【先読み】夢の人間家具部屋での一日
Added 2025-04-25 14:06:51 +0000 UTC『うぅん…………』 装着させられたイヤホン付き耳栓から、女性の唸り声が聞こえた。どうやら目を覚ましたところらしい。 だけど、私たちの意識はずっとはっきりしていた。だって……こんなの、眠れるはずがないのだから。 『ふぁ……』 「んっ」 「ぅぐ、」 「……っ、ぁ」 「ふぅっ、!」 「んぅ!?」 「ぁ……」 少女が起き上がると、別の五人分の呻き声。それに加えてひとつの寂しそうな声も聞こえた。……私はこのうち、呻き声のひとつだ。そしてその全てが、今の自分たちがどういう状況にあるのかを理解していた。実際に見ることができるのは、今起きたばかりの一人だけだけど。 私に感じられるのは、全身に張り付くすべすべのラテックスラバー生地と、それが全方位から押し付けられる気圧の感覚。体の形が恥ずかしく浮き出ているとわかる程度の自覚……つまり私は今、バキュームベッドの中にいる。エアマット型の、とても大きなものだ。 だけどそれだけではない。バキュームベッドでよく取らされるような四肢を開いた形ではなく、まっすぐ気をつけの姿勢で固定された体は……左右どちらの側面も、ラバーを介さずに温かく柔らかい人肌に触れていた。それどころか、手はちょうどそこにある隣の人と繋いでいる。バキュームベッドの中で。 形としては、五人が互い違いになって伸びたまま並び、全員まとめてひとつの大きなバキュームベッドに閉じ込められている状態。それが……今しがたまで寝ていた女性の下で、敷き布団代わりになっていた。 『……けっこう寝心地いいんだな、これ……』 「……ぅ」 「はっ……ぅ……!」 「んぐ、ぅ……」 並んだ私たちの上に横向きになるように寝ていたから、女性が上体を起こすと五人のうち胴体側にいた二人が楽そうになる。足側の二人は変わらず、そして中央の私は……苦しくて息が浅くなる。 ベッドの上に座った状態の彼女のお尻が、私の腹に置かれているのだ。外側に伸びている呼吸用パイプのうちひとつから、私の間の抜けた呻き声が漏れるが……女性はすぐにはそこから退こうとしない。 それは彼女にとっては事前にわざわざ言い含められたことだったし、私にとっては望むことだった。なにしろ私は、本当にどうしようもないマゾだから。特に苦しさで興奮するタチだから、今とても気持ちいいのだ。 彼女も「敷き布団の中央は体重を掛けて大丈夫」と言われているはず。でないといくらなんでも、そのまま片腕を胴体側の二人に置いてスマホを見始めたりしない。……その二人もまた、寝心地がいいと言われて興奮する変態だった。 『……ん、起きないと』 「んっ」 「ふッ……ぁ」 「あぁ……」 「んぅっ!」 女性が足を私が足を向けている方にずらす。私が腹筋に力を入れて耐えているのをよそに、足側の二人は寂しそうな呻き声。そのうち私の隣にいるほうは、途中で頭……というか顔を脚が擦れたようで甘いマゾ声を漏らしていた。 次に二つの苦しげな声……おそらく手が置かれた二人の声が聞こえたあと、私の腹にあったお尻が足のほうへずれていく。やがてそこからも完全に離れると、五人揃って名残惜しい吐息を漏らした。 最後に……ラテックスではなく、人間の素肌を手が撫でるような音。幸せそうに鳴いたのは、おそらく“枕”だ。枕になっているのは私たちが知る中でもとびきりの恥辱マゾで、なんとバキュームベッドの隣でまんぐり返しになっている。 拘束されて閉じ込められた箱から上に向けた尻だけを突き出して、そこに濡れないよう前貼りだけされた股を枕として使われていたのだ。さすがにあんまりなありさまと扱いだけど、幸せそうだった。尻だけ上だけど頭は肩より上の姿勢になっているから、辛くとも多少はもつのだろう。 …………女性はそのまま離れていく。その場には使われたままの、掛け布団代わりのタオルケットが無造作にかかったままの人間ベッドが残された。しかし完全に放置されたそれはなおも興奮が収まらず、余韻のみならずその場に存在するだけで楽しんでいる。 ……私たちは今、敷き布団そのものだ。家具としてベッドにマットレス代わりに置かれて、五人でひとつとなって悦楽に耽っている。枕も含めて、もはやそれは人間に使われている最中にすら限らない。 本当に、夢にまで見た天国のような時間だ。……こんなことになったきっかけは、あるひとつの企画によるものだった。 ◆◇◆◇◆ またミスト・スランバーが変なことを考えた。私の家族の会社だけど。 「フェチが一度は考えて、どう考えても実現できなくて諦めるやつじゃないですか」 「まあ、そっか……今なら割とできるのね……」 「施設もですけど、さては大規模企画AVに味占めてますね?」 「味占めてるよ。特に海外での売上が予想以上だったんだって」 シェアハウスに住まう後輩たちの反応がこれだ。無理もないと思うし、アナちゃんの推測は当たっている。 プロジェクト・ヒューマンファームは想定以上の大当たりを収めている。さすがに特殊寄りの性嗜好だと思っていたし、そもそもアダルト系の、ここまで性に奔放な施設が事業として成功するとは私ですら思っていなかったのに。大赤字にはならないように組んだから、あとはトントンになればいいなくらいに構えていたんだけど。 本場である欧米からの観光客も想像以上だったけど、国内への浸透が凄かった。もしミスト・スランバーがなければ、どのくらいこの国の性的文化に影響が出ているのやら。 牧場部分やヒトペット広場だけでもそうなのに、せっかくだからと撮影した企画系のAVをダウンロード販売したら飛ぶように売れた。ついでに有料会員がものすごく増えた。 運動会やフレームバインダーのテストはもちろん、ファームの様子を撮っただけのものや、バキュームベッド展示会を映像に残したものも。特にチェスが海外受けしたらしくて、「そりゃ味を占めるよね」と思ってしまう。 で、今回新しく企画されたのが。 「でも確かに、そういえば私たちはやってなかったですね、人間家具」 「ショーパブのを見て、こういうのもいいよねとは言ってたんだけどねぇ。そのうち作って会員動画にって考えてたら、上から来た企画書がこれ」 「人間家具でできた部屋での生活風景、って……漫画でも見ないですよ、リアリティなさすぎて」 「『どれだけリアリティがないものでも、実際にやればリアルになる』らしいよ」 「パワープレイすぎる……」 そう、部屋をまるごと可能な限り人間家具で作って、そこで人が休日を過ごす、という内容だ。ミスト・スランバーで人間家具を扱うのは初めてだというのに、いきなりそんなことをする。 ただ、私の立場からは否やは言えなかった。「人間家具用の商品を受注生産する」と、抱き合わせ企画化されてしまったから。……それに、「今のウチなら絶対に売れる」とは確かに私も思う。我が父ながら傑物だ。 「で……出演者どうするんです? チェスよろしく、かなり人数要りますよね?」 「黒百合の館とショーパブが手伝ってくれるよ。『ノーギャラでも押しかける』って」 「行動力のある変態団体がいっぱいあるのどうかと思いますよ」 「足りなければ、スウツペット企画のときの子達に誘いをかけようかなって」 「まあ、それだけあれば足りるか……一般募集したら収拾つかないですもんね」 人間役は私がやることになっている。そもそもが三択なんだけど、シノは一番目立つサドの立場には出たがらない。アナちゃんはというと、こちらは体格的にこういう動画の一人サドとして映えないのだ。 そんなアナちゃんを含む三人は、もちろん家具役としてオファーがある。本人が望まなければ強要はしないけど……。 「は? やりますけど」 「楽しみです」 「というかたぶん、あたし用のやつ思いついてる感じですよね。そういう顔してます」 この通りだった。そしてアナちゃんはまたしても大当たり、彼女はもう受けてくれたときの役柄が決まっている。 というわけで、私たちはまたしても大掛かりなSMロールプレイAVを撮ることとなった。……これ、一番大変なのは私だよね。演技には自信があるとはいえ。 ────そういう経緯があった。今は撮影日の朝、まだ起きたばかりだ。 さすがにずっと家具になりっぱなしは、いろいろな面で無理がある。昨晩はベッドだけ作ってそこに私が寝てから、夜中から夜明け前にかけてそれ以外をセッティング。ベッドや負担の大きい家具は、私が別室にいる間に一時解放して休憩をしたりするらしい。 私にはそれに干渉しないよう大まかな動きが指示されているし、撮影スタッフによるサポート体制も用意されていた。とはいえ、あのベッドはあと二時間はそのままだ。ベッドはそれを楽しめる子達……家具として実際に使われた経験のある黒百合の子達でできている。 楽しそうな呻き声を聴きながら洗面所へ。とはいえさすがに、水周りには人間家具は多くない。蛇口やら排水口、鏡なんかは代用のしようがないし。 それでも人目で異様さがわかるほどには置かれていた。たとえば歯ブラシやドライヤーを置く棚は、鏡を抱えるようにしつつその鏡の裏に顔を隠されてしまった子が担当していたり。 「ふっ…………、ぅ」 洗面台は透明な半球状の分厚いアクリルに排水口をホースで繋いで、それをボールギャグだけの素顔で裸のミカが支える形で設置されていた。仰向けになって四肢全てでしがみついたような格好のまま固定されている。 これだけの分厚さなら、そこに水を流しても少しの重量くらいしか伝わったりはしていないだろうに。透明な洗面台越しに私のことが見えてしまうから、意識しているのかもしれない。“使われている感”を出すためか、家具には視界が奪われていないものも存在するのだ。 そのまま顔を洗って……寝間着も脱ぐ。ついでに下着も脱いでしまって、洗濯かごには下着から寝間着の順で放り込んだ。その上にフェイスタオルも入れて、構わず全裸のまま洗面所を出た。私はサド側だけど、フェムダム要素のあるAVで女王様が裸体を晒すくらいは普通のことだ。 洗面台と似たような形の洗濯かごはちょうど顔にショーツが被さって悶えているが、気にしない。今は使われないまま置き去りにされた足ふきマットが、洗濯かごの横で疼いている様子もカメラに舐めるように撮られていた。 寝室に戻ってきて、二人組のハンガーラックから着替えを取る。まっすぐ伸びたただの柱にされて、首どうしを金属の棒で繋がれただけのシンプルなつくりだ、しかし向かい合わせの方向になっているから、自分と全く同じ状態の相方も、自分が使われている証の衣類も見せつけられている。おまけに片方はこれから使うショーツ、もう片方はブラジャーを頭に載せられていた。普通はそんなことしないだろうに。 下着姿になってからひとつずつ服を取っては空になったハンガーを戻して、ややラフな部屋着を兼ねた私服に。マスクギャグを着けたそれらは背中に添えられた支柱に固定されて、体を曲げることすらできない。 続けて隣にあった衣類掛けから小物を取った。撮影は暑い時期で、裸のものも多い家具たちが消耗しない室温だから上着はない。やじろべえに近い姿勢で支えに固定された衣類掛けも、裸にベルトのような小物がかかっているだけの姿だった。 ヒトイヌと同じ姿勢の背中にアクリル板を乗せたサイドテーブルも使って身嗜みを整える。あれも四つの脚自体ががっちり固定されているから、それに身を任せていれば辛くはない。頭が向こうを向いていて、カメラにアクリル板越しで丸出しの尻ばかりが映るから恥ずかしいだろうけど。 化粧台も洗面所の棚と同じく、鏡に胴体の大半を隠される形で人格を剥奪されている。これは使用者が整えていない顔を家具ごときに見られて恥ずかしい思いをしないためだ。この作品を見る人も、基本的には私に視点を移入するだろうから。 今もしっかり固定されたそれの視界は鏡の裏で塞がれて、音だけで想像をかきたてられているだろうけど……人間家具の魅力は人と家具の対比だから、私が恥ずかしくなっては魅力が減じてしまう。 「……よし」 「…………っ!」 昨晩使ったという設定なのか、サイドテーブルに妙に多く置かれていた小物をいくつかラックに戻す。