SakeTami
雪中アヤメ
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ポニー合宿(仮) 6

(注)FANBOXにて先行公開する作品は執筆中のため、後に一部内容が変更される可能性があります。ご容赦ください。  小屋の傍に戻った二日目の昼、疲労状態の確認も兼ねて一度全ての拘束具が外されることになった。なんと貞操帯まで全て解放されて、ドーム内とはいえ豪快にも全裸の野外露出だ。恥ずかしくもあるけれど、それが興奮に変わらないような躾は受けていない。今すぐにでも開け広げにオナニーをしたくなってきたわたしたちだったが、 「貞操帯は外したけど、自分のお股には触ったらダメだよ。三人は私たちの奴隷なんだから」  の一言で綺麗に消沈した。どれが基準なのかはともかくとして、拘束のない状態では家畜扱いはされないらしい。骨の髄まで調教し尽くされた哀れすぎるマゾ奴隷のわたしたちには、この程度の拘束は言葉ひとつで充分。むしろわたしたちの拘束プレイはご褒美の意味合いが強いくらいだ。揃いも揃って自由を奪われることにとても興奮するから。 「ずっと餌だけでも味気ないし、今回はちゃんとご飯食べようね」  そんな憐れみのような文句で料理を差し出してくるオリ様だが、そんなわけがない。あれはわたしたちを弄んでいるだけだ。時々人間の食べ物の味を思い出させて、家畜の餌に慣れることを防いでいるだけなのだ。  それはわたしたちが食事中でさえ服を着せてもらえないことも証明している。あくまで休息中というだけであって、しっかり夏服を着こなしたご主人様方とは絶対的な隔絶があるままである。  餌だけでは回収し切れない運動量を補うためのカロリーなのだろう、ペペロンチーノと唐揚げという普段なら罪でしかない組み合わせを振る舞われた。しかしわたしたちはそれも簡単に平らげてしまって、胃を落ち着かせるためにまた少し休んでから改めてポニーガールへと戻ることになった。 「明日には馬車を使うから、今日のうちに走ることにも慣れておいてほしいの」  午後の調教は走行訓練だった。先ほどのものとは別の、しかしよく似た一頭用のカルゼルの前に連れてこられて、ミカが最初に繋がれる。一人でも器具は軽そうだ、先ほどより負担が増えることも鑑みて、アルミ製の良心的な物なのだろう。  一頭用の小さなものだから小回りが利くのか、それともこちらの方が先に実験台になっているのか。どうやら少し便利になっているようだ。 「最初に鞭で指示を出すから、その通りに走って。止める時は手綱が引かれるから、それに従ってね」  ミカの手綱は身体を固定する部分の少し後ろにある器具へ結ばれていた。ここが独自に稼働することで引くことができるというわけだ。操作は……どうやら携帯端末で行うらしい。確かに自主的に止まらせていた歩行訓練とは大違いだ。  今回もカメラの設置を待って、プレイ用の乗馬鞭を手にしたオリ様が近づく。ついに鞭の出番だ。あれは受けたことがあるけれど、普通にすごく痛い。本物を使ったら人の皮膚など簡単に裂けてしまうから、これでも随分柔らかいのだけれど。 「本当は馬に名前を教える必要なんてないんだけど……言ったほうが覚えやすそうだし、視聴者さんもいるからね」  揃ってびくりと跳ねるわたしたち。 「これまでにやった、普通に歩く動作が『ウォーク』。腿を上げるほうの歩き方は『パッサージュ』。ポニーガールには難しくないからやってないけど、パッサージュのまま前進せずに足踏みするのが『ピアッフェ』。これの指示は今度ね」  実用性のない見せ歩きにも名前はあるらしい。わたしはろくに馬術を知らないから、そうと知らされても納得がいっただけだが。  ポニーガールは、と前置詞がついたあたり、ピアッフェは本物の馬には難しいのだろう。それが簡単にできるのはポニーガールの実質唯一の優位かもしれない。 「それと速歩の『トロット』」  まだ動かないでね、と前置きしつつ、オリ様はミカの丸出しの尻肉へ軽く鞭を打ちつけた。自然とミカの背筋が伸びる。おそらく打たれたとわかるだけで、そんなに痛くはないだろう。  速歩、あるいは早足。つまり歩きと走りの中間だ。軽く走るかどうかくらいのイメージだろうか。パッサージュまでは知らなかったけれど、馬術の表面だけなら昔ちょっとだけ聞いたことがある。 「次に駈歩、『キャンター』」 「ンムゥッ!」  ばしぃん、と大きな音が響いた。ほとんど同時に悲鳴のような鳴き声。オリ様がかなり強く打ちつけたから、あれは痛いだろう。その痛みを紛らすためには当然走るしかない。  駆け足。走れということだ。だいたいマラソン程度の力の入れ方。馬としての役目を果たす走り方はこれが多い。 「そし最後に襲歩、『ギャロップ』」 「ッグ、ムゥンッ!!」  キャンターと同じくらいの強さで、今度は左右の尻が一度ずつ叩かれた。痛みも当然倍である。普通に走る程度では誤魔化しきれない。  襲歩の指示は全力疾走。つまりスタミナなど無視して必死に走れということ。誰だってこんな状態で後先を考えない、どころか自分から捨てるのは怖いに決まっている。馬の場合もポニーガールの場合も、ギャロップには乗り手と馬の強固な信頼関係が必要となる。今回は心配いらないところだけど。 「覚えたかな。さっそくやっていきたいんだけど、大丈夫?」 「ンン、ゥッ……」  痛みを紛らすように小さく──大きくできないのはカルゼルの拘束があるからだ──尻を振るミカ。痕はないとはいえ痛みが残るだろうに、気丈にも彼女はすぐに頷いた。  それからの光景は、正直、想像以上だった。  手綱の動きを読んで、なんて悠長な様子はない。ただ痛みに突き動かされて、方向なんてカルゼルに全て任せてしまって、ただ走ることにだけ集中する。その指示が最優先、馬自身の体感的な体力なんて無視。  ただ走る。調教師様が潮時を見極めて止めるまでひたすら走って、手綱で止められたら次の躾。全ての走り方を終えて、本当に動けなくなったら次の馬。  ……このようなカルゼルによる走行訓練は実際の馬は行わない。これはポニーガール専用の、甘ったるくもポニーガールになりたいだなんて口走ってしまったマゾメスの尊厳を完膚なきまでに叩きつぶす、本物の躾だ。本当の意味で人間を家畜に作り替える、もう冗談みたいな装置だ。訓練を終えて解放された二頭の表情を見て、わたしはそれを確信した。  それは昨日と同じ。いや、もっと激しい。もう自分自身なんてどこにもないような、あの大きなアルミのミキサーで撹拌されて遠心力で飛んで行ってしまったような、今から自分で考えて動けと言われてもできそうにないほどぼうっとした瞳。自分にはたったひとつしか存在価値がないのだと、本能までしっかり刻み込まれた家畜の瞳。  わたしも今からそうなるのだ。考えるだけで表情が緩んだ。轡を噛まされていなければ、一体わたしはどんな表情を浮かべていただろう。


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