SakeTami
雪中アヤメ
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【先読み】バキュームベッドとウラオモテ

「そういえば愛花、今週末なんだけどさ」 「うん?」  思えばそれが始まりだった。これを機に、私たちの妖しくも平穏だった夜は大幅に刺激が増したのだ。 「私たちがやってるようなプレイに、ものすごく興味があるって子たちがいるんだけど、その子たちに披露していいかな」 「え、人に見せるの!?」 「もちろん、こういうのが大丈夫だって確認は取ってあるよ。動画とかはもう見てて、やってみたいから直に見てみたいって女の子が二人」  私は今、ちょっと人には言いづらいエッチの趣味で見つけたパートナーと定期的に遊ぶ仲だ。もともと趣味のマッチングから始まった関係だったけど、最近は今のように遊ばない日でも一緒にお茶をしたりする関係になっている。  そんなパートナーのいつきに、そんな打診を受けた。ただ……私たちの趣味は、正直けっこうニッチだ。そうそう人に受け入れられるものではないと思うんだけど、この話によるとそれは大丈夫なようだった。  それに、その上で女の子同士のペアというのも珍しい。私たちのようなのが、そんな連絡を取れるような範囲にもう一組いたなんて。 「そういうことなら……わかった。そういう子には、そのまま入ってきてほしいし」 「ありがと。……ふふ、そんな布教みたいなことを言って。本当はまた見世物願望を満たせて楽しみなだけなんじゃないかな?」 「う、うるさい。いいでしょ別に」 「もちろん。だけど、愛花がそういう子だから聞いたんだよ」  ……ありがと、とはすぐには言えなかった。お互い嗜好は深いところまで明かしている仲で、よく合致しているいい関係ではあるけど、だからこそ勝てる気がしないのだ。それはいつきがサドで私がマゾだからというところに限らない。  それに、どうせ向こうはわかっている。いつきの言うところによれば私は隠し下手だそうで、見透かされたことへ無反応を試みても伝わってしまうようなのだ。毎回毎回、振る舞いに似合った王子様みたいな顔をにこにこさせながら、私が一番されたいことをしてくる。  私は拘束趣味のマゾなんだけど、それに加えて普通なら叶えられないはずだった困った願望があった。それがその見世物願望、飾られたり展示されて同好の士に痴態を見られて楽しまれたいというものだ。  ミスト・スランバーという私にとっては神様のような企業のおかげで、私はそんな願望を二度も満たすことができたのだけど、いつきの言う通りで今はそれに似た期待があった。誤魔化すにしても否定できないくらい、週末が楽しみになっている。  ……まあ、そんないつきだからこそ、私は他の関係を積極的に持つつもりはあまりなかった。SM博物館やバキュームベッド展示会は飛びついて参加したけど、家畜やペットとしてヒューマンファームに入っていないのはいつき以外と一対一になることに躊躇いがあるからだ。  恋愛関係だとかではないとはいえ、そのくらい特別視している相手に、しかも願望に合ったことを誘われたのだ。断る選択肢なんてなくて当然だった。  その週の土曜日。 「先に準備しちゃって大丈夫なの?」 「うん。インパクトを重視してあげたいし、問題なければうちで器具を貸して体験もするって話だから」  夕飯は早めにとって、夜というにはまだ早いくらいの時間帯。そのお客さんが来るのはもう少ししてからだそうだけど、私はシャワーも浴びて準備に取りかかるところだった。  見世物にするような拘束との話だったから、何かと思ったんだけど……目の前にあったのはバキュームベッド。ただ、新しいものだ。これまで使っていたものとは呼吸チューブの形が違う。 「わざわざ新品を使うの?」 「もちろん同じものを買い替えたわけじゃないよ、これまでのに不具合も出てないしね。だけど……よく見てみて」 「というと……え、あれ? なにこれ」  これまでは同じ真っ黒なバキュームベッドでも、ちょうど頭を入れる位置から垂直にラバーでできた呼吸管が飛び出た形のものを使っていた。