SakeTami
ぶんちゃん
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スク水戦闘員を殲滅せよ 4話

途切れそうなほどか細いその声はーーー それなのにハルキの耳にちゃんと届いた。 「………。」 ハルキは悲痛な表情で、俯くーーー その表情はナンパな彼が普段滅多にすることの無いものだった。 「…私ね。中学2年の時に転校してきて、ハルと同じになってからずっとハルの事見てきた。 学校も一緒。登下校も一緒。仕事も一緒。ピンチな事も一緒に乗り越えてきた。 そりゃあーーー」 彼女は言いながら隣に椅子を引いてきて、 「ハルが何考えてるかくらいすぐに分かるよ。」 彼女の言葉にはわずかな笑みがあった。 ハルキはそれを聞いて少し呆れられてるような気持ちになり… 「じゃあ… 俺はお前の事をどう思ってるかも、分かってんのか?」 …言った自分に呆れた。 ーーー女の子が告白してくれてんのにこの返事はなんだよ。 彼は自分がひどく情けない男に思えたのだ。 「ハルはあたしの事ーーー 好き?」 普通、意中の相手にこんなこと言えない。 とんだ自意識過剰だと思われかねないだろう。 第一好きじゃないなんて言われたら、大抵の人間は大恥をかくことになる。 そう。だから普通はこんな言葉をさも簡単に言えないーーー しかし、 彼女はそれほどに確信があったんだろう。 それは自分の容姿への自信だとか、そうではなく。 彼の事をどこまでも理解しているからこそ、言える事なのだろう。 そして肝心のハルキはその言葉を受け… ーーーやっぱり女の子に告白させるってのは、男としてあっちゃならねえよな。 少し顔を情けなく綻ばせた後何かを決意したように言い放った。 「俺もーーー お前の事が好きだ……」 「ちゃんとあたしの名前を言って。」 間髪入れずに挟んできた言葉に、ハルキは一瞬呆気に取られながらも、やれやれと言った風に微笑った。 「俺も、紗羅の事が好きだ。」 「良く出来ました。」 そう言った紗羅は、言葉だけ取ると少し傲慢に感じるかもしれないが、ただ彼女の声音、表情を見るととてもそうは思えないーーー 心から嬉しそうだった。 彼女の嬉しさを噛み殺したような顔に、ハルキは今すぐ抱き付きたい衝動に駆られるが、 それをなんとか抑えなくてはいけない。 何故かというと… 「でもーーー」 その声を発したのは… 紗羅の方だった。 ハルキの開きかけた口は発する言葉を奪わられ、そのまま閉じた。 「無理ーーー なんだよね?」 彼女は優しく微笑むも、その笑みには諦めの色が滲み出てる。 ハルキの顔に表情は無い。 ああーーーと一言呟いた彼の目からは堅い決意が感じ取れた。 彼女はとても言いにくそうに言葉を紡ぎ… 「もしかして… それって昔…… ……お父さんが殺された事が原因?」 「………。」 彼は黙りこくる事で、肯定の意を示した。 「ねえ…まだその組織の事を探してるの?」 「…ああ、トレジャーハンターっつう仕事は仕事柄裏組織の情報も手に入れられるからな。 これが俺がこの仕事を今も続けている理由だよ。」 そして彼は真剣な表情もそのままに続けた。 「俺は生まれてから母親がいなくて、親父が男手一つで俺を育ててくれた。 親父を失った後は黒崎のおっさんに引き取られ一応こうして変わらず生活は出来ているが… 俺の心の中には何もかもがなくなっちまったーーー」 ーーーま、紗羅と出会うまではな。 彼は続く言葉を心の中にしまった。 ーーー 少年は幼き日のことを思い出した。 幼くて覚えていないが、父親は政府の官僚だった。 ある日彼の自宅にスパイが侵入し、たちどころに彼の父親を射殺したのである。 彼は机の下に隠れながらただ震えることしかできなかった。 そしてこの目で見たのだ。 そのスパイの姿を。 彼女はなんとも奇妙な格好をしていた。 そう。女スパイだったのだ。 まず目に入ったのは、学校でプールの時間に女の子が来ていた水着。 肩紐が白の紐で、それは胸から続き、背中でV字になっている。他の部位は全て黒だった。 その時は名称もよく知らなかったが、パイピングスクール水着というやつか。 さらに腕は肘下まである黒の光沢を放ったグローブ。素材はレザーかラバーか、それとも特殊素材か。 グローブが肘下まで覆っているのに対し、その下にもう1着手袋のようなものを着用しているのか、グローブの下からは伸縮性のありそうなスパッツの生地のような物が同じく黒の光沢を帯びながら肘上まで覆っている。 足も同様、黒光りしたなんの装飾もないブーツが膝下まで覆っており、その下に腕と同じ素材のニーソが膝上まで伸びていた。 歳は相当若かった。 当時は自分自身が小さかったので、「お姉さん」という印象を受けたが、今考えると今の自分よりも年下。つまりは中学生くらいだったのでは無いだろうか? 髪は長い黒髪を後ろで纏めており、 顔は… 見えなかった。 黒の水中眼鏡をしていたからだ。 