SakeTami
雪中アヤメ
雪中アヤメ

fanbox


ポニー合宿(仮) 3

(注)FANBOXにて先行公開する作品は執筆中のため、後に一部内容が修正される可能性があります。ご容赦ください。  ほどなく全員の着付けが終わる。一人……もとい一頭ずつ馬房から連れ出され、開けた外に出ると三つの手綱をひとまとめにされてその場に並ばされた。  足元も覚束ないし、毎度のこととはいえ曳かれて歩くのはどうにも被虐心を煽られる。ドーム越しとはいえこんな格好で日光に恥部を晒したのは初めてだし、半裸の体を撫でていく風にどうしても体が縮こまって……風? 「雰囲気を出すためにね、風が吹くようになってるの」  どうして空調がしっかりしているドームの中で屋外のような風が吹くのかと思えば、わざわざそう作ったと言われてしまう。ミスト・スランバーらしいといえばらしいけれど、全く末恐ろしいというかなんというか。  オリ様はそんなことを喋りながら、両端にいたわたしとミカの手綱を軽く引いた。するとどうだろう、自然と一歩だけ踏み出しながら向かい合うような向きに変わる。少なくともわたしは何も力を入れていないのに。  いっぽうシノ様はというとビデオカメラをこちらに向けていた。片手サイズで充分な性能を持ったこれまたスグレモノの自社製品である。調教風景を動画にすることは事前に承諾済だ。いちおう性器が隠れる貞操帯を着けたのはこのためでもある。 「アウ、?」 「ほら、お互いに見せあっていいよ。仲間のポニーのことはちゃんと、ね?」 「ウゥ……」  言葉に合わせて内向きの三角形になったわたしたちは、お互いの恥ずかしいところをこれでもかと晒すことになった。それも当然だ、家畜は飼い主の命令に逆らえない。ついさっきまでは遮眼帯で見えなかったというのに。  恥ずかしそうな呻き声をあげながらもじもじと身を捻っているのは、まさにポニーというべき小柄な馬となったアナだった。わたしと違って王道のアームバインダーでまとめられた腕をぱたぱたと動かして、真っ赤な顔から涎を垂らしている。セミロングの髪はポニーテールにしているから、その小柄さも相まってなんとなく無邪気そうな雰囲気が醸し出されていた。さすがは合法ロリ、犯罪臭がものすごい。  その隣では比較的落ち着いているミカの姿。両腕は肩までの拘束衣で体の前に回されて固定されている。三頭の中では飛び抜けて豊満な乳房が強調されるように抱えられているが、これは揺れて痛めないための配慮でもあるのだろう。なんとも妬ましい。  一方でわたしはこの中では最も背が高い。胸はないけれど、拘束による姿勢矯正もあってすらりとして見えるのだろう。二頭からのこれも羨望のような視線を感じた。 「かっこいいカナ、かわいいアナ、えっちなミカってところかな。三頭とも、もう一回こっち向いて」 「ンゥ」  今度はさっきと逆側の手綱を引かれて体の向きが戻り、そのまま少し緩められた。わたしもミカもその意図を察して、自ら一歩下がり横並びになる。 「それじゃ改めて。これから三日間をかけて、お前たち三頭を立派なポニーにしてあげます。よろしくね」  お互いは見えないながらそれぞれ頷く気配。三泊四日のポニーガール合宿、わたしたちはここで雌馬になるためにみっちり叩き込まれるのだ。  カメラへの挨拶の意も含めて、顔の赤さはそれぞれながら全員が胸を張る。後で見てくれる人のためにも、魅力的なポニーになってみせなくては。 「まずは歩いてみようか。一頭ずつ」  ミカとアナの手綱が厩舎の壁に括りつけられ、わたしだけがオリ様に引かれる。力が入るのを感じるままに、引き寄せられて前屈みになる前に自分から歩いていくと、オリ様の表情も少し緩んでいるように見えた。  カメラから少し離れて横向きになり、一度止まってまっすぐ前を向く。オリ様はわたしの手綱を持ち上げ、絡まらないようにわたしの背後へ移動した。これだけでも全てを委ねて、自ら進んで家畜になったことがありありと示される。 「ひとつめの合図。普通に歩いて」  くいっ。短く持たれた手綱が少し緩められて、改めて軽く張られた。言われた通りに歩き出すと手綱はそれ以上後ろに引かれない、オリ様も後ろからついてきているようだ。  