高校からの帰り道。冬場で早くも陽が暮れたその日。
住宅街を縦断するように伸びた縦長の公園を突っ切っていて、やけに今日はカラスが鳴くな、と思っていると、そのカラスが、こちらに低空飛行で飛んで来た。そして、俺のカバンにぶつかって、またどこかに飛んで行った。
不器用なカラスだな。あんな飛び方する鳥だったか? それとも、カバンについてたタグでも狙ってたのか? それか、袖口についた学ランのボタンとか?
公園に立ち並ぶ樹々の向こうに消えたカラスを目で追った後、ふと、足元に視線を落とせば、赤いビー玉が落ちていることに気付く。こんなの落ちてたっけ。カラスが落としたのか、これを狙って取るのを失敗したのか。
土埃のついた赤いビー玉に手を伸ばせば、ばちり、と静電気が走る。
「痛ぇッ」
なんでガラスに電気走るんだよ。冬場の静電気強すぎだろ。
顔をしかめて、ふたたび、ビー玉を睨み、そして、ハッと息を呑む。
プチトマトのようなビー玉が、じわじわと膨らむように大きくなっている。
指先でつまめる程だったそれが、けん玉程度、手のひら大に変わっていき、そして、片手で掴むのも難しい程の大きさに変わる。
「なんだこれ?」
後ずさりして、周囲に目を向け、言葉を失う。
細長い土の道が続いていたはずのそこは、広大な大地へと変わっている。
整備されていたはずの土には、ゴロゴロと大きな石が転がっている。
上を見れば、遥か彼方に、樹々の葉が見える。
ビー玉が膨らんでいるんじゃない。──俺が縮んでいる。
「な……っ」
理解した後、言葉を失っていると、ギャアギャアと大きな鳴き声が聴こえる。
頭上の、樹々の葉をかき分け、俺の五倍くらいの大きさはある巨大な黒の塊が、旋回した後、勢いよく、こちらに急降下してきた。さっき、カバンに激突してきたカラスだった。
まずい、死ぬ。
今、自分に起きている状況を受け入れる前に、本能が死を悟り、小さな足を蹴って巨大な土の上を駆け出す。
とりあえずビー玉から、離れなければ、と必死で、足を動かす。
ザリザリザリガシャアアア、と、硬いクチバシが土を削る音が聴こえる。
小さな身体とはいえ、元の大きさの数歩分は、ビー玉から離れたはずなのに、カラスの迫る音は、確実に俺へと近づいて来ている。
嘘だろ、オイ。光物狙いじゃなくて、もしや、エサとして、俺を狙ってるってことか?
寒い冬の夜だというのに、背中から、どっと汗が噴き出る。握った拳も、汗で濡れ、力がうまく入らない。
突然、サファリパークの檻の中に、放り出されたかのように、全身が、命の危機を感じている。
「う、ぐぅ、かはぁッ」
背中に鋭い痛みを感じ、咽る。痛みは一度で終わらず、すぐに、背から腰に掛けて、鋭利な棘でなぞられるような痛みを受ける。
そして、前方へ、大きく弾き飛ばされた。
「ぐぁああッ!!」
べしゃり、と鈍い着地音を立て、小さな身体が、泥の水たまりに落下する。
公園内に、備え付けられた水道の水が排水溝へと流れる途中に出来た、小さな水たまりだ。
普段の自分の靴のサイズ一つ分、くらいの大きさのそこに、身体が入り込み、泥まみれになる。
冷たい泥水に、巨大なカラスから受けた打撃。
身体が悲鳴を上げる中、すぐ傍に浮かぶ、ドロドロの枯葉に捕まり、身体を可能な限り、泥水に浸す。
旋回していたカラスが、ほんの数メートル先の土の上に、降り立ったからだ。
きょろきょろと、黒い身体を左右に揺らし、小さな獲物を探している。
なんでこんなことになったんだ……。
いつも踏み越えていた水たまりで、息を潜ませることになるなんて思ってもみなかった。
見つかったら食われる。頼む。諦めて、どっか行ってくれ。
祈るような気持ちで、泥水に浮かぶ枯葉を握っていると、──ザクザク、と、工事現場のような地鳴りが聴こえてきた。
暗がりの中、視線だけを、音の方へ見れば、公園の街灯に照らされた、白い巨大な人影が見える。
それは、人間だった。
ベージュのダッフルコートとタイトスカートのスーツを身にまとい、すらりと伸びた脚で、ヒールをかつん、かつんと、鳴らしている。
大きすぎる上に、暗さでよく見えなかったが、ギャア、ギャアと、カラスが鳴き、「きゃあ」と人影が甲高い声を上げ、若い女性だと悟る。
巨大な人間の襲来により、カラスは鳴き声を上げて、空高く、飛び上がっていく。
「夜にカラスなんて、珍しい。なんかあったのかな」
歩きながら、女性が独り言ち、俺が潜む水たまりへと歩を進める。
そして、途中で、足を止め、じっと、地面を見つめる。
「あ、ビー玉だ。懐かしい~。忘れ物かな。あー、これ狙ってたのかな」
彼女が、タイトスカートから覗く、ストッキングで包まれた足を、惜しみなく晒しながら、膝を曲げて、地面にしゃがみ込む。