ハルキは歯をガチガチと震わせながらも、息を殺し、その光景を目に焼き付けていた。 その女スパイは父親の死体の前まで行くと、サイズの小さいマシンガンを置いて、しゃがみ込んだ。 そして耳につけたインカムで誰かと連絡を取っている。 「こちらナナ。目標を殺害。機関のデータもこれより回収します。」 彼女は声に幼さを残しながらも、しかし少女とは思えないような口調で冷静に、淡々と状況を説明していく。 「ええ…ええ。正直私もこんなに完璧に任務を成功させられるとは思ってなかったわ。 ……え、子供?データ上にはそんなの無かったわよ。」 彼女は周りをキョロキョロと見渡した。 そして… ゴーグルで彼女の視線までは分からなかったが 確かに彼女はこっちを見たような気がしたーーー ーーー見つかった!? ハルキが生きた心地を感じないまま、ただただ目を瞑っていると。 「何かの間違いでしょ…。彼はまだ独身で子供はいなかったはずよ。 ………ええ、最後まで気を抜かないわ。 はい。これより帰投します。」 そう言って彼女は通信を終了すると、再び銃を持ち、音も立てずに消えていった。 ーーー そしてその後、ハルキは父親の友人であった黒崎に引き取られた。 黒崎はまるで抜け殻のようになったハルキを更生させようと、自らのトレジャーハンターの仕事を手伝わせた。 ハルキはみるみるとその実力を伸ばしていったが、どこか彼の目には輝きが無く、落ち着きを取り戻した後も、だんだんと捻くれたような性格になっていった。 そして中学2年の時、紗羅と出会う。 最初、彼は彼女に対して特別な気は無かった。 しかし、真面目な紗羅は生活態度のだらしないハルキを口煩く注意し、何かと世話を焼いた。 ハルキからしてみれば、容姿は良いが何かと付きまとってくる面倒臭い女。という認識であったが、いつのまにか一緒にいる時間も長くなった。 心の中にポッカリと開いた穴を、まるで埋めてくれるように… そしてある日、ハルキがトレジャーハンターという危険な仕事をしていることを知り、彼女は今すぐ辞めるようにと、それはそれはとてつもない勢いでハルキに迫った。 さらには黒崎の事務所の場所まで特定し、直談判するほどである。 そして、どうしてもトレジャーハンターを辞めようとしないハルキに、彼女が取った行動が… 「じゃあ、私もその…トレジャーハンター?…になる!」 それが条件よ!と二人に迫る紗羅はもはや、誰にも止めることはできなかった。 その後、彼女は持ち前のスペックで、ハルキに並ぶほどの実力を付け、今ではハルキの相棒になっている。 一緒に危機をくぐり抜け、真っ直ぐさとひたむきさを間近で見ていたハルキが、彼女に引かれるのも時間の問題では無かった。 以前から彼女も自分の事を意識していることは、なんとなく感づいていた。 しかし、ハルキは紗羅との関係を進めることは出来ない。 なぜならまずは父親の仇を討たなければならない。 相手はどんな組織かもわからないし、その組織を追うことで今後どんな危険があるかもわからない。 こればっかりは一人で解決しなければならない。 紗羅を危険に晒すわけには行かないのだ。 ーーー ハルキはそこまでの理由を紗羅に話した。 「………。」 紗羅は泣きそうになりながら俯いている。 しかし、決心し直したようにその小さな顔を上げると。 「ハル! もう仇を討つことなんて止めよう! この仕事もやめよう!?」 彼女は悲痛に訴えかけた。 「今まで無事でいられたのも運が良かっただけなんだよ! あたしッ!あたしッ…ハルの身に何かあったたら…ッ!」 彼女はとうとう泣き出してしまった。 正直、そんな彼女を見ているのは悲しい。 ハルキはそう思うが、やはり決意は変わらない。 「すまない…。」 彼はそう一言だけ呟いた。 彼女はひとしきり泣いた後、ようやく諦めたのか、 「これからもこの仕事を続けるってこと?」 少し赤くなった目でハルキに向き直った。 彼は黙って頷くと、彼女は「じゃあ分かった!」と言ってまたいつもの元気な顔に戻った。 「それじゃああたしはこれからもアンタの相棒よ!」 彼女は勝気な笑顔でニカッと笑う。 「ああ、これからもよろしくな。」 ハルキもそれに応じようとすると… 「……? おい、紗羅。何やってんだ?」 見ると紗羅は顔を前に突き出し、目を瞑っている。 それはまるで… キスを求めているようだった。 ハルキが困惑していると、紗羅がその顔のまま、 「あたしたち、確かに恋人同士じゃないけど… 両想いなんでしょ?」 だからキスくらいは良いでしょ?とばかりにそこで言葉を止めた。 ハルキは内心ドキドキしながらも、覚悟を決めた。 彼も健全な男の子である。 そして二人の唇が近づき… 二人の吐息が触れ合うまでの距離になり… そして…… 「コラァ!!お前ら何やっとるんじゃあッ!!」 バァンと勢いよく開いた横引きの扉から、数学の教師の怒鳴り声が響いた。


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