SakeTami
ぶんちゃん
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スク水戦闘員を殲滅せよ 5話

ハルキはあの後たっぷりと数学教師に叱られて、やっとの思いで帰された。 「はあ……今日は帰ったらすぐ寝よ。」 今日はいろいろありすぎた…と重い足取りで 昇降口に辿り着くと。 そこには… 「…やっぱりいた。」 案の定紗羅が待っていた。 「…お疲れ様」 彼女は優しくハルキに微笑むと、肩を並べて同じ方向に歩き出したーーー 外に出ると、辺りはもう薄暗くなっており、空を見上げると薄らとした満月が浮かび上がっていた。 「………。」 「………。」 紗羅はともかく、ハルキはさっきのことがあったため、気まずくて何も話しかけれない。 二人の様子、仕草もどこかぎこちない。 しばらくの沈黙…。 その沈黙を破るように紗羅が口を開いた。 「ねえ!…今からデートしない?」 「…はぁ?」 ハルキは思わず変な声が出た。 「え?…って今からって?」 あまりの唐突な提案に、ハルキはついていけなかったが、それでも紗羅は構わずに続けた。 「今日くらいは遅くなっても大丈夫でしょ! お互い両想いってことが分かった記念にどこかパーっと遊びに行きましょう!」 さらに強引に手を引かれ、ハルキはそれに任せるしか無かった。 結局ーーー まずはどこかで食事をしようと言うことになり、駅前の栄えた場所に出ることにした。 その道中。 「ねえ、ハル。結局…黒崎さんの言ってたスパイ養成学校ってなんだったんだろうねー。」 紗羅がまた唐突に尋ねてきた。 「え。あ、ああ…どうせおっさんの妄想話だろ?」 「そうだよね…あの人からその話聞いたときは… なんか…こう言っちゃ申し訳ないけど… ちょっとこの人ヤバいなって思っちゃった…。」 彼女はちょっと引きつったような顔で笑っていた。 うわー…彼女ドン引きだわ… ハルキは黒崎を少し哀れに感じ、ご愁傷様と心の中で呟いた。 しかし… 今ハルキが彼女に言った事。 これは嘘だーーー 実はハルキの中で、スパイ養成学校の存在はかすかに現実味を帯びてきている。 これは黒崎から聞いた話から繋がった事だ。 そもそもなぜ黒崎がスパイ養成学校の存在を探っているかというと、以前とある企業の社長と面談した際、隣に一人の年若い女性が居たという。その女性は名を「ナナ」と言うフリーの女スパイであるという。 噂によると、女スパイを養成する学校があり、その学校を卒業すると、その卒業生はその後フリーで活動を始めるという。 そして彼女こそがその学校の卒業生であるという。 ハルキはその話を聞いたとき、かすかな記憶が蘇った。 父親を殺した女スパイ。 名は確かに「ナナ」と言った。 情報はそれだけだ。 ただの思い違いかもしれない。 同名の人物かもしれないし、なんと言ってもスパイである。 あの時の名前はただのコードネームかもしれないし、改名してるかもしれない。 しかし、年格好を聞くとあの時から遡れば辻褄が合う。 年齢は20歳前後だったそうだ。 もしかしたらーーー そんな思いがハルキの中でその話の信憑性を高めた。 勘違いでも良い… 思い違いでも良い… ただーーー 父親を殺した犯人を突き止める。 ただ…… ふと、紗羅のあの時の涙が思い浮かんだ。 「……ハル?」 「………ッ!」 紗羅の声でハルキは我に帰った。 見ると彼女が心配そうに顔を覗き込んでいる。 彼女の顔は月明かりに照らされており、そんな顔でさえも儚げに思えてくる。 「ハル…大丈夫?何かすごく怖い顔してたよ?」 紗羅が尚も心配そうに尋ねてきた。 「あ、ああ。…大丈夫だ。何でもないよ…」 彼は頭の中を振り払うと、ーーーこのままじゃダメだ。と心の中を落ち着かせる。 彼女はハルキのことを何でも知っている。 嘘をついてもすぐにバレてしまう。 父親を殺した犯人とスパイ養成学校が結びついた今、この件だけは紗羅に知られるわけには行かない。 スパイ養成学校のことを探っている事を知られると、彼女は絶対にこの件に首を突っ込むだろう。 いつものようにーーー ーーーハルが心配だから。と言って。 黒崎がハルキに、全校生徒の調査を依頼したのも、ハルキ達が入学して以降、そのスパイ養成学校の構成員が侵入したかもしれないという情報からだった。 ただの思い違いかもしれない… 思い違いかもしれないが… ーーー紗羅のやつを、危険に晒すわけにはいかねぇんだ。 だから彼は嘘をつく。 「ああ…何かあのおっさんも意外と子供っぽいところがあんだな〜って思ってよ。 あんな漫画みたいな噂信じるなんてよ!」 彼は黒崎のことを思い出すように空を見上げる。 もうすっかり暗くなった空に光る満月には、今まさに雲が掛かろうとしているのが見えた。 ーーー少し演技臭くなったか? 「な?お前もそう思わね?」 と、少し心配になって彼女の顔色を伺った時。 「…………うん。 私もそう思うよ。」 月明かりが消え、 彼女の表情はよく見えなかった。 ーーー あの後、ハルキ達は夜遅くまで出歩いた。 ファミリーレストランで食事をした後は、 ゲームセンター 買い物 公園 と言っても、ハルキはほとんど振り回されたと言っていい。 その日の紗羅はいつも以上にはしゃいだ様子で、こんな夜遊びをしていることも普段の真面目な彼女からは想像もつかない。 