公園の街灯が、ちょうど、彼女を照らし、ハーフアップにまとめられたアッシュグレーの髪と、柔らかな肌、ガラス玉のような大きな瞳を照らす。
スーツ姿に反して、幼い顔立ちに、状況も忘れて、一瞬、目を奪われる。
あ、あの人、知ってる。
たまに駅までの同じバスに乗るひとだ。
あんな声だったんだ。
そんなことを考えた後、ハッと我に返る。
白魚のような手が、赤いビー玉へと触れようとしている。
俺は、泥の水たまりから、小さな身体を這い出し、あらん限りの声をあげた。
「──それに触るな!!」
彼女が、ビクリと、身体を震わせた後、俺が潜む水たまりへと、目を向ける。
ぱちくり、と瞬きをした後、目を凝らし、そして、じりじりと水たまりへ、身をかがめながら近づいて来る。
「にん……ぎょう……?」
大きな瞳と思いきり、目が合う。もうごまかせない。けど、仕方がない。
彼女が、水たまりの前に、膝をついてしゃがみ込む。
細長い指先が、泥まみれの小さな俺を、恐々と触れて、手が泥まみれになることもいとわず、両手で拾い上げる。
ぽたぽた、と泥水が、指先を汚していく。しゃがみ込んだ女子に持ち上げられただけなのに、かなり高い場所に来た感覚が消えない。
じっと、大きな瞳が俺を見つめた後、艶やかな唇が、そっと開く。
「……生きてる……の?」
巨大なカラスに命を狙われていた危機を脱して、身体は安堵しているが、正直、別の意味で、鼓動が高鳴っている。
好みの容姿の女子を、こんな至近距離で見るもんじゃねえな、と思う。
「そのビー玉に触ると、身体、縮められるぞ」
伝える忠告に、喋ったぁあああ!? と驚き、手を滑らせそうになった彼女の袖口に、小さな手でしがみついた。
*
とまあ、それが、今日の夕方に起きたことだ。それは憶えてる。
それが、どうしてこうなったんだ。
滝壺クラスの水音が背後から聴こえる。浴槽にお湯を溜めている音だ。
俺は腕を組み、足元を睨む。
プラスチックの枠組みで出来た脱衣かごが見える。白いカゴの縁が、今の俺には、もはや、陸上トラックにすら思える。
その中を埋め尽くすように、巨大な、通常の人のサイズの女性もののパジャマと下着が置かれている。
その上に、ちょこんと、どこからともなく調達されてきた、人形用らしき、小さな寝間着グッズが置かれている。
きゅッ、と水栓が閉じられる音が聴こえ、浴室から、ひょこり、と、彼女、──那月が顔をのぞかせる。
「ねえねえ。入浴剤、桜の香りとヒノキの香り、どっちがいい?」
満面の笑顔で個包装された粉末状の入浴剤を見せられる。
おすすめは桜だけど、男の子ってそういうの好きじゃないのかな、と言われて、自分が男とカウントされていながらも、ある意味カウントされていないのを、改めて痛感させられる。
「……あの、那月……サン?」
通学途中のバスと駅で、たまに見かける程度だった彼女に、こうして名前を呼ぶ日が来るとは思いもしなかった。
それも、バスルームで。
「なあに?」
こちらのそんな内心など、全く、考えもしていないのであろう、無邪気な顔をしたまま、年上の彼女が、浴槽に入浴剤を入れた後、浴室にしゃがみ込んだまま、幼い声を上げる。
冬のダッフルコートと、スーツの上着が取り払われ、白いシャツに、タイトスカート。そこからのぞく、ストッキングに包まれた脚。ハーフアップにまとめていた薄墨色の髪は、鎖骨の辺りまで、おろされている。
しゃがみ込んだのは、脱衣かごの上に立つ、背丈、わずか八センチ程に縮んだ俺に視線を合わせるためだからだろう。
そうだとは思うが、ストッキングを履いた長い脚が無防備にさらされていて、目のやり場に困る。
物理的にも大きな瞳から、ちらりと目線を反らし、なんとか口を開く。
「本当に、風呂、いいのか?」
泥まみれの小さな俺を拾い上げた彼女は、俺をこうして縮めた原因であろう、赤いビー玉を、果敢にも間接的に触れながら拾い上げ、ひとまず、ビー玉と共に、俺を、こうして彼女の一人暮らしのマンションへと連れてきてくれた。
ローテーブルの上に、タオルハンカチを置き、その上に、ビー玉と小さな俺を乗せ、那月が見守る中、色々と確認したものの、何も、変化が起きない。どうしたものかと途方に暮れていた時に、彼女が提案したのが、「とりあえず、お風呂でも入って、泥まみれの身体と服、なんとかしよう」だった。
正直、今は暖かな室内にいるとはいえ、冬場に、全身泥まみれで、こんなわけの分からん状況下に置かれ、心身共に冷え切っていたので、ありがたすぎる申し出ではある。あるのだが。
空になった入浴剤のパッケージを、くるくると細めて、おみくじのように結ぶ彼女が、にこりと笑う。
「もちろん、いいよ。ゆっくりお風呂入って、まずは身体、休めよう。寒かったよね、遅くなってごめんね。泡ぶろとか出来たら、もっと楽しかったんだけど、買っておけばよかったなあ。残念~」