だけどこれは違うようで、バキュームベッド自体の内側にある硬めのラバー管がシュノーケルのような形で上に伸びて外まで繋がっている形だった。  それだけのために新しくする理由もないだろうと思って、言われた通り見てみると……開いて中を見たところで違和感を覚えて、持ち上げるとわかった。 「これはリバーシブルなんだ。片面が黒、もう片面が透明のね」 「うわぁ……どこで見つけてくるの、そんな凄いの……」 「というわけで、今日はこれに入ってもらうよ。どっちがいい?」 「ど、どっちって……」  最近見かけるようになったエアマットタイプではなく、長方形のフレームの上下にラバーシートを張ったものなんだけど、黒ラバーは上面だけだった。床に接していた下面は色もついていない透明なラバーで、これだと中身がよく見えることだろう。  呼吸チューブの形の理由もわかった。両面で使えるようにどちらの面にも穴を開けず、中で咥えるところの向きを変えるだけでひっくり返せる仕組みだ。こういうものなとても映えそうなバキュームベッド展示会でも見かけなかったけど、本当にどこに置いてあったのやら。  だけど、いざどちらの面で入るか決めていいと言われてしまうと難しい。どちらも魅力的なのだ。  透明が表だと、背景が黒くなる以外は普通の透明バキュームベッドだ。だけど、そもそも透明なもの自体が私は初めてだから惹かれてしまう。  逆に黒が表の場合、上から見れば普通なんだけど、裏面がすごく無様なことになる。顔もおっぱいもおまんこも真っ黒なのに、背面だけ透明でお尻は丸見えだなんて。その状態で縦に吊るされて、ひくひくするお尻の穴を見られてみたい。 「…………透明なほうが表がいい、かな」 「わかった。じゃあ、入ってみて。チューブの調整は硬いところの付け根を半回転できるけど、そっちならそのままで大丈夫だよ」 「ぅ……それじゃ、お願い、ね」  しかし、私は透明バキュームベッドの誘惑に勝てなかった。展示会のときはいつきにも見せていないものを不特定多数に見られることを躊躇ったけど、ずっと気になっていたのだ。それに、変態趣味の先輩ということになるなら、マゾの状態でその子たちの顔を見てみたくもあった。  私の方は他の準備は済んでいたし、あとはいつきがやってくれる。私はさっそくバキュームベッドに入ることになった。まずは耳栓を兼ねたワイヤレスイヤホンを装着するけど、これをつけて外の声を聞かせてくれるかどうかはスイッチを持ついつき次第だ。 「ああ、いったんその向きのままでね」 「……うわ、そっか、そういうのもあるんだ……」 「せっかくの両面だからね、しゃぶり尽くさないと」  透明な方を前にするのだからと裏返そうとしたところ、いつきに止められた。それで気付く、この呼吸チューブなら顔を下にしても大丈夫なのだ。だから背面バキュームベッドができてしまう。  一気にイレギュラー感が増した気がしつつも、大人しく入る。女子の平均ほどである私の身長ならX字に手足を伸ばしてもなんとか収まる大きさだったけど、姿勢はいつも通り好きなものにした。肘を曲げて頭の横で手を開き、脚は菱形を作るように股を開く形だ。  いつもの九十度よりサービスのつもりでさらに開いて、かなり無様感が増す百二十度ほどの開脚にしてみる。上にも余裕があったから肩も真横より上げて、上側にも腕で四角形を形作ってみたところ、それを覗き込んでいたいつきは上機嫌そうに側面のファスナーを閉じた。……いつきは特に、無様姿勢が好きな傾向にあるから。 「…………ん、っ……ぅぅぅ……!」  チューブが上向きなのは、こういう姿勢をしても邪魔にならないようにだろう。しっかり舌根あたりまで管を咥えて、掃除機をセットされて空気を抜かれていく。頬には管が曲がってぴったり密着したけど、気圧で管が潰されたりはせずに保たれているから息は苦しくない。  圧縮され切るまでは動かず、バキュームの余波による振動が完全に収まるまでは自分で姿勢を保つ。空気弁から取り外される振動を感じてから情けない姿勢をやめようともがいてみるものの、全く動けない。角度も変えられないくらいがっちり固められていた。……気持ちいい。