全裸の女が肩と股関節を真横、肘は上、膝は下に向けて平たく固定されているという寝室でもトップクラスに無様な代物で、体を仕切り板として扱われている。三段になっているうち頭が位置する上段は、扉が閉まって見えない尊厳破壊の徹底ぶり。 さすがに恥ずかしいようで丸出しの股からは愛液が滴っているけど、それはあくまでただの家具だから触ったりはしない。板が据え付けられた二の腕と太腿にものを置くと、重みでわかったのか反応。しかし上級者なのか、それ以上の声は我慢してのけた。 ベッドが示しているようにマゾ反応はいくらでもしていい方針とはいえ、これはこれで見栄えがするから少し満足。頭に暖色のLEDと頭ごと覆うカバーをつけられ、本人は明るさ以外の視覚を奪われた間接照明を消して寝室を出た。 なるべく多くの家具を使うようには言われているけど、作れる家具は作っていることもあって朝から寝室の全てを使うことはできない。背景に徹したまま再びの放置が決まったものたちはいくつもあって、あるものは寂しげに私の背中へ意識を向け、あるものは散々使ってもらえたものたちに嫉妬を示した。 でも大丈夫。そのまま部屋に残ったカメラはカットを挟んでから、部屋中の家具をじっくり撮影することになっているから。 待機していた二つ目のカメラを連れて、私は続けてもうひとつの部屋……の前に寄り道をする。 「うぅ……、っ!?」 扉を開くと反応したのは、トイレだ。……といっても、黒百合の館の主がよくやる飲尿形式でも、ショーパブが人間家具展示会で置いていたまんぐり返しのおもちゃでもない。今回はマゾっ子を徹底的に家具にして、それで生活するのがコンセプトだから。 言い換えれば、「家具に扮している人間を陵辱すること」が目的ではないのだ。今回やりたいのは、「人間を極限まで本物の家具にして使うこと」。人間のおしっこを飲ませるのも、玩具責めで鳴かせる機能を持たせるのも、人間に対する責め苦だ。 では今回どうなっているのかというと……人間を便器の一部にしている、というのが近いものだった。全身を完全に陶器らしい白色のラバーに覆われたそれは、床に座らされて便器を囲うように脚を菱形にしている。小型の便器を抱えるような形だ。 そして縦長の楕円形になるよう板付きで固定された腕は、便器の縁の上に置かれている。今はその上に蓋もされていて、フードの形で顔出しになったラバースーツとやはりマスクギャグの顔が見えていた。 「……」 「っぐ…………ぅ、」 つまり、腕を便座にされている。便器の一部というのはそういうことだ。私は蓋だけを上げて、その便座に遠慮なく座った。しっかり重いだろうけど、その便座はちょうど肩が水平になるような高さに調整されている。人のお尻の重さだけを堪能できるはずだ。 上がった蓋が挟まっているから便器は使われている間だけ何も見えず、一方で自分が便器になっている証の顔は晒されてしまっている。蓋越しに聞こえる排尿音が腕の中に聞こえて、どんな屈辱が課せられているのだろう。私には想像がつかないし、少し気になる。 とはいえ構わず用を足して、トイレットペーパーを手に取る。……これも人間家具だ。白の壁紙と同じ色で溶け込むように壁へ固定されて、正座で後ろ手。腕を家具にしてもらうことすら叶わず、咥えさせられている猿轡から伸びた部品にトイレットペーパーが装着されていた。 便器を一段高くされていることで、それの目線は便座より低く調整されているから私の排泄シーンは真横からの太腿しか見ることができない。彼女はシンプルな完全拘束状態のまま、目の前で回るトイレットペーパーを見ることしかできないのだ。 「…………」 「…………ぅぅ」 便座はなだらかなコの字上に腕へ被さっているから、蓋を閉めれば流される水がかかることもない。頭上で手を洗われても何もできない便器が呻く中、用を終えたからトイレを出た。あの二人はあのまま仲良く屈辱を楽しむことなる。 廊下はさすがに映る機会も少なくて可哀想ということか、何もないから立ち止まらず通る。入ったのはリビングダイニング、こちらも家具だらけだ。 