゃいませ。連れがいるのは珍しいね」
「おう。今日はこいつの筆下ろしも兼ねてきたんだ、いい子をあてがってやってくれ」
かっと、顔が熱くなった。
私がうろたえる姿が面白いのか、上官はニヤニヤしている。
しかし、女主人は慣れているのか特に気にした様子もなく、手元の帳面を覗き込んだ。そこには、今日出勤しているこの館で身を売る者たちの名前が書いてあるようだった。
「どういう相手が好みなんだい? といっても、童貞を卒業したいなら……。胸がでかい方が良いとか、ケツが引き締まってるのが良いとか。ああ、特殊な趣味があるなら、先に言ってくれたら対応できる子を選んであげるよ」
「い……いいえ、特には……ありません……」
性的な経験がない上に、娼館なんて場所には生まれて初めて足を踏み入れたのだ。ただでさえ戦闘の後で気が立っているのに、緊張と困惑で頭が破裂してしまいそうだった。好みなんて聞かれても、うまく答えることができない。
「なんだよ。あー、じゃあオレが適当に選んでやろうか。戦いの後で興奮しているなら、そういう時は女より男のほうがいい。で、こいつは自分からがっつくタイプでもないだろうから、経験豊富で主導権を握ってくれるようなやつの方が向いてるだろうな」
「はぁ……」
「それなら、丁度良いのがいるよ」
初体験の相手を上官に選ばれているという状況に、言いようのない気まずさを覚える。
上官と女主人が勝手に私の相手を決めて、用意するからと少し待たされた後、私は行為をするための部屋に案内された。
狭い室内には、ベッドと小さなサイドチェストしかない。明かりは間接照明で薄暗く、室内は甘い香油の匂いとほのかな汗の匂いがした。今からここで……と思うと、興奮と緊張、そしてかすかな嫌悪感を覚える。
ベッドには、裸体にバスローブを羽織っただけの男が一人座っていた。
『魔人』と言っていたが、見た目は私と同じ普通の人間のように見える。『魔人』種は角や魔眼といった特殊な容姿を持つものが多いが、この娼夫の特徴といえば褐色の肌と両目の色素が異常に薄いぐらいだろうか。
紫色のそれは、まるで宝石のように見えた。
彼が私の……初めての相手になる娼夫なのだろう。
「どうかしたの? こっちおいでよ」
「あっ、ああ」
部屋の入口で棒立ちになっている私を見て、彼は苦笑しつつ手招きをした。おとなしく従い、彼と隣り合ってベッドに腰掛ける。すると彼はすっと寄り添って肩を触れ合わせてきた。体温を感じると、余計に緊張してしまう。早鐘を鳴らすような胸の音がうるさい。
「砂時計一本分って聞いてるけど、いいかな?」
「この砂時計一本分……? そんなにかかるものなのか?」
「ははは、人によるかなぁ」
サイドチェストの上に置かれた、大きい砂時計を娼夫はどこか艶めかしい手付きで撫でる。
思っていた以上にその砂時計は大きい。
一本分落ちきる頃には日付が変わっているだろう。
「この砂が落ちきるまでは、俺がいーっぱい気持ちよくしてあげるから……ふふ、この一本じゃむしろ足りないくらいかもね? 足りなくなったら、追加料金かかるけど延長もできるから遠慮なく言ってね」
トンと砂時計を置いて、彼は妖艶な笑みを浮かべる。そして、するりと私の股間へと手を伸ばしてきた。
もともと熱を帯びていたそこは、撫でられただけで一気に膨らんでしまう。
「う……っ」
「これくらいで勃起して、若い騎士様は可愛いね。ねぇ、舐めてあげようか」
「いっいや……に、任務後で体をまだ洗っていないのだが……」
口先だけの拒否なんて、この道の熟練者には見抜かれているのだろう。膨らんだ期待で俺の股間のそれは硬度を増して、布地を押し上げて苦しいくらいだ。
そこへ、娼夫が笑みを浮かべながら顔を寄せる。
「いいよ。蒸れたおちんちんの匂い、俺だーい好きだから」
そう言って、彼は私の下穿きを引き下げる。
バチン!!