やっぱりこの感覚、好きだ。バキュームベッドは特にお気に入りのひとつだった。  しかし、今日は二人のプレイではない。このまま可愛がり好きないつきの手が私のお尻を撫でてくることもなく、しばらく放置されてしまうこととなった。  下向きになってしまうと光が入ってこないから、私からはほとんど何も見えない。視界の端の方が少し明るいだけで、指先ひとつ動かせないままマットの上に突っ伏している。潰れたカエルのような姿勢で、お尻を突き出すように上にして。  正直なところ、恥辱大好きな私にとってはこの時点でとても興奮するプレイだったけれど……時間感覚が保てるはずもない今の私が大好きな拘束単体に飽きるよりはずいぶん早く、玄関のドアが開閉したらしい振動が伝わってきた。  お客さんが来たようだ。私はこれから、マゾの見本として見られて遊ばれることになる。……少なくとも裏向きの間は、そのお客さんがどんな人なのかすらわからないままだけど。   ◆◇◆◇◆  わたしたちはもともと、SMにはさほど興味のないただのレズカップルだった。……というか、あまりよく知らないまま過ごしてきた。恋人の四葉ちゃんとはだいたい週に一度か二度、ただの貝合わせやシックスナインのような形で愛し合ったりして……おもちゃを使い始めたのすら、つい最近だ。  だけど、ふと見つけてしまった。後ろ手に縄で縛られた女の子が一方的に愛されたり、正座して舐めたりしている動画だった。どちらかといえば明確にネコだった私は、それにすっかり興味を持ってしまったのだ。  だけど、そう簡単にできるものではない。縄は素人が下手に使ってもうまくいかない上に危険なこともあるとすぐにわかったし、近くでの体験イベントは簡単には見つからなかった。大規模な展示イベントが少し前に終わっていたことを知ったときには、思わず天を仰いでしまった。  幸いそれ系に強いアダルトショップは近くにあったから、試しに手枷くらいは買ってみたんだけど……確かに興奮はしたものの、物足りないと感じてしまった。かといってそれ以上試すにはどんなことをすればいいかわからなくて……困っていたときに、四葉ちゃんの友達がそういうプレイをしていると聞いた。 「緊張する……」 「大丈夫よ、まずは見るだけなんだから。その間に気が合わなければ、やめておくこともできるんだし」 「でも、せっかくなら試してみたいもん……仲良くなれるかなぁ」 「ちょっとスカしてるけど、いいやつだから大丈夫。どんどん頼ってやっていいから」 「……うん、ありがと、四葉ちゃん」  そのひとに連絡して、パートナーとの拘束プレイを見せてもらえることになった。今はそのひとの家まで来て、呼び鈴を押したところだ。……そして、持っている拘束具をその場で貸して体験させてくれる、という話でもある。なんでも友達である四葉ちゃんが同じ趣味に手を出してくれると聞いて、舞い上がっているのだとか。  ただ、どうしてもやり方を知っているその人にレクチャーしてもらうことになるから、わたしは初対面の人の前でいろいろと見せることになる。それが嫌かもしれないからと、向こうから打診してくれたそれはわたしの意思次第ということになったけど……やってみたい、というのがわたしの本心だった。  だけど、もしも気の合わないひとだったら、さすがにわたしもちょっと怖い。そうならないといいな、ここの二人ともお友達になれたらいいな、なんて思いながら待っていたら、中から物音。  連絡は数日前からしていたから、片付けは済んでいるようで。ほどなく玄関の扉が開いた。 「いらっしゃい、四葉。それで、そっちが」 「ええ。私の彼女の鈴莉。私から取らない程度に仲良くしてくれたら嬉しいわ」 「取らないよ、パートナーはいるし。……いつきです。鈴莉さん、よろしく」 「よ、四葉ちゃんから離れたりなんてしないし、できないよ! ……えっと、はじめまして。よろしくお願いします、いつきさん」  現れたのは、王子様系といった様相の美女。いつきさんというそうで、どちらかといえばフェミニンな四葉ちゃんとはちょっと違ったタイプだ。四葉ちゃんが何年も友達付き合いをする相手だそうだから心配はしていなかったけど、優しそうな人だった。  