無邪気に、そんなことを言う彼女に、自分の中の疑問が、一般的なものなのか否か、自信を無くしそうになる。
「いや、その……、そっちもありがたいんだけど、そうじゃなくて」
「?」
彼女本人に自覚がないのか、社会人と学生による経験の差なのか。
「俺と、ほんとに風呂、一緒に入るのか? 別に、小さい容器にお湯入れておいてくれたら、一人でも全然」
「そんな危ないよっ。シャンプーとかボディソープのボトルだって、今は君より大きいし、何かの間違いで流されそうになったら大変だし」
「…………、いや、そりゃ……、そこはそうだろうけど」
「それに、私も一人だと、ついシャワーで済ませちゃうことが多いんだよね。なかなか、お湯張ってお風呂まで入らなくて。久しぶりだからちょっと楽しみ」
うふふ、と笑われて、どこまで人のこと、男だと意識してないんだよ、と思う。
アシストなしでは入れない状態だからって、人のこと、意識しなさすぎだろ。お前、これ、元のサイズの俺相手でも同じこと出来るのかよ。……出来たらどうしよう。
うーん、とうなっているうちに、那月が、浴室から脱衣所へと戻って来る。
「じゃあ、ゆっくりお風呂はいろっか」
「……お、……おう」
なんの疑いもなく、満面の笑みを浮かべる那月に、小さく返事をする。
まあ、でも、俺は確認取ったし、しゃあないよな。
本人がいいって言ってるんだし。実際問題、俺、いつまでもこんな泥だらけでいるわけにいかねえし。
とりあえず、身体さっぱりさせて、こんなわけわからん状態を、一刻も早く解決しないといけないわけだし。
うん、しゃあない、しゃあない。これはもう、一緒に風呂、入るしかねえよな。
「ついでに今日着てる制服も洗っちゃおうね」
「あー、そうだな。助かる……って、何、脱がそうとしてるんだよ」
脱衣所のかごの上に立つ俺に、那月がしゃがみ込み、大きな指先を伸ばすので、慌てて距離をとる。
バランスを崩して、かごの中に、落ちそうになるのを、必死で、小さな足に力を入れて、体勢を整える。
「え? あ、そっか。服は自分で脱げるよね」
「当たり前だろ……っ」
自分の小さな顔の先で、那月の大きな指の腹がかすめたことに、想像以上に、ドクドクと鼓動が鳴っている。これはあれだから、生命の危機を感じたそれだから、と自分に言い聞かせる。
落ち着け、俺。
「えへへ、ごめんね。なんか、誰かとお風呂入るのとか久しぶりだから」
言いながら、那月が立ち上がり、首元のブラウスのボタンをぷつり、と外していく。
その光景も、なかなか目のやりどころに困るのだが、聴こえた内容に、内心、エッ、と耳を疑う。
誰かと風呂入るの久しぶりって……。えっ。こんな風に風呂、誰かと一緒に入ったことあるのか?
誰と? 彼氏と? 久しぶりってことは、元カレと?
そりゃまあ、社会人だし、彼氏なり、元カレなりいるのは、不思議じゃないけども。
いや、たまに、満員のバスや電車で見かけたとき、指輪してるかな、くらいは正直、見たことはあったけれども。
いやでも、こんな、幼げ天然系のくせして、シュッと彼氏と風呂入って、服、脱がせあったりするか? いや、逆に、押しに弱くて、彼氏に言われたら色々、やったりするかもしれん。
それがきっかけで、今、こうして、何ら疑問を持たず、行きずりの男子高校生と風呂入る彼女が爆誕したとか、そういう……。
一瞬で、そんなことを、悶々と考えているうちに、那月は、白いブラウスのボタンを外し終わり、バサリと、脱ぎ捨てる。
モスグリーンのブラジャーが、肌の白さを際立たせるように、視界に入る。肩紐が、肩から鎖骨、乳房の曲線を強調するように流れ、柔らかそうな乳房がカップから飛び出すのを食い止めるように、ブラジャーのカップに繋がれている。
こちらの目が釘付けになっていることに、気にも留めないのか、今の身体が小さすぎて視線に気付きすらしていないのか、那月は服を脱ぐ手を止めない。
くびれた腰の左に両手を添え、タイトスカートのファスナーのホックを外す。細い指先で、ジー、と音を立てながら、ファスナーを下ろし、ぱさりと、タイトスカートを床へと落とす。ストッキングをまとった足と、ブラジャーと同じ色のショーツが、露わになる。
すらりと伸びた脚の全貌と、白い柔肌の腿がストッキングに押し寄せられている。今の自分の全長と大差ない高さの布地が、彼女の丸みを帯びた下腹部を覆っていて、自分の小ささを思い知らされると共に、目の前の光景の破壊力にくらくらしてしまう。
白い指先がストッキングと太ももの間に入り込み、するすると、ストッキングをずらし、素足を晒していく様から、目を離せないでいると、頭上から声が降り注ぐ。
「そうだ、制服は、中で一緒に洗った方がいいよね。流れちゃうと大変だし。中で脱ごっか」
提案に顔をあげれば、那月が、ちょうど、背中に両手を当て、ブラジャーのホックを外しているところだった。