「え゛っ!?」
勢いよく飛び出した私の性器が彼の頬に当たってしまい、まるで頬を平手で叩いたような音を立てた。
驚いたのか、彼は頬を押さえたまま固まってしまう。
「すっ、すまない……」
「だ、大丈夫だけど……これ……」
腹につくほど反り返った私の性器を、彼はなぜか呆然とした様子で凝視している。
もしかして、なにか私のここはおかしいのだろうか。
性経験がない私は、当然だが自分以外の男の勃起を見たことがない。
騎士団では、不本意ながら家柄のせいで風呂付きの個室が与えられている。
だから他人のモノをまじまじとみる機会もない。
自分のものが普通だと思っていたが、もしかして異常なのかもしれないと不安になってしまう。
「……ちょ、ちょっと思ってたより大きいからびっくりしただけ。気にしないで、全然おかしいことじゃないから……」
うろたえている私に気が付いたのか、娼夫は一瞬バツが悪そうな顔をして、私の勃起した性器に手を伸ばした。
柔らかく、だがひんやりとした両手で包み込むように握られると、それだけでたまらなく気持ちがいい。他人から与えられる不慣れな快感と体の奥で滾る興奮に、ふーふーと息が荒くなる。
「っ、んむっ、むぐ」
「っ! くっ!」
先端をぱくんと熱い口内に招かれ、思わず声が出てしまった。
亀頭の張り出した部分を、舌がぬるぬると這いまわる。
わざとなのだろうか、唾液を絡めて音を立てながら、先端ばかりを嘗め回された。
見えないにも関わらずその行為の卑猥さに、頭が沸騰しそうだった。
「くっ、う……っ」
「むぐ、うっ、騎士様のちんこ本当におっきい、今まで見た人間の中でもほんとおっきい! っ、それに、すごい先走りっ、んんっ」
「はぁ、あっ、う、手加減してくれっ……、で、出てしまうからっ」
「んっ、いいよ、口に出しても、あっ」
早々に達しそうになってしまい、私は半ば無理やり彼の頭を私の股間から引き離した。
「もうっ、せっかくいいところだったのに……。あっわかった、俺の中に挿れたいんでしょ? んー、その大きさギリギリ……かもだけどいいよ。きて」
「……よろしく、たのむ……」
誘われるままにベッドに押し倒そうとすると、なぜか娼夫は焦った様子で私の体を押し返そうとした。
「ま、待って。さすがにその大きさだと滑りを良くする香油を塗らなきゃ」
そう言って、彼はサイドチェストから油の入った瓶を取り出した。
そしてベッド上でこちらに見せつけるように足を開くと、中身を自らの下腹部に垂らす。ふわっと甘い匂いがした。
そして、ふと娼夫の臀部に見慣れないものがあることに気づく。それは尻尾だ。『魔人』であることの証明のそれに、私は知らぬまに喉を鳴らしていた。
半勃起状態の性器と、その下の睾丸。そして、赤く熟れたような肛門が、油でテカテカと光っている様はあまりに扇情的だ。
娼夫は指でたっぷりと油を掬い、己の中に塗りつけていく。くちゅくちゅと音を立てて指を出し入れする様を見て、私はもう我慢できなくなりそうだった。
いつもより大きく張り詰めた性器を握りしめて、腹の奥からふつふつと湧いてくる暴力的な性衝動に耐える。
「お待たせ、いい子に待っててくれてありがとね。もういいよ。ほら挿れてみて、騎士様のは大きいからゆっくりね」
ようやく許可が下りて、私はうつ伏せになった娼夫の身体へと覆いかぶさる。彼が私のものに手を添えて、挿れるべき場所へ導いてくれた。
くぷっと、先端が熱い肉に埋まる。
「ふ……っ! う、くっ!」
「ううっ、そ、そのまま、ゆっくり奥までっ、ぐっ」
しかし、なぜかうまく入っていかなかった。
娼夫の体内はキツく、とても狭い。私の性器は半分ほど入ったところで行き詰まってしまった。
「あ、あ゛っ、いっ、いったん抜、あっ」
娼夫が何かを言っているが眼の前のことに夢中の私のその言葉は入ってこない。
なんとか全部挿入しようと、上から体重をかけ腰を押し付ける。香油の滑りを借りて、少しずつ奥へとねじ込んでいった。
熱く柔らかい肉筒が私の滾りきったものに絡みつき、ぎゅうぎゅうと締め付けてくるのがたまらなく気持ち良い。
「うあ゛っ! あぐ、ぁ!」
「っ! はぁ、キツい、なっっ!」
はじめてだというのに、私の体は自分がすべきことを知っているようだった。本能に突き動かされるように、私は前後に勢いよく腰を振る。