上を見れば、大の字にされた全裸が天井に磔にされている。乳首とクリトリスの一日電球が吊り下げる形で括り付けられているけど、あれは使われない予定だ。もう明るいから必要もないし、本人も曇らない限り使われないと聞かされてあそこにいる。愛液を垂らしてしまわないように前貼りもされていて、あれはひたすら固定された視界で他の家具と私を見下ろすだけだ。 とはいえ回線が繋がれてはいるそれを無視して、まずはキッチンへ。……短いバイブ音とともに小さな喘ぎ声がしたけど、これも後回しだ。キッチンには特に家具が置かれていないから、カメラはついてこない。 「よし、と」 「んぐッ!?」 「「「「ん……っ」」」」 適当にトーストを焼いてダイニングに戻ってきて、コーヒーとトーストを机に置く。もちろん人間家具で、これは四人一組で作られたダイニングテーブルだ。 腰をくの字に折り曲げて肘と膝は伸ばしつつそれぞれ開き、それをお尻どうしをくっつけるように合わせた四人の上に板を乗せている。もちろんあちこちに固定具が入っているから、がたついたりはしないんだけど……特徴が三つ。 寝室のサイドテーブルと違って、天板が木製だから上から見えない。人間の視点では木の板しか見えず、意識すらされないことを上からのカメラで強調されている。すぐに動いて真横からになったから、たくさん映してもらえるけど。 それから、固定具が縦にだけ入っていない。これによって乗せたものの重さは直に家具の子たちに伝わるようになっている。その上で軽いものしか乗せていないのは、ただの家具として使うだけで責めたりはしないコンセプトによるもの。 そして、四人のくっついているお尻。この中央には、十字ディルドとでも呼ぶべきものが上下ふたつ使われている。おかげで「ひとつのものにされている」という感覚は強いはずだ。 ……一方の椅子はというと、ダイニングに座る時間は短いからと厳しいタイプのものだ。土台の座面にあたる部分に背中をつけて、まんぐり返しの要領で胴体の上に太腿をくっつけて固定。真上に伸ばした腕とふくらはぎをまとめて固定し背もたれのようにしている。股が座面の端になるから、人間を汚さないようにラバースーツ着用。 もちろんこんな背もたれは飾りであって実用性がないからもたれないけど、代わりに短時間だけしっかり座ってやる。四つあるものの、私が座るのは強く希望してきた子と決められているから問題ない。 「「「「ん…………」」」」 「ふっ……ふっ……ぅぐ……」 ちなみにテーブルは長方形だから、四人の中でも体の開き具合が違う。短い辺を担当する子は三十度、長い辺は六十度だ。しかもこちら側の長辺は私の下半身が見えるから「使われている感」が強いだろう。代わりにカメラにはあまり映らない。 椅子に遠慮はせず、急いだりはせずに朝食を済ませた。気をつけるのは椅子を引くときに頭をぶつけさせたりしないかくらいだ。 ……部屋主役、予想していなかった大変さがある。こんな唆る反応をしていても、絶対に私はそれに反応してはいけないのだ。私もサドだから、それは案外意識させられることだった。 動画ではカットされるだろうけど、皿洗いはわざとゆっくり。生活音をしっかり鳴らしつつ、どの家具も使っていない状態で全ての家具を焦らす。それも今しかできないことだと思ったから。 片付けを終えて戻ってきたら、最初に触れたのはリビングのラックの下に置かれた箱だった。外見はなんでもない木の箱なんだけど、今回の企画で開発部が一番自信ありげだったのはこれだった。 「確か、ここに……っと」 「───ぁ、っ」 座るには少し低いくらいの箱をオープンラックの下にある空間から引っ張り出して、上面の半分だけ上に開くようになっている扉の鍵を開ける。蝶番式の片開きを開けると……中から現れたのは、小柄な女の子の少し上向きに固定された下半身。 中身からは空気が触れた感覚でわかったのか、切なげな声が漏れてきた。それはよく聞き慣れた、平均的な体格では入り切れないであろう箱に相応しい声。これはアナだ。 