スク水戦闘員を殲滅せよ 13話
Added 2020-04-30 16:26:29 +0000 UTC「ハァ……ハァ……」 ハルキの顔の傍に顔を埋め、弱く、乱れた呼吸を続ける彼女。 ちょうど彼女の蒸れたうなじが、ハルキの口と鼻に当たっている。 「はぁ……はぁ……」 ハルキの呼吸も当然荒い。 その為、彼の吐息は、彼女のうなじを撫でる形になってしまう。 「ハァ…ハァ…んふっ……くすぐったいよ」 彼女は相変わらず辛そうに呼吸しながらも、顔を埋めたままピクリと笑う。 同時に迎えた絶頂に、二人は力の全てを使い果たしたのだ。 重なり合った二人は、今となっては身体を泥のように溶かせ、弛緩させている。 彼女の膣に挿入されたままの肉棒。 もはやそれを抜くことすらも億劫だった。 そして、彼女は再び言った。 相変わらず顔を埋めたままーー その口調は、まるで家に帰るくらいの気軽なものでーー 「ハァ…….ハァ……じゃあ、私ーー ーーそろそろ逝くね?」 唐突に、別れを告げたのだった。 こんな蒸し風呂のような空間の中、ましてや他のスク水少女達は皆ことごとく息絶えている中で、彼女はあんなに激しい運動をしたのだ。 いつ果ててもおかしくはないだろう。 分かっていたこととは言えーー それでもハルキは切なくなる。 「……ちょっと待てよ。 アンタは……アンタは死なないでくれよ。」 駄々をこねるかのような彼の声。 すると彼女は心底おかしそうに、コロコロと可愛らしく笑った。 「フフッ、ホント……変な人だね、キミは。」 しかしそんな笑い声もどこか儚げで、却って切なさを感じさせるものであった。 「キミにとって、私は敵なんだよ? 私は……さっきまで、君の命を奪おうとしてた敵、なんだよ?」 もちろん、それは紛れもない事実だ。 恐らく、もしもこういう状況になっていなければーー ハルキにとって彼女は、他の少女達と何ら変わりのない、ただの一人のスク水戦闘員。 彼はきっと、向かってきた彼女を、何の気もかける事なく打ち倒していただろう。 どうやって打ち倒すかも気に掛けなかったはずだ。 彼女の可愛らしい顔面を、容赦なくぶん殴っていたかもしれない。 そして彼女は鼻血を撒き散らしながら、それでも両手で顔面を覆い尽くし、殴られた衝撃でタップダンスを踊りながら最後には両膝を着いて、両手で覆い隠した顔面を天に見せつけるようにして天井を仰ぐのだ。 もしくはーー 彼女の引き締まったお腹を、凄まじい脚力で蹴り抜いていたかもしれない。 そして彼女の顔は、引き締まった厳しい表情から苦悶に満ちた可憐な表情へとーーまるでオーロラのようにゆっくりとその色を移り変えーー ゆっくりと両腕でお腹を覆い尽くしーー ゆっくりと膝から崩れ落ちーー 最後には お腹を抱え込みながら、まるで土下座をするかのように、正座で平伏するのだ。 いずれにせよーー もしもーー もしも彼女の最期がそれらであったなら…… きっとハルキはーー そんな彼女の姿に目もくれていなかったであろう。 顔面を覆う両手の隙間から鼻血を吹き上げ、天上の神を仰ぐように膝立ちになる彼女の背中など目もくれず、次に襲い掛かるスク水戦闘員を迎え撃っていた事だろう。 自らの体を抱きしめるようにお腹を抱え込み、両足をピッタリくっつけて折り畳み、まるで「ごめんなさい」と詫びるように、亀のように蹲る彼女を背に、ハルキは別のスク水戦闘員に襲い掛かっていた事だろう。 でも、今となっては違う。 当然今も、ハルキにとって、女スパイ養成学校の少女戦闘員達は父親の仇だ。 やられて当然の奴らだと今も思っている。 でもーー 「でも……アンタは他の奴らとは違う。 俺、どうしてもアンタが悪い奴だとは思えない。」 