もはや、制服の洗濯どころの話じゃない。じっと、見つめたまま、うなずきも返事もせずにいると、特に気にすることなく、那月が、するりと、ブラジャーを取り外す。
押さえつけるものをなくした、彼女の柔らかな胸が、たゆん、と大きく揺れた後、ふるふると小さく震える。
果実のような桃色の乳頭が、振動を示すように、上下に動いている。
くびれのあるウエストを、ひねり、那月が、唯一、身に着けている、ショーツに手をかけ、するすると、脱いでいく。
ぷくりと膨れ申し訳程度にアンダーヘアを生やした下腹部が、太ももに寄せられてあらわになる。
那月は、白く柔らかな双丘をわずかに揺らして、脱いだ衣服を、洗濯機に中に入れた後、今更のように、胸元に、フェイスタオルを当て、こちらに近づく。
右手でタオルを押さえたまま、身をかがめ、左手のひらを脱衣かごの枠、つまり俺の足もとの傍に添えさえる。
「はい。お待たせ。お風呂はいろ~」
「……ッ」
小さな俺に目線を合わせるべく、身をかがめたことで、必然的に、胸が寄せられ、巨大な谷間が出現している。
これと一緒に風呂って、色々と身体が無事で済まない気しかしない。
「どうしたの? 泥だらけで、身体冷えちゃった? 早くあったまらないとだね」
那月の大きな指先が、小さな俺の首根っこを、ひょい、と摘まみ上げる。
「ぅ、わっ、ちょッ、那月」
「お風呂お風呂~!」
暖かな手のひらに乗せられた後、那月は楽しそうに鼻歌を歌いながら、ぱたり、と浴室の扉を閉めた。
*
首根っこの支えがなくなったと思った途端、小さな身体が重力に従って落下する。
ぽとり、と落とされたのは、洗面器の中だった。
ゆっくりと立ち上がるも、洗面器の縁が、今の俺の高さより高い。湯桶の向こう側に、ボディソープやシャンプー、リンスの容器の上部が少し見えた。
背後の、遥か上空で、ごそごそと、大きな那月が動く気配を感じる。
一糸まとわぬ彼女が、後ろにいるのか、と、ごくりと息を呑む。きゅっ、と高い蛇口を動かす音が聴こえたかと思うと、温水が勢いよく、頭上から降り注いできた。
「ぶわぁああっ!?」
シャワーによるお湯は、もはや、土砂降りの雨のような勢いで、泥まみれだった制服を、あっという間に水分で重くし、制服についたままだった泥が、洗面器の底に溜まっていく。
水浸しの黒髪が視界を塞ぐので、手の甲で退かす。お湯を限界まで含ませた学ランが、もはや鎧のように重たく張り付いている。
足首から、脛あたりまで、温水が溜まったあたりで、俺は、洗面器の側面に、小さな手をつき、声をあげる。
「那月! ちょ、これ、溺れる!! 息できないから!」
力の限り張り上げた声だったが、今の大きさで叫んだところで、声量が小さいのか、シャワー音でほとんど内容が聴こえなかったらしい。
那月が、くるりと、シャワーを洗面器の外へと向きをずらしてから、「えー?」と呑気な声を上げる。
「あれ? ちょっと熱かった? ごめんね」
見当違いの謝罪を入れられた後、那月の白く長い腕が、頭上を横切る。
マフラータオルでも通り過ぎたくらいのサイズ感に、思わず、身構えていると、那月の手が、がしょがしょと音を立てて、ボディーソープを手のひらに乗せる。
そして、その大きな手が、俺の入った洗面器へと入れられる。
泥とソープが、ぐるぐると、足元のお湯に混ざり合っていく。
大きな水流に、足元を取られ、ぱしゃん、と洗面器の中で、尻餅をつく。手首と腰元が、お湯に浸される。
泥と石鹸の匂いに煽られながら、頭上を見上げると、大きな大きな那月が、両膝をくっつけて、踏み台に座り込み、洗面器へと、片手を突っ込んでいる。
灰色のロングヘアは、大きなヘアピンで、うなじを見せるように、アップされていて、那月は後れ毛を、耳へとかきあげる。ぽたり、と、頬から鎖骨、胸元へと、しずくが流れ落ちていく。
すげー綺麗。
こんな風に、裸、拝める日が来るなんて、思ってもみなかったな。
なんてことを考えていると、ぐらり、と座り込んでいた洗面器が傾く。
「ん? って、うおわっ!?」
ざばり、と洗面器の中のお湯が捨てられ、それと同時に、俺の小さな身体も、浴室の床へと投げ出される。
お湯の勢いと、石鹸のぬめりで、小さな身体が、排水溝へと滑っていく。
「だーッ、流される!!」
「あーっ! ごめんっ、間違って、一緒に流しちゃった」
那月の、割と命に関わるうっかり声を聴きながら、浴槽と排水溝の隙間で、俺は勢いよく、両手を突き出し、浴槽の壁を掴む。
真下を見れば、大きな網目で出来た排水溝のフタの下に、ごぽごぽと音を立てながら、石鹸水が流れていくのが見える。
あの中に紛れて、下に落ちたら、もうきっと助からない。
ゾッと、していると、那月が、慌てて、俺の小さな腰元を、大きな親指と人差し指でつまみあげ、救出する。