そんないつきさんに連れられて家の中に入って、靴を脱いで中へ。ゲストスリッパを借りたところで、短い廊下の半ばにいたいつきさんが振り返った。 「それで、もうあの子には入ってもらってるんだけど……見せるのはアレでよかったんだよね?」 「ええ。この間言った通りよ」 「……え? アレ、って?」 「私もいろいろ調べてみてね、やってみたいものがあったの。それを伝えてて、見せてくれるそうだから……鈴莉、よかったら付き合ってもらえないかしら?」 「そう、だったんだ。……うんっ、わかった!」  わたしはぜんぜん知らない話だったけど、どうやらいつきさんと四葉ちゃんの間で見せてくれるプレイが決まっていたらしい。そしてそれは四葉ちゃんがやりたくて決めたものだと。  ……嬉しい。拘束プレイへの興味はそもそもわたしが言い出して、四葉ちゃんに付き合ってもらったものだった。それを四葉ちゃんが自発的に深掘りして、わたしにサプライズみたいな形で話をしておいてくれるなんて。わたしはちょっと、調べるにも臆病が働いちゃうタイプというか、広げながら調べて新しいワードを獲得するのが苦手だから。きっとどんなプレイがあるのか調べて、いろいろ考えてくれていたのだろう。  わたしもその話についていけるようになって、一緒に楽しめるようになろう、と決心したところで、リビングへの扉が開いた。寝室ではなくそこで、やっているというリビングで、わたしたちを待っていたのは……。 「…………ん、ぅ……」 「わ、ぁ……!」 「よかったら、近くで見てみて」 「は、はいっ」  なんというか、わたしの知らない世界だった。断言できる、臆病で行動力のないわたしじゃ、調べようとしてもこれに辿り着くことはできなかっただろう。  大きなマットレスの上に、黒い長方形の何かが置かれている。そこから女の子のうめき声がして、ぎちり、という音とともに黒いもの全体が少し上下に動いた。  なんとなくわかったのは、ソレこそがいつきさんのパートナーさんだということ。あの見たこともないものが、四葉ちゃんが興味を持った……たぶん、拘束具であること。 「これ……枠? みたいなのに、シートが張られれてる?」 「そう。金属の枠の外側に、ラバーシートを張ってあるんだ」 「すごい姿勢……っ。こんな恥ずかしいかっこうで、もしかして動けないの……?」  お言葉に甘えて近づいてみると、だいたいの様子がわかってきた。長方形の枠のようなものが外周にあって、それに合わせて黒いシートが張られている。そしてその中に、人の形をした盛り上がりがあった。真っ黒で少しわかりづらいけど、そうとわかれば恥ずかしいほどくっきりと体のラインが見えてくる。  どうやらうつぶせになっているようだったけど……とても、恥ずかしい姿勢だった。腕は肘が頭の横、手のひらは開いてほぼ頭の上。脚は大きめのがに股になっていて、どうやら閉じようとしているらしいのにほとんど動いていない。ぎちぎちと軋むような音がするだけだった。  ギャグアニメで潰れたときのような姿勢だけど……たぶん正面のほうから見たら、無防備で股を開いて、いやらしいことになっている。それがどうやら、動けなくなっているようで。 「呼吸経路だけ残して、中の空気を抜くんだ。そうしたら、大気圧で全方向からラバーシートを押しつけられて、全く動けなくなる。……真空パックってあるよね」 「ああ……そっか、あれって外から引っ張っても動かないですもんね」 「それを枠に固定して、パックそのものを平たく伸ばす。すると、もがいたり曲げることもできなくなるんだ。ラバーの摩擦もあるから中で滑って動くこともなくて、姿勢も変えられない」  解説してもらって、この子が動けない理由がわかった。四隅から同時に引っ張った真空パックは、確かに揺さぶったくらいではびくともしない。ふだんわたしたちは慣れて意識せずにいるけど、大気圧はとても大きい力だというし。  だとすると……わかってきた。これ、すごい。 「バキュームベッドというんだ。全身どこも動かせなくする完全拘束の中では手軽でありつつ拘束力も高いし、サイズ調整もいらなくて応用もきく。