爪先立ちを強制されて、いつもより小さい足でゆっくりと歩く。とはいえやはり考えられた設計なのだろう、思っていたほどの難しさはまだなかった。すぐに慣れられそうだ。 「次。見せつけるように太股をしっかり上げて歩きなさい」  ぴしゃん。手綱を一度背中に打ちつけられて、さっきと同じ形に戻る。わたしは言われたまま、腿を水平まで上げて足を進め始める。横で見ているであろう他の二頭から遮眼帯越しに気配。  普通に歩くよりも歩幅が小さくなってしまうし、何より恥ずかしい。その感情もあったのだろう、少しずつ無意識に脚が下がっていって───ぱしぃん! 「アゥッ!?」 「脚が下がってる。手で指導してもらえるうちに修正しなさい」 「フッ、ゥ……」  T字型の貞操帯から丸出しの尻肉を、オリ様に平手で叩かれた。乾いた音と痛みが叱られていると認識させてきて、わたしは慌てて脚を振り上げる。しばらく続けば背後の空気も戻ったが、少し余計な体力を使ってしまった。 「次は方向転換。手綱が引かれた方向に曲がって」 「グッ、ウ」  不思議なことに、手綱が右に引かれると自然と体も右へ向く。その感覚に任せて歩き続ける。後ろにオリ様を、仮想的に馬車を牽いていることも思い出して、ゆっくりと慣性を従えるように方向転換。どうやら無事に曲がることができたようだ。 「いい仔。このまま合図するまで歩いてみよっか」  これは歩行訓練だ。別にこの歩行はわたしの経験以外に何一つ利をもたらさないが、今のわたしは歩くことが仕事。手綱の感覚に身を任せて歩き方を覚えることに集中した。  緩められてから張りが戻ったら歩幅を広げて、軽い痛みを感じたら脚を振り上げる。手綱の引かれ具合で曲がる角度も感じ取り、ずっと伸ばした背筋は崩さない。なんだか楽しい。まるで自分が、信号だけで動くただの道具になってしまったかのような。もうわたしの思考は何一つ仕事をしていない。 「はい、ストップ」 「グゥ、ッ」 「上出来だよ、カナ。初めてとは思えないくらい」  ミカとアナの目の前に戻ってきて、不意に手綱が後ろに引かれた。初めての指示だったが、これは考えなくともわかる。軽く顔を上向けつつ、架空の慣性に従って緩やかに止まる。まだ遠いであろう馬車を意識し過ぎだろうか?  停止して初めて呼吸が乱れていないことに気づく。こんな拘束状態で長く歩き続けたのだから、本当ならもっと息が切れるはずだ。それなのに今は苦しいどころか、深呼吸を少しするだけでいつも通りになるくらいだ。 「呼吸が乱れてないのは、リズムに合わせて上手く歩けた証拠。走っても……は無理だけど、馬車を牽いて歩いても今みたいな状態になることが今回の目標のひとつなの」  そう言われるとなんだか誇らしい。口枷とベルトでほとんど動かない口角の代わりに目尻を下げて感情表現。オリ様はわたしの頭と体を撫で回してくれて、それから建物の突起に手綱を結んだ。  しばらくは体を休めつつほかの馬の調教を眺める。どちらもわたしほど上手くは行かなかったようで、何度かお尻を叩かれていた。  ミカは小回り効かせ方が掴めず、アナは慣性がうまく取れなかった様子。ちゃんと修正できるまで歩かされたものだから調教時間もわたしより長く、どちらも息が切れてしまっていた。  ……でも、あの表情は羨ましかった。もう何も考えられない、疲れからの程よい脱力。ああなれば誰だって手綱に忠実になれるだろう。わたしの被虐心が叫ぶのだ、アレは絶対に気持ちいい状態だと。 「予定通り、今日はここまでにしようか。移動の疲れもあると思うし、夜はしっかり休んで」  結局わたしだけもう一度やったのに、それでも二頭のようなトランス状態には陥れず。日も傾いてきた頃になってオリ様は訓練の切り上げを宣言した。少し弛緩した空気が出てしまうあたりは、これもある意味でいつもと違わないという証左だろうか。  わたしたちは手綱を前に引かれて──これは『連れて行くから好きに歩け』の意──厩舎の一角へ向かったのだが。  シノ様はまだカメラを持ったまま。わたしたちの拘束具は全て防水仕様。連れられた先には水周りらしき空間と、いかにもな置かれ方をしたホースがひとつ。  ……なるほど。


More Creators