「ごめんね。良かった、流されちゃわなくて」
「いや、もう、ほんと、気をつけろよな」
意外と雑な扱いに、状況も忘れて、思わず言うも、那月は、再び俺を、洗面器の中に置いて、しょぼんと申し訳なさそうな顔をする。年上のはずの彼女が、大人に叱られた子供のような顔をして、そのギャップがなんとも、煽情的だ。
「ほんとにごめんね。……あっ、そうだ」
彼女は、浴室の中で、すっくと立ちあがり、浴槽の真上に取り付けられたつっかえ棒に手を伸ばす。
そこには、小さなフェイスタオルが干されていた。
「排水溝のフタの上に、タオル置いておくね」
そう言いながら、浴槽の縁に片手を添え、つっかえ棒に干されたフェイスタオルの先へと、もう片方の手を伸ばす。
すらりと伸びた脚が、ぴん、と伸ばされ、白い背中が反り返り、柔らかな胸が、ぷるりと揺れ、乳房と乳首から、ぴちょん、と水滴が浴槽へと落ちる。タオルを取るのに苦戦する彼女が、身体を更に伸ばそうと、上下に動く。桃のように、艶やかで透き通った柔肌の双丘が、こちらを誘うかのように、連動して、ふるりと揺れる。
こんな小さな身体でなければ、そのくびれた腰と柔らかな尻を一思いに掴み、欲のまま、犯してしまっていただろうに。
那月が、フェイスタオルを掴み、手元で小さくたたんだ後、排水溝の上へと被せる。
「これで大丈夫だね。安心してね」
微笑みながら、那月が、バスチェアに座り、俺へと両手を伸ばす。
「ほら、早く脱いで。制服洗っちゃうよ」
身体の周囲に、傘の柄のように長く大きな指が、十本。俺の周りで待機している。
その巨大な指の先、手のひらの向こう側。那月の大きな胸を見つめたまま、俺は無言で、制服の学ランのボタンを外していく。
俺の小さな腕から引き抜くように、那月の白い大きな指が、俺の学ランを受け取り、大きな手のひらの上に乗せる。
ぽたぽた、と、俺の顔から、小さな雫が落ちていく。
大きな那月の瞳が、次の服が脱がれるのをじっと待っている。
「泥水、いっぱいかかっちゃって、大変だったね」
白いシャツのボタンを小さく外していく俺を見ながら、那月が大きく呟く。
年上の一糸まとわぬ女子の前で服を脱ぐ、という、これまでの短い人生では該当データのない体験に、色々と限界が来そうな中、シャツとインナーシャツを脱ぎ捨てる。
上半身の肌が露わになったのに、ちっとも身体は冷えない。
足元の大きな洗面器にはられた湯のせいか、煽情的な大きな彼女を前にしているからか。
学ランのスラックスの留め具を外したところで、那月が、大きな指の腹を、俺の鳩尾あたりに添わし、ビクリと身体が震える。
「ッ!? なんだよ!?」
「あ、ごめんね、急に。怪我してるのかなって思ったんだけど、泥がついてただけだったみたい。よかった~」
柔らかな指の腹が、ぷにぷにと、俺の小さな素肌の腹と胸部を撫でていく。
「~ッ」
那月は、声なき声を上げるこちらを気にせず、大きな指先を、小さなスラックスの端にひっかけ、ずりずりとずらしていく。
「オイ、脱がすな!」
「だって、泥水、染みになっちゃうよ。早く洗って、お風呂入ろうよお。身体、冷えちゃうよ?」
冷えるどころか、熱くなる一方なのだが、那月は、大きな力で、こちらのスラックスを引っぺがす。
反動で、お湯の溜まった洗面器の上で、俺が下着一枚で尻餅をついていると、那月が、ぽいとスラックスと、手のひらに持った小さな服を、洗面器の中に入れる。
那月は、大きなボディソープボトルから、とろりと石鹸液を出すと、大きな手で泡立てた後、泡まみれの手を、小さな俺へと伸ばしてきた。
「うぶふぅおッ!?」
八センチの小さな身体は、彼女の手にすっぽりと入ってしまう程の小ささで、暖かな手と、ぬめりのある洗剤と泡で、簡単に洗われてしまう。
彼女の細長い、十本の大きな指が、うねうねと動き、俺の小さな全身を包み、撫で上げて洗っていく。
「はぁっ、はぁ……、那、月……っ!」
ドクドクと、一枚の、湯と泡まみれの布の下で、欲熱がうねりを上げる。
那月は、鼻歌を歌いながら、両手を組み、隙間から小さな俺の頭をのぞかせる。
大きな二本の親指が、俺の泡まみれの両頬を、ぷに、と突いた後、するりと、親指が下を向く。
そして、下着をずるりと脱がし、洗面器の中へと落とした。
「は……っ、はぁ…っ」
パシャン、と小さな水音が、宙を浮いた足の下で響いた。
那月の大きな細い指先が、柔らかな手のひらが、俺の小さな裸体を、直で包み込んでくる。その上、ぐにぐにと、粘性の強いボディソープをすり込むように動かしている。八センチに縮んだ小さな身体は、火が付いたように熱を持ち、酸欠状態のように、激しく口呼吸をする。
「ッぁ、ハァッ、待っ、那月……ッ、俺……ッ」
「ふふふ。泥水、冷たかったよね。いっぱい洗っておこうね~」