まっすぐ入ることもできるし、こうして他の拘束具では手間がかかるような姿勢にも自由自在なんだよ」 「いつきがこういう趣味があると知ったのと前後して、偶然見つけてね。……その、すごく可愛いと思っちゃって」 「おや。先に興味を持ったのは鈴莉さんだったと聞いたけど、変態の扉を開けたのは四葉だったのかい?」  聞いた限り、収まりさえすれば平面ならどんな姿勢でも取れてしまうし、体のサイズに関係なく入るだけでいい。それでいて、恥ずかしそうに必死に蠢いているはずなのに角度が全く変わらないくらい、ぎっちり拘束されている。  それに、真っ黒で中身がどんな人なのかよくわからないのに、それがなんだかぞくぞくする。まるで人間じゃないみたいで、肌が全く露出していないのもあってモノみたいだ。……わたしはただ拘束されることに興味があっただけで、そんな呼び名も知らない願望なんて思いついてもいなかったはずなんだけど。 「触ってみて。優しく、爪は立てないでね。敏感になっているし、ラバーは傷つくことがあるから」 「わ、わかりました。……こう、かな」 「んんっ!? ふっ、うぅ……!」 「そう、上手。ぴっちり肌に張りついているから、外から触ると独特の感触で鋭敏なんだ」  なんだか美術品みたいで気が引けたけど、触らせてもらえるらしい。もともとえっちの日は爪を切っていたから、今日はするとしても拘束プレイだから意味はないとわかっていても癖で切っていた。もちろん指は寝かせたまま、そっと手を伸ばす。  触れそうなのは、後頭部と背中、それからお尻。どこを触るか少し考えたけど、ここにいるのはこんな格好を見知らぬ誰かに見せてくれるようなひとだ。きっと、いわゆるマゾヒストという存在で、それも変態……わたしがこれから同類になるかもしれないモノだと思うと、手は自然とお尻に伸びていた。  まずは中指の腹あたりでそっと触れると……びくん。思っていたよりわかりやすくお尻が跳ねた。普通に素肌を撫でられるより敏感になっているらしいけど、タイツの上からなぞられるようなものだと思うと納得がいく。  それから、中指の第二関節、手のひらと順に触れさせていって……そのまま、手のひら全体でゆっくり撫でてみる。びくびく震えて、お尻に力が入るのがわかって……なんだか、かわいい。  ネコだと思っていたわたしにも加虐心が芽生えてしまう一方で、少し憧れも生まれた。パートナーがこんなふうになっちゃうところを見られるいつきさんは、きっと楽しいだろう。じゃあ、わたしがこうなったら四葉ちゃんは楽しんでくれるのかな? 「遠慮しなくていいよ。しばらくこのまま放置されてて、気持ちよくなりたいだろうから」 「じゃ、じゃあ……このあたりとか、気持ちいい……かな?」 「んっ……!」 「おお、鈴莉も大胆ね? じゃあ私は……こんなことしてる子なら、ここも気持ちいいんじゃない?」 「んむぁっ!? んっ、ぅぅっ!」 「さすがというべきかな。この子はそこも好きだよ」  想像してみる。こんな格好で、全身を撫で回すようにラバーに張りつかれて、指一本動かせないまま恥ずかしい姿勢で拘束されて、そのまま放置されていたら……どれだけ欲しくなっちゃうのか。どんなに気持ちよくなりたくても、この子は本当に何もできない。無駄とわかっていても後ろ手から股下に手を伸ばすような、意味のない抵抗すら。  そう思うと、股下のラバーシートぎりぎりを触ってあげたくなった。板のようになったラバーに遮られておまんこには触れていないけど、きっとこんなところに触られるのは恥ずかしくて、ちょっと気持ちいいはずだ、うつぶせになっておまんこにも乳首にも触れない以上、わたしにはそこしか思いつかなかった。  だけど、隣で膝をついた四葉ちゃんはもっと積極的だった。たぶんお尻の穴のあたりを指でつついて、ほぐすようにこねてしまっている。わたしのときとは比べ物にならないくらい、激しく反応して気持ちよさそうなうめき声を漏らしていた。  今さら気付いた、頭の上の縁にある呼吸孔から必死に漏らしている吐息が、すごく可愛らしい。それと同時に……わたしがこうなって、四葉ちゃんにお尻を触られるのを想像したら、興奮してしまった。