こんにちは、Feryquitousです。
私の3rdアルバム「irui」の設定全文と、各曲にまつわるストーリー全文を
数回に分けて公開していこうと思います。
お時間があれば曲と一緒ゆっくりと読んでみて下さい。
http://irui.diverse.jp/
【Irui】
■世界に関して
・凡そ南アメリカほどの「地上」が続く世界、人類は地に足つけて生きている。この世界の歴史は、記録上だと1100年ほど続いている。
「世界」は水中に存在しており、人々の住む地上から凡そ3km上空に、主に未知の透過性物質で構成された「窓」と呼ばれる壁が存在している。
水中には常に光子が流れており、天井から窓へ向かって降り注いでいる。降り注ぐ光子が止むとそれは「夜」とされ、人々の時間感覚バロメータとなっている。
・窓の外側へ行く手段は、北方の「窓の端」にある「終点」と呼ばれる巨大な地下空間から海面をくぐり抜ける必要がある。
しかし、この地下空間を経由し窓の外に出ると、如何なる手段を持ったとしても帰還は極めて困難である。
通信手段を持ってすれば、窓の外に出た人間との交信は可能だが、窓から大凡2km程離れると光力素の反応が消滅し、通信は途絶える。
尚、これまでこれを超えて通信、及び帰還した者はいないとされる。
・天井を見上げると窓によって遮蔽された水中を見る事ができる。
窓の付近まで登れば、窓の保護のために作られた重力均一化装置(塔と呼ばれる)にこびり付いた珊瑚や、その付近に人類とは異なる生物たちの死骸が見れる。
・1日の長さは約28時間である。
陸地は広大であり、川などは存在するが海というものが無い。いくつかの国は存在するが多数というわけではなく、凡そ5国
(国境などは無く、連邦のような統合をされている為、大きく見れば国は1つ。)なお、国の間の戦争も起こっていない。
だが、国と国との間に独立された文化がそれぞれ根付いており、隣国、他国を渡るにはそれなりに裕福な環境がなければならなかった為、
ほとんどの人々は他の国について知らない。
・この5国の大きさはかなり極端な差があり、大陸の3割程度しか土地を使っていない。
国と差別されていないこの膨大な土地に住まう人々は、大凡がもともと何処かの国にいた人々であるが、
何かが原因で人権を剥奪され、国から人民として見なされなくなった者である。(スラムのような)
・地形には限界があり、陸地の端まで行くと放射線状に下降した窓の壁に突き当たる。窓の壁の向こうは水中である。
陸地の端に向かうにつれ、重力の値が変化する。通常の人間は生身で端に近づく事は出来ず、
生身の場合身体器官が破裂して死んでしまう。その為、段階別に設けられた重力レベルによって侵入の許可を国から得る必要がある。
尚、侵入には合金で覆われた強固な輸送船(形としては車に近い)を使用する。
・先代からの遺跡として残されているのが、古代の文字を所々に散りばめた「エルア」と呼ばれる遺跡群である。
これらは各国の標高が高い山の上層部に存在し、物質はやはり解読の難しい未知の技術により構成されるもので、
年に数回起こる微弱な地震に反応し、その回路を発光させる。発光の原理は不明、エルア自体に触れることは出来るが、
地方によって「エルアに触れると喉が潰される」という言い伝えがある。同時に、ノイズのような音を放つが、これらの持つ意味は理解されていない。
■叡智に関して
・地上の人々はごく一般的な感情と個性を持っており、人間のそれと言える生活を営んでいる。
蒸気と火の他に、「光力素」と呼ばれるエネルギーを活用している(ソーラー技術と酷似)
・光力素の発展は著しく、これを利用した機械が多数存在する。「窓」の一部を元材料とし、
これを模して作られた金属(正確には粘土と金属の合金の様な素材)を用いて生活に取り込んでいる。
(窓の物質を似せて作られた物質を使用している機械が殆どで、窓自体の素材を使用している機械はごく少数。)
模造品は完全なコピーではない為、窓の代用として天蓋に貼り付けた場合、強すぎる光力素によって32日経つと崩壊してしまう。
当然、窓をサンプルとして破壊するにはリスクが大きいため、この資源は貴重品として扱われる。