那月の大きな指が、目の前に、ぬっと現れる。
泡と白いボディソープの粘液をまとったその指は、俺の小さな頬を撫で上げた後、ぬるりと、小さな首筋を撫で、耳の後ろとうなじを、同時に、ぷにぷにと遊ぶ。
湯と泡でべとべとに濡れた小さな髪を、指の腹が、撫でて、泡立てていく。
「はぁ……っ、ぅあ、ッツ、那月っ」
「あっ、痛かった? ごめんね、もうちょっと力抜くね」
より一層、ゆるやかな力で、ゆっくりと全身を指で撫でられ、俺の小さな身体は、熱を上げるばかりだった。
巨大な泡と塗りたくられたボディソープの影で、そそり立つ陰茎は、硬度と唸りを増していく。
那月は、性格なのか、体格差ゆえなのか、こちらを気にすることなく、大きな手のひらに、俺をうつ伏せに預ける。
柔らかで大きな手のひらに、泡まみれの下腹部と陰茎を押し付けることになり、俺は、大きな指に思わず口を押し当て、全身に力を入れて耐える。
「ふぅッ、ぐ……っ!」
「どうしたの? 背中、痛いの?」
那月の大きな指が、石鹸のぬめりと共に、俺の小さな背を、指の腹でなぞっていく。
それと同時に、手のひらにうつ伏せにされた小さな身体は、接合面への圧を増していく。
「~ッ、違っ、ハァッ、もう背中、押すなっ……!」
熱い呼吸の狭間で、なんとかそう言えば、那月は何を思ったのか、少し悪戯めいた顔をして笑う。
「なあに? 背中、もしかして、くすぐったがりなの? こしょこしょこしょ~」
そして、大きな指の腹が、小刻みに動きながら、背中のあちこちに移動する。
「うぁッ!? ばッ、やめ、ひぃっ」
背中越しに大きな振動を受け、那月の指の間に顔を突っ伏し、息を漏らす。
「あはは。本当に、くすぐったがりなんだね」
硬い熱源の先端からは、とろりと先走る液が溢れ、那月の手に、小さな一滴の汚れを堕とす。
しかし、那月は、微量の欲に富んだ粘液が付着したことに気付くこともなく、大きな指を、俺の小さな頭に押し付け、俺は、息苦しさに、咽るような呼吸をする。
──死と性欲が交互に来て、頭、死にそう。
那月の大きな指が、俺の小さな両脚を割り、内股に潜りこみ、俺は、力を振り絞って、顔を上げる。
「那月……っ、ちょっ、さすがにそこは……」
「え? なんで?」
那月は、きょとんとした顔をして、右手の平に寝かせた俺を、大きく覗き込む。
大きなヘアピンで束ねたアッシュグレーの髪の後れ毛から、ぽたりと大きな雫を落としている。
「マッサージみたいに、全身ほぐしたら、楽になるかなあって思ったんだけど……」
俺は、一瞬、那月の大きな手に包まれたまま、考える。マッサージ……。全身を……。絶対、身体もたんわ。
俺の沈黙をどう捉えたのか、那月は、少し不安げに、小さな俺を覗き込む。
「嫌だった?」
那月の頬から雫が伝い、白い柔肌へと落ちる。透明の粒が、ころころと、那月の胸元の谷間へ吸い込まれていく。
「……ッ、嫌なわけないけど、その……、さすがに身が持たないっつうか……」
ぼそぼそと言葉を足せば、那月は、「そっかあ」と分かったのかどうか分からない返事をする。
「じゃあ、ちょっとここで休憩ね」
そして、小さな俺を、那月の大きな膝の上に、上向きで寝かせられる。
ぴたりと閉じられた那月の柔らかな太ももは、大きな谷間と化していた。俺は、その狭間に腰を滑り落とし、身体をVの字に曲げるようにして、那月の大きな太ももに座り込む。
小さな両脚を、彼女の大きな太ももに乗り上げるように座り、ヒートアップした身体全身に、素肌のぬくもりと柔らかさを感じる。
「那月……っ」
「えへへ。これだと、ちょうど椅子みたいで休めるでしょ」
休息の意味をまったく分かってない。
泡だらけの小さな身体を、大きな太ももの谷間で滑らせながら、なんとか体勢を整えようとしていると、那月が「そうだ」と上空から声を降らす。
「冷えちゃわないように、お湯入れておくね」
那月は、大きな両手を湯船に伸ばし、お湯をすくい上げると、俺が座り込む那月の腿の狭間へと、湯を落とす。
「ぅわ……っ」
那月おすすめの桜色の湯が、花の香をまといながら、小さな俺の身体を濡らした後、那月の内股の狭間に、小さな湯の泉を作り上げていく。
「どう? 源泉かけ流し~。君専用の、小さな温泉みたいでしょ」
上空を見上げれば、那月は、透き通る瞳を細め、得意げに笑われる。
「……どこにお湯、溜めてんだよ」
なんとかぽつりと呟いた声は、小さすぎて聴こえなかったらしい。
「今の内に、制服洗っちゃおう」と、那月が、上半身を動かし、背筋を伸ばす。反動で、柔らかな胸が、ぷるりと揺れるのを目の当たりにして、思わず、しばし見つめる。クソ。せめてもう少し俺がデカければ。わしづかみにでもしてやるのに。
ちらりと、視線を更におろしていく。
くびれたウエストに、美しい曲面を際立てるへそが、頭上に見える。