恥ずかしそうで、お尻なんて触ったこともないわたしでもすごく気持ちよさそう。  少しそうして楽しんだところで、いつきさんが口を開いた。 「実はこれ、リバーシブルになっていてね。ひっくり返しても大丈夫なんだ」 「そうなの? じゃあ、もっとちゃんと可愛がれるわね」 「それだけじゃないよ。……まあ、見てみて」  そういうことで、ひっくり返してみることに。そうしたらあお向け、つまり体の前面が上になって、おっぱいもおまんこも触れるようになる。  いつきさんと四葉ちゃんが二人がかりで裏返しはじめたから、わたしも支えて手伝う。長方形の長いほうを軸に床につけたまま、そうして浮いたようになっても姿勢の変わらないバキュームベッドを逆向きに。 「……こっちは透明なのね」 「縁あって手に入ったものでね、恥ずかしいものだから嬉しそうに興奮丸出しで入ってくれたよ。裏返しの瞬間も楽しんでいたんじゃないかな」 「透明のバキュームベッドも調べたときには見たけれど……こうして直に見ると、壮観ね。人を支配している、って感覚がすごく強い……って、四葉?」 「あれ、どうしたんだい? そんな顔して……」  すると、表面は予想と違った。さっきまで見ていた裏面と違って、こちらは透明なラバーシートが張られている。  だから黒の背景に見事な女の子の裸体が磔にされていて、みっともない姿勢も、綺麗なおっぱいも、プレイのためなのか剃られてつるつるになっているおまんこも丸見えだ。  だけど、それを見たわたしには、そして向こうからも見えているらしいこの子にも、今はそんな場合ではなかった。 「…………愛花ちゃん?」 「ぁっ……ぁ、っ……」  だって、そのバキュームベッドに入っていた、いつきさんのパートナーというのは。  ……中学の同級生で親友だった、愛花ちゃんだったのだから。   ◆◇◆◇◆  不思議な体験だったけど、夢のような時間だった。  表面が透明なバキュームベッドとはいえ伏せられていたから何も見えず、耳栓イヤホンもオフのままだから何も聞こえない。そんな中でも鋭敏になった感覚はドアや歩きによる小さな振動や、気配なんかをしっかり感じ取れる。だからそこに見学の子たちがいるとわかって、見られているという実感が恥ずかしくて、興奮して。  そうしてどんどん疼いて、欲しくて仕方ないのに自分では全く気持ちよくなれない惨めさをひとしきり楽しんだところでお尻を撫でられて、期待を受け取ってくれたかのように会陰のあたりを撫でられて余計に恥ずかしくなって。さらには別の手がお尻の孔を撫で回してくれたから、危うくそれだけでイきそうになった。  それをどうにか耐えたら、いよいよ持ち上げられはじめる。裏返されるのだとわかって期待して、横向きに宙に浮いたような感覚と無力感を味わって……より恥ずかしい表面をたっぷりいじめてもらえると思ったところだった。  そこにいた二人のうち、片方に見覚えがあったのだ。中学時代に特に親しくて、高校が別になってからも時々とはいえ連絡を取って会っていた親友。見に来てくれるという人は普通に考えたら初対面だろうと、この場面では全く身構えていなかったけど……そこには確かに、鈴莉の驚き顔があった。  …………私は、イってしまった。接点は減っても親しかった親友にこんなところを見られた屈辱と興奮、それにもう元の関係には戻れないという絶望で。破滅願望なんて持っていないと思っていたけど、それでも私は透明なバキュームベッドの中でがくがくと股を突き出して絶頂した。  情けなく腰を揺らしながらゆっくり降りてきて、それでも自分から取ったいつも以上に無様な姿勢は崩れなくて、顔を真っ赤にしながらも表情を変えていない鈴莉を見上げて……友達を失うことを覚悟したところで、イヤホンから起動の電子音がした。 『……はい。愛花ちゃんとは、中学時代の親友で。わたしと違って、普通に楽しくしてると思ってたから……こんなふうに会うなんて思ってなくて、びっくりしちゃった』 『確かにまさかよね、友達のパートナーが彼女の親友だなんて……凄い偶然もあったものだわ』 『では、こんな姿の愛花を見て、鈴莉さんはどう思ったかな』 『すっっっごく、興奮しましたっ!』  