スク水戦闘員を殲滅せよ 2話
Added 2020-04-30 07:51:50 +0000 UTC「ヘブォッッ!!!」 ーーー突如、何かを顔面に叩き込まれた。 「起きろっ〜〜〜!!!」 ーーー突如、誰かが布団を引っ剥がした。 「って何すんだテメーッ!!!」 「あんたいつまで寝てんのよ!? また遅刻する気!?」 「"また"とは何だ…。俺は高校入学して2週間、まだ一度も遅刻してねーぞ。」 「それはあたしが毎日起こしに来てあげてるからでしょ!?」 「ああ、確かにそうだな…。毎日こんなバイオレンスな起こされ方をしちゃあ、遅刻なんてできねーよ。」 ハルキはまだ微かにぼやける視界を左上に向けると、そこには両手を腰に当て、仁王立ちのように立つ制服姿の少女がいた。 彼女は如月 紗羅(きさらぎ さら) ハルキの高校の同級生、というよりかは中学2年からの付き合いだ。 そしてハルキと同じ、トレジャーハンターでもある。 漆黒の黒髪はミステリアスでおしとやかな雰囲気を醸し出すも、ポニーテールにしてるためか、その少女の活発な性格が感じ取れる。 今は表情をキリリと締めてはいるが、決して眉間にシワがよる事は無く、普段は明るく優しい表情である事が見て取れる。 今は怒っているが、いや、その声すらも聴いていて全く不快になる事はなく、しかし、その凛とした声は責任感の強い彼女の性格が聴いて取れた。 あまりの美少女っぷりに、仁王立ちのその立ち姿すらも愛おしく思え、仁王立ちという言葉が全く似合わないほどに思える。 「………。」 「何ボーッとしてんのよ!早く支度する!」 ハルキは諦めたように鼻をフンッと鳴らすと。モソモソとベッドから立ち上がったーーー 「なあーーーお前、なんで毎日俺を起こしにくんだ? 同中(おなちゅう)だからって俺が遅刻してもお前には迷惑かかんねぇだろ?」 朝、ハルキと紗羅はいつも通り、もうだんだんと通い慣れ始めてきたこの通学路を歩いている。 まだ出発したばかりなので同じ高校の生徒などは見かけない。 「そういう問題じゃ無いでしょッ…。 ッ…クラスメートが遅刻するのを放っておくわけにはいかないじゃないッ。」 紗羅はまたちょっと不機嫌になった。 いや、不機嫌というか… 「……なんで拗ねてんの?」 「……ッ。す、拗ねてないッ!」 ハルキの方を向き直って怒鳴った。 怒っているためか、彼女の顔がほのかに赤くなってる。 「ああ…分かったよ。悪かったって。」 ハルキは降参とばかりに、手をひらひらさせて構わず歩き続けた。 紗羅も「もうッ!」と前を向き直り、また二人は朝の通学路を歩いて行く……。 「………。」 「………。」 「なあーーーお前ってさ、なんでウチの高校来たの?」 「………。」 手提げカバンをだらしなく肩に引っ提げて歩くハルキの隣で、紗羅はどこか悲しそうな表情を浮かべた。 「…いや、別に言いたくねーならいいけど。 ただお前のレベルだったらもっと頭イイとこ行けたんじゃねーかって思っただけ…。」 すると紗羅は、今度はハルキから表情を隠すように顔を背けた。 「ッ別に…ただ、ハルはズボラでだらしなくてどうしようもないし…だから一人じゃ何もできないから、あたしが面倒を見なきゃ行けないから、だから同じ高校にしてあげたのよ!」 「………そうかいそうかい。 ひどい言われようだな。」 ハルキはまた降参とばかりに手をひらひらさせて構わず歩き始めた。 「………。」 紗羅の様子を見た彼はその相変わらず締まらない顔で、空を仰ぎ、何事かを考えた結果… ーーー小さくため息をついた。 いつもの彼にしては珍しく、その表情には 後ろめたさがあった。 紗羅は彼のそんな表情を横目でチラリと見た、 後ろめたさを残したままーーー ーーーー だんだん学校が近くなるにつれ、2人の通う高校の制服を着た生徒がパラパラと見かけるようになった。 入学したばかりだが、ハルキはもう既にほとんどの生徒の顔を覚えていた。 