彼女の膝の上に乗せられているというのに、へそすら、辿り着くのが困難だ。
室内の蒸気に、太ももに溜められた湯、そして彼女の体温に浸された小さな身体が、熱欲を鎮めるわけがなく、俺はちらりと真横に目を向ける。
桜色の湯に、那月のぷくりと膨れた下腹部が、無防備に浸され、わずかに生えたアンダーヘアが、湯に揺れている。
ほんの数歩先のそこに、少しでも、この小さな身体で触れたら、彼女はどうなるのだろう。
と、そこまで考えたところで、ぐらりと、身体を預けていた膝が傾く。
「うわッ!?」
太ももの狭間に溜められたお湯は、傾斜に従い、下腹部近くの内股から膝先へと流れ、俺の小さな身体も押し流されていく。
「ちょッ、ヤバイ、流される!!」
小さな手と脚を、那月の膝先へと伸ばし、小さな身体で踏ん張っていると、上空に影が差し、「ん?」と見上げる。
「だッ!? うおッ」
物理的にもサイズ的にも大きな胸が、上空からこちらに迫ってくる。と気付いた次の瞬間には、もう、那月の巨大な胸に、上から覆いかぶされる。
「ふ、ぶぅうっ!」
恐ろしく柔らかで、暖かな、今の自分の何倍もある那月の胸に、顔も、腕も、腹も、脚も、熱を帯びた下腹部でさえも、プレスされる。
「んん、んーッ!!!」
全身に、桁違いの甘い刺激を受けながら、少しずつ、体内で酸素が不足していく。
小さな腕をもぞもぞと、わずかな隙間を求めて、文字通り、必死で動かす。
「お洗濯~、お洗濯~。わあ、制服、ちっちゃいねえ。って、──きゃぁぅんっ!?」
那月は、大きな胸を、ぶるん、と震わせて、上半身を僅かに起こす。
バスチェアに座りながら、上半身を膝に寄せるような体勢のまま、那月は、膝でぐったりと横たわる俺に声を上げる。
「わあ、何、何?! もぞもぞ動いたら、くすぐったいよお。びっくりした」
「……っ、何じゃねえよ。潰されるかと思ったっつーの」
息も絶え絶え言うが、那月は、むう、と頬を膨らませたままだ。
「私、そんなに重くないよお」
「いや、重いっつうか、デカいっつうか……。体格差、考えろよ」
思わずそう言えば、那月が、今度は、急に頬を赤く染め、手の甲を口元に当てる。
「デっ、デカいって、なにそれ、どこ見てるのっ」
那月が、慌てながらもう片方の手で、乳房を隠す。
「今更、何言ってんだよ。お互い、服も着てねえのに」
あと胸以外もデカい。
那月の膝に、熱い小さな身体を預けたまま言えば、那月が、口を尖らせて声を出す。
「だって、身体が小さいとあんまり見えないから、いいかなって思ったんだもん」
那月の大きな白い指先が、俺の小さな顔に伸びて、指の腹で頬を撫でられる。
俺は、その大きな指に、小さな手を添えて、指先の向こうに見える、巨大な那月を見上げて、睨む。
「お前はそうだろうけど、俺は違うだろ」
「え?」
那月が不思議そうに首をかしげ、濡れた髪先から、ぴちゃりと雫が落ちる。
「だから、俺にとって、今の那月は、すげー巨大な、ビルとかタワーみたいなサイズなわけであって……」
数秒間、那月が沈黙した後、ぐわっと赤面し、そして、膝に置いた小さな俺に顔を近づける。
「ままま、待ってよ、それじゃ、ずっと、私、すっごく大きな裸、見せちゃってたってこと!?」
「今、気付いたのかよ……。相手の視点に立てないタイプ?」
「相手が小っちゃくなっちゃうことなんて、初めてだもん。わかんないよ、そんなの」
那月が、顔を真っ赤にしたまま、そう言った後、大きな瞳をちらりと横に反らす。困ったように、眉をハの字にしてから、再び小さな俺と、目を合わす。頬がリンゴのように赤く染まっている。
「……、私とお風呂入ったって、絶対ないしょだからね」
恥じらいを覚えた彼女の、破壊力の高い表情に見惚れていると、大きく広げられた両手が、小さな俺へと伸びて来る。
「那……っ」
声を上げる間もなく、あっという間に、大きな両手が俺をすくい上げ、ゆっくりと持ち上げていく。
ぽたぽたと、那月の大きな指の隙間から、湯が零れ落ちる音が聴こえる。大きな両手に寝かせられた俺は、じっと、こちらを見つめる大きな那月を見上げる。
巨大な捕食者に見つかった獲物、というよりは、何かの間違いで、荘厳な別世界の者と対峙しているような気さえする。
大きな那月が、ふわりと笑みを浮かべる。
「じゃあ、今度こそ、洗ってあげるね」
泡とボディソープにまみれた大きな手が、俺を包み込んだ。
「ふぅぁぐッ、はぁっ、はぁッ」
ぬるぬるとした大きな指が、小さな身体にからみつく。大きな泡が、身体にまとわりついていく。
「那月、もうやめ、ッはぁ」
大きな那月の片手の上に寝かせられながら、声を出すも、那月はおかしそうに笑うばかりだ。
「なあに。恥ずかしいの? 君だって、私の裸見たんだから、おあいこでしょ。ちゃんと優しく洗ってあげるから文句言わないの」