ハルキにとって、唯一彼女だけは、他の有象無象のスク水戦闘員達とは違って見えるのだ。 彼の訴えに、彼女は沈めていた頭を力無くもたげていく。 そして、再びハルキの目の前に、彼女の顔が現れた。 「どうだろうね……」 暗闇に目が慣れた今、ぼんやりとそこに浮かび上がったものはーー 「一緒だよ。 ……私も、他の仲間達と……一緒。」 どこか残念そうに息を吐く、彼女の微笑みだった。 彼女のその言葉、彼女のその表情。 ハルキにはその意味が分からずーー ただただ目の前に浮かぶ儚げな彼女の笑みを、間抜けた顔で見守ることしかできない。 「もう、そんな顔しないでよ……」 まるで寂しがり屋な彼氏を慰めるように、彼女が困り果てた顔で笑う。 「私、人生の最期に……キミと出会えて良かったよ。 私の事を……初めて可愛いって褒めてくれた人。」 まるで別れ際の言葉。 「ねえ……最期にさ。」 彼女が告げる、最期のお願い。 「キス……しようよ。」 ハルキは直感した。 彼女はもう……助からない、と。 「待て……もう少し待てよっ。 そろそろ他の奴らがコイツらをどかしてくれるはずだ。 それでアンタはここで死んだフリをしとくんだ。」 それでも彼はそんな現実、受け入れたくはなかった。 「んで俺は動けるようになったらその瞬間他の連中を速攻でぶちのめす。 アンタの仲間だけど、この際別に良いよな? 他の奴らが全滅したらアンタはすぐにどこかに隠れろーー」 早口でこの後の計画をまくし立てるハルキ。 それはまるで、彼女に諦めさせまいとしているようにも見えた。 「……もう、いいよ。」 ハルキが必死で言葉を続ける中、彼女はそうやって軽く笑みを浮かべる。 「ーーそしたら隙を見てこの場を離れるんだ。 いいか、誰にも見つからないようにだぞ?」 それでも彼の言葉は止まらない。 「その後はどこかで合流しよう。 アンタを見かけたら名前を呼ぶ……いや、まあ、俺の名前を言えば分かるだろ。 そしてその後は黒崎のオッサンに匿ってもらおう。 大丈夫。もし追手が来たとしても俺が追い払ってやる。」 彼女はそんなハルキをじっと見つめている。 「あとは……そ、そうだ! ウチに紗羅って奴がいるんだが、そいつはコンピュータの扱いにも長けているんだ。 多分だけど……アイツの手にかかればアンタの戸籍を偽造する事くらい出来るんじゃないか? 偽名とか考えなくちゃな…… ……どうしよ。下の名前はそのまま使っても良いかもな……アンタの、下の名前……」 だんだんと……ハルキは言葉を詰まらせていく。 「ああ!あとあれだ! 学校にも通おう!俺の学校に来いよ! きっとアンタが来ればすぐに男子からモテモテになると思うぜ! そんでもって体力もあるから部活動とかやれば……学校で表彰されたりとかもするかもな! あのハゲた校長に堂々と名前を呼ばれるんだよ! 賞状をもらいながら……こう……何年何組の……えっと……あれ?」 そこで、彼は言葉を見失った。 そして それを見計ったかのようにーー 「……ありがとね。」 彼女は優しく、微笑んだ。 そんな彼女の一言に、ハルキは何も言えずーー ーーただ固まった。 彼女のその言葉は、穏やかで優しさがこもる反面、まるで変えられない運命を突きつけるかのような、有無を言わせぬ響きがあったのだ。 「待てよ……」 しかし、それでもハルキは呼び止める。 なぜなら、彼は肝心な事を聞きそびれていたからだ。 彼女は握りっぱなしだったハルキの手をギュッとさらに握り締める。 「俺、そういえばアンタのなまーー!」 そこで途切れた。 「……んッ!?」 言いかけた言葉を、彼女が遮ったのだ。 彼のその口を塞ぐ事で。 柔らかく、熱いーー ーー彼女の唇で。 