太る可能性が100%と判定された女子高生の話(冒頭&1)
Added 2022-11-15 13:23:25 +0000 UTC学校が終わり、普段と同じ道を歩いて東案下駅に向かっていた時だった。 駅の近くに見慣れない看板が立っている。 『最新技術で太る可能性を調べます!今なら無料!』という変なもの。 「(本当にそんなことが分かるの……?)」 何だか怪しいし、正しく測定できるとも思えない。でも……気になる。 今までそこまで太ったことは無いけど、これからどうなるかは分からないよね。 タダで調べてもらえるならいいかな…… ちょっと入ってみよう。 建物に入ったら白衣を着た男の人がいて、近くには大きな機械が置いてあった。 よく分からないけどすごく高そうで精密そうな装置に見える。 「すみません……あの……太る可能性が分かるって、書いてあって……」 私はちょっと怖がりつつも白衣の男性に声を掛けた。 「分かりました。それではまずこの水を飲んでください」という返事が返ってくる。 「水……ですか……?」 「はい、どうぞ」 何で最初に水を出してくれるんだろう…… でも、ちょうど喉が渇いてたから都合が良い。 折角だから遠慮せずに貰おうかな。 「では次にこの綿棒で唾液を採取します」 「あっ、はい……」 この男性にさっと唾液を取られて、それが装置に入れられた。 「しばらくお待ちください。3分ほど掛かります」 「はい……」 装置がガタガタ音を立てて何やらいかにも分析している感じがする。 どんな結果が出るのか気になるなぁ…… 3分ぐらい経った後、機械の音が止んだ。 そして男の人から小さな紙を渡された。 これが結果かな?何て書いてあるんだろうと思って読んでみると…… 『あなたの太る可能性は100%です』 ……という文言が書いてある。 具体的な事は分からないけど、いつか絶対太ってしまうということみたい。 「えっ……そんな100%とかあるんですか……?」 「正確には99.9%以上なのですが、ほぼ100%と言って差し支えありません。 確実に太ります」 「そ、そんなぁ……」 ここまで断言されるなんて思ってなかったからちょっとショック。 でも……そもそもこのテスト自体が本当に信頼できるものか分からない。 この施設が出来たのもつい最近みたいだし、全然信用できないよね。 まあ太るかもしれないけど、ダイエットを頑張ったらいいだけだと思う。 そんなに動揺する事じゃないよ。 「じゃあ……太らないように気を付けます……」 「そうですか。では頑張ってください」 「ありがとうございます」 返事をしてからこの建物を後にした。 結局食べすぎとかに気を付けなさいってことかな? そんな事ぐらい検査する前から分かってるけど…… まあいいや。早く駅に行こうっと。 そろそろ電車来るんじゃないかな……大丈夫、次の各駅停車までまだ5分ある。 10分間隔だから覚えやすくて助かるよ。 そういや明日からゴールデンウィーク。どこにお出かけしようかな。 なんてことを考えながら改札を通った。 --- 今日で5月も終わりで、6月が明日から始まる。 私は来月何しようかなとチョコを食べながら考えていた。 今みたいに休み時間にお菓子を食べることが最近多い気がする…… そう思ってたら智里(ちさと)が近寄って来た。 「よく食べるねー、藍璃(あいり)」 「そう……かな?」 急に言われた言葉に戸惑ってしまう。 今までそんな事を言われたことがないから。 「だってさっきの休み時間もポテチ食べてたし、今もチョコ食べてるよ? そんなに食べてるのにお昼も普通に食べるんでしょ?」 「そ、そうだね……」 「いい加減いっぱい食べるの止めた方が良いよ。 しかも食べた分が身体に付いてるみたいだし」 ニヤリとした笑みを浮かべながらそう言ってきた。 「本当に?」 身体に付いてる?ということは太ったってこと? 私ってそんなに太ってたかな……? 「嘘、自覚無いの!? 顔だってお肉付いて丸くなってるし、スカートから出てる脚だって結構太くなってるよ。 そろそろ痩せないとマズいと思うけど……」 私の反応にむしろ驚いている智里。 