ただその中で友人と言えるのはまだごく数人だけだ。 「よう!お二人さん!今日も一緒に登校かい!?」 彼もその中の一人だ。 「ウィーっす。ゾノ。君は今日も朝から騒がしいねー。朝一でお前の相手すんのダリィからまた後でな。」 ハルキは彼をそのままスルー。 「おいなんだよー!おめえだけずりぃぞーッ!」 尚もついてこようとするクラスメート。 「ずりぃってなんだよ…。」 何がずるいのか全く訳がわからない。と言った風だが、もちろん知っている。 周りの生徒たちから凄まじい妬みの視線を受けていることも知っている。 でもだからといってどうしろというんだ。 ハルキは頭が痛くなってきた。 「ね、ねえ、如月さん。僕、この前駅前ですげぇオシャレな喫茶店見つけたんですよ。もしよかったら今度一緒にどうすか?」 「ごめんね花園くん。あたし最近ちょっと忙しくて時間がないの…。 また今度誘ってくれるかな…。」 紗羅は笑顔を崩さずに申し訳なさそうな器用な表情で、やんわりと断っていた。 「………。」 ハルキはさっさとその場を立ち去ろうと… 「テメーッッ、ハルッッーー!!」 は、させてくれなかった。 ハルキは朝からこんなに騒げるこのクラスメートに感心しながらも、どうすればあしらう事が出来るのかに頭を悩ませるのだった。 ーーー 下駄箱にて、ハルキがふと紗羅の方を見ると、いつもの通り紗羅の下駄箱からは大量の紙が、雪崩のようにこぼれ出している。 紗羅は困った様子で、それらを自分の鞄に押し込んでいった。 ハルキはその様子を見ると、呆れたようにため息をついて、紗羅のもとへ歩み寄り、 「こんなん全部その場で捨てちまえばいいのに…」 ラブレターを一つ手に取った。 「……でも、書いた人は、きっと…勇気を出してここに入れたと思うから。」 ーーーまさかこれ毎日いちいち全部読んでんじゃねえだろうな? ハルキはゾッとするような疑問を投げかけたくなったが、やめといた。 ーーー全く。責任感が強すぎんぜ…。 ハルキはそう一人ごちると、手に取ったラブレターを躊躇いもせずに開けた。 「え…ちょ、ハル!?何やってんのよ!」 「いいじゃんいいじゃん。ここで読もーぜ。」 慌ててラブレターを奪い取ろうとする紗羅をあしらいながら、ハルキはその内容を声に出して読み始めた。 「えーと何何? 初めて見た時からあなたの事が好きでした。付き合ってください。1-B橋本 健人……。 それだけかよッ!まあ大人しそうなやつだしな…。こんなもんか。」 周りの注目が一気に集まる。 それはそうだ。今のこの状況というもの、学校一の美少女の周りにラブレターが散乱しており、いつも何故か一緒にいる決して彼女と釣り合うことのない不誠実そうな男が、そのラブレターを読み上げているという絵面なのだから。 「ちょっとッ…もうやめて!」 紗羅が制止をを求めるも、ハルキは構わず続けて行く。 「え〜次は…? 次の試合、あなたのために絶対に勝ちます。2ーF 剛田 康太…。 なんだよそれ!告白じゃねーじゃん!野球に告白しちゃったよ!第一お前先発投手じゃねーし!」 周りにだんだん人だかりが出来ていく…。 「んでからんでから…。 僕は聡明で美しく優しい貴女に一目惚れしました。是非僕とお付き合いしてください。2ーA 明智 智也…。 こいつさすが次期生徒会長候補ともあってギザなこと言いやがるな〜。 まあでもこいつ神経質そうな顔してやがるから付き合ったらめっちゃめんどくさそう…」 ハルキがまた次のラブレターを手に取ったその時だった。 「………。」 彼の前に数人の生徒が立ち塞がっていた。 彼らは凄まじい形相でしゃがんだ体勢のハルキを見下ろしている。 ハルキはバツの悪そうな、乾いた笑いを発すると… 「は…ははッ…えー、橋本くんに剛田くんに、あと明智くんだよね…」 そろーりと立ち上がり… 「ごっめんなっさーーーいいいッッッ!!!」 予鈴のチャイムが鳴ると同時に一目散に逃げていった。 ハルキは今日、初めて遅刻した。