窓を構成する物質の採取は「端」で行われ、人型の機械一体が稼働するために必要な量は「21g」である。
・この「純正の窓」を使用した機械はいわゆる高級品、高性能品として扱われる。この素材を用いた場合、
機械は「使用者を認識する」「視覚を持つ様になる」「使用者の需要を理解する」といったある種の知性を備える。
その為、多様性のある人型の機械に使用され、これ以外の使用は法で制限されている。
仮に違法で人型の機械以外の人工物に純正の素材を適用すると、7日間で機械は液体状に変化し、強烈な毒素を放つ。
この毒素の致死量は限りなく微小であり、通常の人間は一呼吸しただけで数分後に絶命する。
・窓を使用できる人型機械の定義は「光を吸収する物質を頭部に備えている事」「振動板を内蔵した発音部位がある事」「二手、二足である事」が挙げられる。
原因は不明だが、この条件を満たしていないと適応されない。
窓を使用した人型機械は非常に有益な働きをするが、「地震」に弱く、微弱な地震で一時的に不良となる場合が多い。
この不良が重なり、使用不可と判断された場合、国に回収される仕組みとなっている。尚、その後の処理がどう為されて居るのかは国家機密である。
・「窓」の厚さは3mほど、地上の人類の技術では製造する事ができない未知の技術で出来上がっており、
人類は圧迫し続ける水からこれを保護するための装置を随所に配置している。この窓によって守られた空間に、人々の居住空間がある。
・窓は硬く、並みの兵器や物理的打撃では微動だにしないが、「地震」によって崩落する可能性がある。
・窓が倒壊すると、例えそれが一箇所だったとしても連鎖的に周囲が倒壊し、寛大な被害を被る。
同じ物質による修復が不可能な為、倒壊によって流れ込む水の逃げ場として「喉」までの道を確保しなければならないが、これによって国の一部が破壊され尽くす規模の大災害になる。
・過去、1100年の歴史の中で窓が倒壊されたという記録は8回、つまり8箇所の「滝」が存在する。
滝は窓から水が落ちる形で構成されており、時間経過のために滝の入り口、穴の形は全て真円に近い丸型をしている。滝発生時に下方の地形はほぼ陥没状態になるため、大きな湖となる。
・最終の出口が喉に到達する様に出来ているため、大陸の中心に向かう大きな川が8つ存在する。
■喉と禊
・陸地の中央には「喉」と呼ばれる穴が存在している。穴の大きさは直径約50km、侵入口から3kmほどの深さで重力値が変化しており、
陸地の技術力での侵入は5kmまでが限界である。これを越して侵入した場合、例え強装甲の機械だったとしても手のひらに収まる大きさまで圧縮される。
・「喉」の深さを把握している者はいない。年に一度、この穴に「禊」と呼ばれる生贄を捧げなくてはならず、
大陸中にはこの禊となる宿命の少数民族が存在している。禊を捧げなかった場合、その年の始まりには大きな地震が起こり、窓の一部が倒壊するとされている。
・禊の生け贄が捧げられ始めたのは、人類が地底での生活を始めてから二百年ほど経った後であるとされる。
・この民族は禊となるために生きている。つまり死ぬ為に生きているという事になる為、一般人のような生活が与えられない。
禊は、国から必要最低限の生活と、感情を殺ぎ取るように教育され、13歳を過ぎると禊としての役割を果たせるようになり、変声期を迎え声が変わり切ると禊としての役割が果たせなくなる。
・民族は極めて少数の子供だけで成り立っている。だが、それぞれ親の情報は一切教えられず、13年間をひたすら隔離された空間の中で生きる。
・その年の節目に、適した年齢と時間の禊はこれまでの生活から切り離され、儀式のために用意された塚に入る。
ここで3日間断食をされ、4日目に塚から出て、喉の周辺にある7つの祠に7日かけて移動する。祠で行われるのは「潔」と呼ばれる儀式とされているが、内容は国家機密となる。
7日を過ぎると、その年の禊は「誰にも合うことが許されなくなる。」その後、喉へと落ちる事で禊としての役割は終わる。
この儀式は「隔世への適応化」とされているが、詳細は不明。
-Songs Story-
■1.命(Two)
・またこの音か。
静寂、暗闇の中でただ聞こえる自らの音。
鼓動の音だ。
毎日のように行われるこの習慣、ただ目を覚ましモノを食らうだけの命。