静かな公園のベンチで二人肩を並べて座っていると、また紗羅が唐突にこんな事を尋ねた。 「ねえ…ハル。 あたしの事、いつから好きだった?」 「覚えてねぇよ。んな事。」 「ふーん…。」 彼女は不満そうな顔で頬を膨らます。 「逆にお前はいつから好きだったんだよ。」 半ば誤魔化すようにハルキが尋ね返す? 「覚えてないよ。そんな事。」 こいつ!っと紗羅の方を見遣ると、彼女は意地悪そうにニッと横目で笑った。 ただハルキには分からなかった。 紗羅はハルキと出会って、何かきっかけがあったわけでもなく、最初からハルキに世話を焼いた。 理由を聞くとおそらく、アンタがほっとけないから、とかそんな事を言うのだろうが、本当にそれだけか? そんな事を考えていると、紗羅は急に真剣な口ぶりで小さくこう言った。 「ねえ…こんなに恋人らしいことしてるのに… やっぱり恋人にはならないの?」 ハルキはまたか、と思いながらも自分の決意を改めて見せる。 「…紗羅。全て終わってからだ。 全て終わったらまた改めて俺の気持ちを伝える…。 だから…それまでは待ってくれ。」 しかし紗羅はそれを聞くと、身体ごとハルキの方に向き直った。 「でも…その時にはもう、戻れないかもしれないよ? この関係は、終わってるかもしれないんだよ? ハル………どうしても気持ちは変わらないの? 仇討ちなんて絶対に間違ってる。 組織を追う事なんて……お願い。 ……もうやめて。」 月明かりのせいか。 今は彼女の表情が鮮明に、よく見える。 切なく、悲痛に、懇願するように、訴えかけるように。 ハルキの心はわずかにだが、 確かに揺れた。 それでも、決意は揺るがない。 その代わり新たな決意を胸に抱く。 「紗羅。……約束する。 俺は絶対に死なない。 だから俺を信じて待っててくれ。」 ハルキは紗羅の目から目を逸らさず、 力強く言葉を発した。 紗羅はそれを聞いてしばらく俯くと、 一言ポツリと。 「………じゃあ、最後に。 キスして。」 ーーーああ、そういえばまだしてなかったな。 ハルキは今度こそはと、目を瞑る紗羅に顔を近づけた。 高鳴る胸の鼓動。 触れ合う吐息。 そしてーーー 触れ合う唇。 紗羅の唇は本当に柔らかく。 まだ肌寒いこの季節に、紗羅の唇は本当に熱く。 ハルキが、この人生の中で感じた。 一番の幸せだった。 ゆっくりと唇を離すと、ハルキは紗羅に微笑んだ。 でも彼女の表情は何故か切ない。 ーーーやっぱり…心配だよな。 ハルキは心の中で紗羅に謝ると、 「そろそろ帰るか…」 彼女にそう告げた。 「………うん。」 ーーー 帰り道、まるで何事もなかったかのように歩く二人。 辺りに人通りは少ない。 「え〜っと。てか帰り道どっちだっけ…」 ハルキは帰り道が分かってないのか、困り顔で辺りを見回すと。 「何やってんのよハル。こっちよ。」 紗羅はハルキが向いてる方向と全く違う方向を指していた。 「………ごめん。」 「ハル……アンタそんなに方向音痴だっけ?」 紗羅は心底彼に呆れたようだった。 ハルは心の中で自分の情けなさを悔やむ。 …もう夜も遅い。 帰り道を急ぐ二人は、辺りがさらに人気が無くなっていくのを感じた。 「ねえ、ハル。こっちが近道よ。」 紗羅が指さしたのは地下に入るガレージだ。 「本当にここで良いの?」 ハルキがやや怪訝そうな色を浮かべると。 「反対側から向こうに抜けられるのよ。」 紗羅が手を引っ張った。 紗羅の手がひんやりと冷たい。 ハルキは密かに心臓を昂らせた。 まあでも、紗羅の言うことに間違いはないだろう。 そして、ガレージの中まで入った時… 「アッ!!」 「ビックリした!! ッ急に大きな声出すんじゃねーよ!」 急に立ち止まった紗羅に、ハルキは心臓が止まりそうになった。 すると彼女は引きつった顔で 「ハル……ごめん。 さっきの公園にカバン…… 置いてきちゃった。」 「………。」 逆に良いものを見れた気がする。 自分はともかく、紗羅がこんな天然を発揮させる日が来るとは… ハルキは怒るどころか、彼女がすこし可愛く見えた。 しかし照れ臭いのか、面倒臭そうな態度で。 「ちぃ…。めんどくせーな。おら、戻るぞ」 ハルキが踵を返そうとすると。 「ご、ごめん!大丈夫だから!すぐに戻ってくる!」 よっぽど慌てたのか、彼女はハルキの制止も聞かずに一人で駆け出していった。 「ちっ、何慌ててんだか…。」 ガレージに一人ポツンと残されたハルキはやれやれと言った表情で頭をボリボリ掻くと、改めて周りを見回す。 照明は付いてはいるが、車自体もそんなに止まっていない、人の気配も全く感じない。 そんな空間ーーー 物音一つせず、こんな所に人なんて来る気配はこれっぽっちも感じなかった。 ………。 …………いや。 ーーーハルキ。よく覚えておけ。俺たちのやってる仕事、俺たちトレジャーハンターというのは常に危険が付きまとう。 黒崎の言葉を思い出した。 ーーーもしもこんな所で襲撃されたら…? いや、ハルキにとってはそれよりも恐るべきことがあるーーー 「ーーー紗羅ッ!?」 夜道に紗羅を一人にさせた事を悔やみつつ、ハルキが今来た道を駆け出そうとした時… 「悪いけど通さないわよ」 一人の少女が立ち塞がった。いやーーー 物陰、車の陰からゾロゾロと、 数十人の少女が現れたのだった。


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