「そういう問題じゃな、──ぅあぁあっ!」
那月の大きな人差し指が、脚の間を割って入り、ぞわりと身体が震えあがる。
大きな手のひらの上で、背を反らし、身体から泡が流れ落ちる。
那月は、大きな指先で泡をかき分け、俺の小さな下腹部に辿り着く。
ぷくりと硬度の増した陰茎を、大きな指の腹でゆっくりと押す。
「~ッ、ぅ」
思わず漏れた声を飲み込むように口をきつく閉じるが、那月は、指の動きを止めない。
泡に埋もれた陰茎の形を指先で探るかのように、大きな指の腹で、ゆっくりと円を描く。偶然ではなく、明らかに狙った動きだった。
高熱でぼやけていく目で、なんとか大きな彼女の瞳を見れば、恥ずかしさと僅かな悪戯めいた色を見せて、笑う。
「お風呂、気持ちいいね」
大きな人差し指が、指の腹で陰茎を押さえつけたまま、ぐりぐりと左右に揺らす。
那月の親指が、下方からぬるりと近づき、臀部と睾丸を持ち上げるように親指の腹でプレスされる。
「はぁっ、ぅあっ!」
陰茎を押さえる人差し指と、睾丸と臀部を支える親指が、互いに引き合うように近づき、小さな身体に柔らかな圧を加えられる。
「ハァッ、那月、これやばいッ、待っ、ぅああぁっ!!」
光が飛ぶ視界に、那月の大きな中指が映る。桜色の濡れた爪先は、目の前で止まることなく、俺の小さな口の中に入り込む。
「んんぐっ!!」
「ふふふ。大丈夫だよ。いっぱい気持ちよくなっていいよ。もっと見せて」
ぐりぃ、と下腹部を挟む二本の指の圧が増し、指が左右互い違いに、素早く動かされる。
「んぶふう─ッ!」
那月の大きな中指に、唾液を僅かに濡らして小さく叫ぶ。
小さな身体が、かつてない程に、小刻みに震え始める。自分が向かう先が、絶頂なのか絶命かすら分からなくなるほどだった。
「ぅう、ぁあぁああ──ッ!!」
大きな彼女の手のひらの上で、巨大な瞳に見守られながら、白い欲を小さく吐き出した。
*
「ハァ……」
巨大なプールのように広く深い浴槽の上で、半分ほどお湯を入れた透明のコップが、ぷかぷかと浮かぶ。その中で、体長八センチの俺は、膝を立てて座り込み、ため息をついた。
「どうしたの? のぼせちゃった? お水、足そうか?」
湯船につかりながら、大きな那月が、コップの中を覗き込みながら、声を上げる。
「いいよ、これ以上足したら、沈むし、俺、息できなくな……って、待て、足すな!!」
ぶくぶくと恐ろしい音を立て始めるコップの中で、慌てて立ち上がれば、那月の大きな指が差し出されるので、しがみつく。
那月の細く長い人差し指に、抱き枕のように身体を添わせれば、那月が、くすりと笑い、大きな爪先で、下腹部を突いてくるので、小さく睨む。
「これ以上、人の身体にMを叩き込むな」
「エム? そんなつもりじゃなかったんだけど……、そっかー。私が大きいとそうなっちゃうんだね」
自覚の足りない発言に、呆れていると、那月は、柔らかに笑い、小さな俺を見つめる。
「じゃあ、君が元の大きさに戻ったら、今度は普通にお風呂はいろっか」
「普通にって……」
心臓が騒ぎそうになるのを、必死で隠しながら、言葉を紡ぐ。
「一緒に風呂入るような奴、いるんだろ」
「え? 誰それ」
「服、脱がしたりするって言ってたじゃん」
人差し指にしがみつきながら言えば、那月がしばし沈黙した後、笑いだす。
「あれは、幼稚園に通ってる従妹の話だよ。実家にいた頃、時々、面倒見てたの」
「フーン……。そうなんだ」
納得していると、身体を預けていた人差し指が上昇し、小さな身体が持ち上げられていく。
ぽたぽたと、小さな雫が大きな湯船に落ちていく。
湯に濡れた髪を頬にはりつけた、大きな那月が、穏やかな笑みを浮かべて見つめている。
人差し指の上の俺と、那月の顔。すこしずつ、距離が縮まる。それは止まることなく、那月は、ついばむように、指に乗せた俺に、大きなキスをした。
*
タオルハンカチが敷かれたローテーブルの上で、赤いビー玉を蹴っ飛ばしていると、那月に「あぶない」と怒られた。
「もっと小さくなったらどうするの」
「それはさすがに困るな……」
テーブルの上に立ち、赤く光るビー玉を睨む。
明日の朝、もう一度、公園に行くしかないか。自力で行けないのが、辛いところだ。
ふう、とため息をついて、ちらりと視線を、大きな彼女に戻す。
いそいそと、一人分の布団と、その枕元に、小さな俺用のお手製簡易ベッドを、ハンカチやらタオルやらで作っている。
「早く普通のお布団で眠れるようになるといいね」
那月が、どこか楽しそうに準備をしながら、さらりとそんなことを言うので、咽そうになる。
畜生。絶対、一刻も早く、元に戻ってやる。
その結果か否か、明け方には、無事、熟睡する那月の横で、元の大きさに戻るわけだが、それはまた、別の話である。