少年は自分自身がそこに居るかどうかすらも分からぬまま、ただひたすらに生きていた。
-世界の中心に空いた巨大な穴と、これを覆うようにして広がる天井と海。
この世界の中心近く、厚く白い壁で造られた奇妙な建物の中で、この禊と呼ばれる部族は
一生を過ごす。
この少年もまたその禊の一人であり、自らの運命を受け入れていたようである。
お前はこのまま役目を終えて消える、ただそれだけ伝えられてきた。
自分は死すべき為に生きている。これでいい。それ以外何もわからない。
最低限教えられた意思疎通の手段、この言葉もほとんど役に立っていない。
これでいい。
少年はある日、壁の中では聞いた事の無かった音と声を聞いた。
この声は震えているようで、少年の中に疑問を残した。まるで己の中から聞こえているようだった。
鼓膜を揺らしているのは無音の中に響くむなしい物音だけにも関わらず、はっきりと聞こえる声。
これはなんだ。
少年は疑問を抱いてしまった。自分の事、そしてこの声の主に。
彼は本能から初めて湧き出すその好奇心と恐怖に、自然と体を動かしていた。
昼か夜かもわからぬその白く高い壁を這い、抜け出した。
その光景はとても恐ろしく、今まで自分がとらえていた世界とは比較にならない広大な土地が目前に広がり、
激しいめまいと焦燥感が少年を包んでいく。
だか、これを後押しするかのように聞こえる声。
「君の目で、耳で、感じた事を、僕へと届けて欲しい」この言葉が何度も聞こえている。
少年は走り出した。
自分の輪郭をつかむ為に、声の主に会うために。
■2.働き者の国 / 優しい街(Kaldin)
少年には名前が無かった。だが、抜け出した先で出会った人々の中で自分の名前を呼ばれる事を欲し、
自身を支配するようになる。少年は「イルイ」と名乗る様になる。
「声」はイルイに、「君の目で、耳で、感じた事を、僕へと届けて欲しい」と言う。
イルイには意味はわからなかったが、1日に1回ほど聞こえるこの声を聞くと、使命感に似た感情が沸き起こり、彼の体を突き動かす。
どこへ行けば良いか理解こそしていなかったものの、体は不思議と動くようになり、気付けば走り出す。
まず始めに、イルイは1つ目の国に向かう事になる。最低限の言語は禊としての生活の中でも教育されていた為、人と会話は出来るようだった。
最初の国は、喉付近の施設から25日かかった。その間、イルイは声の向くままに只管に走り続けたが、
生きるために何が必要かを本能で理解していたイルイにとって、疲労、食用などはそれほど大きな問題にはならなかった。
当然体の限界はあるものの、道中の様々な自然によって助けられていた部分が大きい。
優しい人々が穏やかに暮らす国であった。最低限の暮らしを強いられていたイルイにとって、温もりのある雰囲気はとても新鮮だった。
国は決して裕福ではなかったが、人々は自身の生活に疑いを持たず、只管に生きる為働いていた。
女子供も自分が何が出来るかをよく考えて、積極的に大人たちに協力していた。
訪れた街中では、イルイと初めて触れる人しかいなくとも、どの人も優しくしてくれた。
寝床がない、お金もない、そもそも知識すらも無いこんな状況の自分を、無条件で生かそうとしてくれた人々がそこにはいた。
誰ともいえぬ人々が、次々に、まるで今まで自分が近くにいたかのように、垣根なく接してくれた。
イルイは働くという概念を知った。人々の笑い合い、協力し合う姿を見て、イルイは自分の輪郭を徐々に掴みつつあった。
イルイは優しさに触れる。
■3.社会の国 / 孤独と雑光(Westanie)
イルイは初めて知った笑顔の作り方を忘れないままに、28日かけて二つ目の国に向かう。
この国では、他人が他人を拒否する、会話のない国であった。一つ一つの建物から取られる異常な距離、
道はあるものの建屋を見つけるのも一苦労だった。
2日ほど歩いた先、初めて人間と出会う。人影は自分を見るなり、おぼついた足取りで逃げようとするが、暫くこちらを見つめている。
人影はこちらに向かって来た。異国の者と見なされたイルイは、そこで一人の老婆に出会う。
イルイは老婆により、歓迎を受けた。何者かと問われた時に、なんと答えればいいか分からなかったが「会わなければいけない」という理由だけ話した。