「ーーーーッ。」 ハルキの頭の中は真っ白になりーー 二人のもとに、長い、長い静寂が訪れる。 それは、さっき彼女としたような、身体中から欲情が迸るようなディープキスではない。 ただ唇と唇をくっつけただけの、たったそれだけのキスでありーー しかしそれは彼の心身全てに安らぎを与えるような、そんなプラトニックな愛だった。 やがて ハルキの手を握り締めていた彼女の手がーー ーー力無く開いた。 気付けばキスというよりかはーー ーー彼女は唇を、ただハルキの口の上に置いているだけになっており…… 「…………?」 彼はもしや?といった様子で、握っていた彼女の手を離す。 ずっと特殊素材の黒手袋と密着していた彼の掌と指の付け根はすっかり熱を帯びていた。 蒸し暑いこの空間にも関わらず、彼女の手から解放された途端、爽快な涼しさを感じられた。 恐る恐るーー 彼女の顔に手を近づける…… ハルキはまだ信じられないーー その事実を。 だって、いまだ触れあっている彼女の唇にはまだ熱がうっすらと感じられるから。 しかし 彼女の口から優しく吹き込まれていたあの熱い吐息は、今はすでに止んでいる。 その事がーー 彼女が力尽きたという可能性に、現実味を帯びさせていった。 ハルキは彼女の頬に、指先を近づける。 彼女の皮膚を覆う蒸気は、まるで実体を持っているかのように彼の指先を包み込んだ。 それでもその先に指を進めるとーー ぬちゃり と艶かしい彼女の肌に、触れた。 彼女の頬は、蒸し暑い汗に浸され、触れた彼のその指先をそぼ濡らす。 「おい……っ」 そこでハルキは一気に掌を、彼女の頬にあてがった。 べちゃり と生々しい感触。 しかしそんな事など、今の彼にとってはどうでもいい。 「おいッ……返事をしろ!」 彼女の顔を持ち上げ、ゆさゆさと揺らすも…… …………。 しかし、何も返事はなく…… そこにあるのは、彼女の相変わらず美しい、安らかに眠る顔。 「う、嘘だろ……?」 ハルキが上擦った声で呟いた。 お互いの初めてを捧げあった相手。 「俺……よく考えたらアンタの名前すらまだ知らなかったのに……」 そんな相手の名前すら、彼は聞きそびれてしまったのだ。 たった今、彼の中でかけがえのない大切な存在となった彼女はーー たった今、他の少女達と同様、名前も知らないスク水戦闘員の死体へと変わり果てたのだった…… 彼の心はやるせない悔しさで満たされた。 そしてその後に彼の心に訪れたのはーー 魂が抜けていくような悲しいまでの喪失感。 そして、彼女を失ったその事実が、ハルキの脳を否が応でも理解させたその瞬間ーー この灼熱の空間が、何の感情も持たない単純な地獄と化した。 ーー暑い ーー蒸し暑い ーー暑苦しい ポカリと開いた心に残されたのは、単純な物理的苦しみ。 「はぁ……はぁ…………はぁ………………」 彼女は蜃気楼だったのかーー この蒸し暑い空間の中に、今はハルキだけがポツンと一人取り残されており、そんなドライで冷たい現実は、彼の呼吸を次第に弱めていった。 ーー苦しい ーー苦しい ーー苦しい そこに残った苦しみだけが、追い討ちをかけるように、一気に彼に押し寄せた。 「はぁ…………………はぁ……………………… は………………………は………」 やがて 徐々に虫の息になっていくハルキ。 そんな彼の瞳は徐々に虚になっていくとーー 彼女の頭を優しく抱きかかえながら…… 「……………………。」 静かに意識を手放した。
Comments
谢谢你!我现在起投稿新作
ぶんちゃん
2020-05-02 14:29:36 +0000 UTC加油!
战死的女武神
2020-05-02 14:22:05 +0000 UTC