「あ゛! ま、っ! 待って、でか、すぎ、て、ああっ! い、っ!」
娼夫の腰が逃げるようにびくんびくんと跳ねて、私の性器が抜けそうになった。うまくできない事に焦りを覚え、私は彼の体を抱え込むようにして、強く腰を打ち付ける。
ギシギシとベッドがきしむ音が、娼夫の嬌声にかき消された。
「ああっ! あ゛! や、ああ!!」
私の猛りを包む肉壁が痛いほど締り、ベッドに押し付けられた娼夫の性器から白い液体が噴き出した。
ぎゅうぎゅうと吸い付いてくるような娼夫の中はあまりに気持ちがよすぎて、声をあげる娼夫を本能のままにねじ伏せ夢中になって腰を振る。
はじめは半分ほどしか入っていなかった私のそれが、出し入れを繰り返すたびに少しずつ深くまで挿入できるようになっていった。
「あぐ、イっ、イ゛っで、るからぁ! イ゛っで、るからぁ! あっ! ひぐぅ!」
「っ、くっ、すごいな、っ、こんなに、気持ちがいいものなのかっ」
自分でするのとは全く違う。
奥を一突きするごとに、きつく締まって痙攣する体内。悲鳴のような喘ぎ声をあげる魔人の男を組み敷いて、蹂躙するように犯す快感。
これが性行為の快楽なのか……。私は今にも理性が溶けてしまいそうだった。
「あ゛ぁ! い、またイくっ! あああっ!」
娼夫の性器からは、だらだらと白濁が漏れ続けている。香油の匂いが満ちてた部屋の中は、いつの間にか精子と汗の匂いしかしなくなっていた。
ずっと達しているのか、私のモノでそんなにも気持ち良くなってくれたのか。そう思うと、頭がのぼせあがるほどに興奮し、私の奥底からも強い射精感がこみあげてきた。
ふと気がつけば無意識に、逃さないとばかりに私は娼夫の腕を掴んでしまっていた。
「くっ! う、もう、私も、で、出そう、だっ!」
「やあ゛! あ、ああっ!」
「もう少しで、全部はいるっ、くっ!」
「やぁ! むり、む、あ! お゛おぁ、あ゛っ、ああっ!」
最後に、根元まで挿れてみたい。
娼夫の腕を掴み、力尽くでねじ込むように腰を突き上げると、ようやく私のモノは彼の最奥を暴くことに成功する。娼夫は背を逸らして野太い声をあげ、今にも根元から千切れそうなほどに肉壁はきつく引き絞られる。
「う、ぐ……!あ゛ッ!」
一瞬目の前が真っ白になり、激しい快感と開放感に情けない声が出てしまった。
最後にわずかに残った理性で、とっさに腰を引き娼夫の体内から私を引き抜く。抜けたとほぼ同時に、先端から多量の白濁が噴き出して彼の尻や太ももを汚した。
いままで経験したことのない深い絶頂に、私の精液は止まらない。
「あっ、あ……お、おわった……?」
ようやく射精が収まると、真っ赤な顔を涙でぐちゃぐちゃにした娼夫がこちらに顔を向けながら震えた声でつぶやいた。
その言葉に、私はサイドチェストの上の砂時計を見る。
「……いや、まだ半分も砂は落ちていないようだ」
まだまだする時間があるのかと思うと、私のものはまた硬度を取り戻しはじめた。
「え、うそ……うそうそ! あれだけ出して!? もう!? あっ、ああ!」
なぜか涙目で焦る娼夫の腰を掴みなおし、私は再び彼の中へと挿入する。
そうやって客を煽って喜ばせるのも彼らの手管のひとつなのだろう。
そうして、私は時間を目一杯使って、自分の中で暴れ狂う性衝動をすべて娼夫に受け止めてもらった。
ふと気が付いて砂時計を見ると、ちょうど中の砂が落ちきるところだった。
「ああ……時間みたいだな」
何度目かわからない射精を終えて、私の性器はようやく硬さを失った。
娼夫の肛門はぱっくりと口を開けたままになっていて、びくびく震えている赤い肉壁が見えている。彼の下肢は私の出した精子でべっとりと汚れていた。
その姿がまた卑猥に見えて、私の下腹が熱を持つのがわかるが、さすがにこれ以上はやめておいたほうがいいだろう。
こんなに出したのは初めてだからな……。
戦いで昂った性欲も本能も満足し、私は晴れ晴れとした気分になっている。
「とても、気持ちが良かった。君が言っていたとおり、一本では足りないくらいだったな。今日はありがとう……」
相手をしてくれた娼夫の腹を撫でて、私はそう声をかける。しかし、なぜか彼は返事をしなかった。
どうしたのだろう、疲れて眠ってしまったのだろうか。
ベッドに沈みこみヒクヒクと小刻みに体を震わせているだけで、娼夫はいつまで待っても起き上がってこなかった。