「ん……っ、ぁ、ぁっ……」 今回のアナの出番はこの下半身だけ、箱詰めからは出てこないし上半身側は見えもしない。寝室のラックと同じだ。 晒された下半身の、股間部分につけられている貞操帯に鍵を差し込んでロックを外す。腰ベルト部分は触れないままシールド部分だけを外して、自慰防止板も取り除くと……小さくつるつるで可愛らしい割れ目が露わになる。 私はそこに指を差し込んで、中に挿入されていたものをほじくり出した。甘い鳴き声は無視して、用が済んだらすぐに指を引き抜いてしまう。自慰防止板、シールド、貞操帯の鍵の順番でつけ直してしまえば、また切なげな声が漏れた。構わず箱を閉じて鍵をかけ、元の位置に戻してしまう。 あれは金庫だ。貞操帯によって膣穴をセキュリティにした、ああされて一番疼いている場所をむざむざ使われてしまう哀れな貴重品入れ。いわば家具の中ですら、存在価値が穴だけになってしまった存在だ。あんな大きな箱で、保管できるのはあの小さな穴に収まり切るものだけなのだから。 取り出したカプセルは内部に水気が届かないようになっている。仰向けで丸まってラッコのように保持させられているティッシュホルダーから一枚取って、表面の愛液を拭き取ってから開く。中身はUSBメモリがひとつだけだ。 「…………」 リビングにも寝室と似たローテーブルがある。こちらは上に置かれているのがデスクトップPCの本体とキーボードマウスと重いこともあって、あちらよりも完全に固定されている上に二人がかりだ。ヒトイヌ姿勢だけど、接続方式はダイニングテーブルと近い双頭ディルド。ただし天板はアクリルで上からも見える。 ではモニターはどこに置かれているのかというと、ソファから見てローテーブルの向こう側にあった。……正座拘束された女の、顔に固定される形で。化粧台や洗面所と似ているけど、こちらのほうが無様さは強い気がする。なにしろきっちりした正座かつ後ろ手で拘束されて、ぴくりとも動かず呻き声すらない。 「「っ、く……」」 そのPCを立ち上げて、USBを差し込む。中に保存されていた動画を再生しながら、ソファに深く腰掛けた。 言うまでもなく、そのソファも人間家具。三人がけの大きさで、中には座った姿勢で四人が横並びで埋め込まれている。上にクッションを挟まれているから少し分かりづらいけど、私が座った位置は一人目と二人目の中間あたりか。 ただ……そんな座面たちはまだマシだ。実はこのソファ、埋め込まれた座面の尻の下には丸まった姿勢の土台が四人埋め込まれている。 彼女たちは何も見えず、私の動きも大まかにしかわからず、座られているかも真下にいないとわからないばかりか、映像では存在を示す手段がない。おまけのメイキング映像でしか存在を認識されないのだ。それを望んだ、控えめだったり初体験の子が入っている。 そうした存在を認識すらされない子たちがいる一方、自身は耳栓をされながらスピーカーとしてモニターの両隣に設置された分かりやすい子もいる。あれも裸、背中を支えられながらM字開脚で固定されて股と腋にスピーカーをつけられていた。 そこからはモニターで流れ出した、ミスト・スランバーの過去のAVの音が流れている。部屋にいる全ての家具たちにとって、こんな状態で聞かされる好みのAVの音声なんて毒そのものだろう。 だが私はというと、見慣れたそれを流し見つつソファの隣にあったスマホスタンドで通知のバイブレーションを繰り返していた携帯を手に取った。……さっきバイブ音で喘いでいたのはこれで、これまたまんぐり返しで薄い防水ラバー越しにスマホを膣穴へ挿入され立てられていた。この姿勢、股間や穴を上にさせるのに便利だからか多用されている。 引き抜くと落ち着くも名残惜しそうなそれも、金庫を開けてまでチェスの様子が流したモニターやスピーカーも、その向こうでまたしてもまんぐり返しで二穴に花を活けられている人間花瓶も、私は見ていない。人間家具まみれの部屋で一度目の山場として落ち着いたのは、それだけある家具たちとAVを全て無視してスマホを弄る私の光景だった。