老婆はその先を求めず、ただもてなしてくれた。
3日ほど経ち、屋根を借りている最中に老婆から「わかり合うことの難しさ」を語られる。
この国では代表者たちの口論から起こる政治の縺れにより、貧困からくる人の邪悪が国を包んでいき、
最終的にはこの「人と会わない」という政策がとられたらしかった。それが例え家族であっても、である。
この国の領土は比較的広く、人口に対して与えられる「無人の距離」を保つには十分だった。
老婆は優しく、とても暖かかったが、国の人間同士での直接の会話は頑なに拒んでいた。
この国では、会話の代わりに文通を通してコミュニケーションを、果ては政治まで行っているらしかった。
老婆には身寄りがなく、政策が行われてからは家族とも離れ、数年人間と直接の会話をしていない、という事だった。
それでも、老婆はイルイには優しかった。「あなたの目には人を疑おうとする淀みが無い」多くの目を見て来た老眼は、
多くは語らないイルイのことを見抜いているようにも見えた。「私に残されているのは沢山の言葉と、虚しさだけだった。
何年も人と話していなかったけど、あなたに会えて、家族が戻って来たような気持ちよ。少しでも長くここにいて欲しいけれど、それは出来ないのは分かっている」と言った。
老婆は優しい表情であったが、声は震えていた。
他人との壁には多少の理解のあったイルイだったが、この国の人々の話をする老婆を見て、今まで感じたことのない心臓の重さを感じるようになった。
数日経って、僕はそろそろ行くよ、お世話になりました、と感謝を告げ、イルイら次の国を目指すことにした。
数日間とはいえ、暖かさがいっぱいだったその家を出る時、やはり心臓のあたりにのしかかる重みを感じた。
歩き出す背に、土を擦る音と、老婆の悲しい声が聞こえた気がした。
イルイは悲しみに触れる。
■Ex1.滝の丘 / 夢見る人(On the journey)
老婆のいる家を出て、国の国境を超えてから5日、国境線が引かれていない地域で小さな村を見つける。
ここでは、前2国で犯罪を犯したものが追放され、他国からの入国を拒まれた者たちが集う場所との事だった。
イルイは自身よりだいぶ背が高い青年と出会う。青年は体にいくつもの傷があり、痛々しかった。
だが、気さくな性格ではあった。「お前も追いやられた身か。」と問われる。違うと答えた。目指して、会う為に走っていると。
青年は笑った。それは何だと再び問われたが、自身にもよく分かっていない為、それも正直に答えた。
青年はひどくイルイを気に入り、自分達の住居へ招き入れた。感覚が鋭いイルイは、張り詰めた気の様なものを感じながら、狭い街路をすり抜けながら青年について行く。
青年はこう言う。「旅の者を招き入れるのは俺達が出来る罪滅ぼしの様なもの。」いくつも傷をつけた笑顔から悪意は感じられない。
街じゃ見られないとっておきを見せてやると、宿を借りた初日の夜に、車輪のついた機械に乗せられて、青年とイルイは荒野を走る。
一つ話を終えた辺りで、木々が茂った先を抜けた丘にたどり着く。
イルイが見たのは、窓からから溢れる光が絹の様に降り注ぐ姿だった。自分の目に写っているものがなんなのか理解はしていなかったが、
この光を見ていると何処か安らかな気持ちになった。
青年は「これは光力素が死んだ姿。俺達も、いずれこの光になって夜を照らす」と言う。
彼等なりの死への解釈を一頻り聞き、自分がこれまで何のために生きて来たのかをもう一度思い返すが、分からない。
なぜ走っているのか、なぜ会いたいのか分からないが、ただ嘘ではないことだけは分かっていた。
イルイはまた笑っていた。なぜか、とても居心地が良かった。青年の瞳に映ったその光達は、イルイの見ている色とは違っていた。
それから数日、その青年に世話になった。色々な話を聞いた、
滝の麓にある宝石の話、歌を歌う石像の話、夢を見る塔の話。全て本当かどうか定かではなかったが、それらを聞いている間は、胸の中に溢れる水の様な思いが溜まっていった。
イルイは青年に礼をし、別れを告げ走り出す。青年は笑っていた。
イルイは喜びに触れる。
次回こ更新ではお話の続きを公開していきます。
Feryquitous