いつきが聞かせてくれた、同時に気付いたらしい鈴莉との会話を聞くしかなかった私の耳に……鈴莉の、嬉しそうな声が届いた。  これには私が困惑してしまう。まさか鈴莉がこんなものに興じる変態だった親友を見ても、戸惑うどころか食い気味に興奮するほどの素質を持っていただなんて。……確かに冷静に考えれば、これをわざわざ見に来た時点で、二人ともそういう興味があったんだろうけど。 「う、ぁ……」 『あ、聞こえてる……?』 『うん。今、仕込んであるイヤホンに外の音を流し始めたんだ』 『……ねえ、愛花ちゃん。すっごく、かわいいよ』 「ぁっ……!?」  がくん。……私自身、自分がこんなに雑魚だとは思っていなかった。熱を帯びた表情の鈴莉に、バキュームベッド越しに晒された胸を揉まれながら可愛いなんて囁かれるだけで、また軽イキするだなんて。  私のみっともない痴態で、鈴莉が興奮してくれている。都合がよすぎて夢にすら見なかった光景だ。幸せすぎて、おかしくなりそう。たとえその鈴莉がもう他の人の彼女だったとしても、こうして触ってくれるのが気持ちよくて仕方ない。 『はは、興奮しているね。友達に受け入れられて、自分の恥ずかしい姿を見世物として楽しまれて、気持ちいいんだね。……うん、可愛いよ。誰にも渡したくないくらいに』 「ぁ……ん〜〜っ♡」  すごく、情けないと思う。続けざまにいつきに、親友への痴態でとことん興奮していることを楽しまれたら、今度は女として恥ずかしいほど甘ったるい声が出た。  だって、パートナーなんて言葉で誤魔化していたけど、私はいつきのことが好きだから。こんなふうに愛を囁くような言葉をかけられて、幸せにならないはずもないのだ。 『彼女持ちとしての見立てだけどね、いつき。その子、どう見てもいつきのことが好きよ。パートナーなんて呼んでるみたいだけど』 『……そうか、四葉の見立て通りみたいだ。それなら、そろそろちゃんと言葉にしないとね』  鈴莉の恋人さん……四葉さんには見抜かれていたようで、私が言葉を奪われている間にいつきに知られてしまった。けれど、このいつきの反応。期待して、いいのかな。  あまりにも爛れた、ロマンチックの欠片もない経緯でなし崩しになりかけていたところだったけど……ついつい目を泳がせていた反応は、強制的に中断させられた。 「んぁっ!?」 『その話は、愛花が喋れるときにしましょ。これ、使っていいんですよね?』 『ああ、そうだね。……うん、押しつけるのは少し優しくね』 『はいっ。……お互いこんな関係で、しかも二人ともネコで、あんまり遊ぶのもだけど……今はもっと、愛花ちゃんのかわいいとこ見たいな』 「んぅっ、ぅ、んむぅぅっ!!」  鈴莉がおまんこに電マを当ててきたのだ。それまで手で焦らすように優しく触られていて、途中でいろいろ挟まったとはいえ無様姿勢バキュームベッドで晒されていた私は、もう興奮と欲が限界に近い。そんな中で強い振動を、完全拘束の中で押しつけられて耐え切れるはずがなかった。  全部ひっくるめて、バキュームベッド全体をがたがた揺らしながら本気イキした私を、三人が楽しそうに見下ろしてくる。乙女としてもマゾとしても幸せで、どうやらバキュームベッドを体験もしに来たらしい同じ側の鈴莉にまで弄ばれて、あまりの興奮におかしくなりそうだ。  三人がかりでおまんこと乳首を徹底的に責め立てられて、本当に何度も何度もイき狂って、親友の目の前で透明ラバー越しにおもらししながら放心してしまったところで、ようやく出してもらえた。  開いてもらう間に全裸になっていた興奮顔の鈴莉に面食らったのも束の間、べったりひどいメスの匂いと汁に塗れた私を、鈴莉はむしろ自分の体に擦り付けるかのように抱きしめてくる。私もイきすぎてまだ力が入らない体で抱き返して、むしろこれまでより明らかに近くなった距離を噛み締めた。……なんか、すぐ向こうで「これからは四人で遊んでみるのも」、なんて話をされていた気がするけど。


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