他人がこんなに太ったことに気づいてるというのに、私は何で無自覚だったんだろう…… 「分かった……気を付けるね」 「後運動とかした方が良いよ」 運動かぁ……私って動くのとか苦手だからできるかな…… でもした方がいいよね……走ったりしよう…… 「じゃあ、明日から運動するよ」 「ダイエット頑張って」 「はい……」 智里から指摘される程に太ったのは恥ずかしい。 今体重何kgぐらいだろう……学校から帰ったら体重測らないと。 家に帰ってから体重を測ると58kgを記録していた。 確か1カ月前まで49kg前後だったはずだから、かなり太ってしまったことになる。 「(何で……?)」 鏡に映った体型も結構ふくよかなものに変化していた。 顔も確かに丸くてプニプニしてるし、脚も結構お肉がついて平均よりも少し細かったのが太めに変わってしまった。 制服の下に隠れていたウエストには贅肉がしっかり付き、おへそ周りもポコッとふくらみが出来ている。 これはマズいなぁ……本当に太ってるよ…… 今までもシルエットが大きくなった気がしてたけど、胸が大きくなって着太りしていると勝手に思っていた。 一応胸がふくらんだのは確かで、平均より大きなサイズにはなっている。 でも他の部分もしっかり太ってるから複雑な気分…… 制服から私服に着替えてみても何だかキツい。 最近サイズが合わないとは思ってたんだけど気にしないようにしていた。 でもこのスカートだってボタンがちょっと留めにくいし、これはマズいなぁ…… 明日からダイエットしないと。 運動して、お菓子も止めて、しっかり痩せよう。 まずはジョギングから始めようかな。 そう思った私は学校のジャージに着替えて、今から家の近所を走ることにした。 これで少しは痩せると思う。後ランニングウェアとかも買っておかないと。 --- 7月が始まってから毎日暑くて仕方がない。 少しでも涼しくなりたくて、校内の自販機で買ったサイダーをごくごく飲んでいた。 ついでにビスケットも一口食べる。美味しい。 そんな私を智里が呆れたような目線で見てくる。 「藍璃、運動はどうしたの?」 うっ、その話は止めてほしいな…… 「運動……運動……してる、してますよ」 とっさにそう言ったけど本当はどうなのかはバレバレだと思う。 「してないでしょ」 「うぅ……」 やっぱり……誤魔化すことなんてできる訳が無いよね。 智里の言う通り、私は今運動を全くしていない。 5月末から頑張ろうと思ったんだけど、最初の1週間だけで嫌になってしまって……その後は全然。 最後に運動用の服を着たのもいつだっけ…… しかも走ったりしてないのに食欲はもっと増えてるから体重も…… 「痩せないとマズいって言ったよね?どうすんの?」 「そんなに……太ってるかな……」 「どう見ても太ってるよ!ほら!」 「ひゃ!?」 いきなり背後に回り、私のお腹の贅肉を掴んできた。 労せずに大量の贅肉を掴めている。 「ちょっとそれは……恥ずかしいよ」 「恥ずかしいのはこの体型だよ。こんなに太って。 顔だって二重顎が出来てて、ふくらはぎも凄くパンパンになってるよ。 いい加減痩せないとデブ街道まっしぐらだと思う」 に、二重顎……そっか、そんなに太ってるんだ…… ふくらはぎも……前は細かったはずなのに…… 「それはそうかも……」 私が微かな声で返事すると、智里はため息を付いた。 「はあ……藍璃はほんわかしててかわいいけど、ちょっとは焦ることもしないと。 スカートだってキツくてまともに穿けてないよね?安全ピンで強引に留めてるし、ファスナーは閉まり切ってないし……」 確かにスカートはウエストがキツくてホックが留まらないし、ファスナーも上まで閉まらなくなった。 ブラウスだってパツンパツンだし、無理やり制服を着ていることは否めない。 太り過ぎだとは薄々思ってた。でもわざと事実から目を背けていたんだと思う。 「もう制服が悲鳴を上げてるよ。買い替えるつもりなの?」 「買い替えたくは……無いかな」 制服のサイズアップ……こんなに太ったら当たり前だよね。 でもそんな段階まで来てしまったことに今更だけど衝撃を受けてしまう。 「じゃあ痩せないと」 智里の言う通りだよ……一刻も早く運動を再開して、お菓子もちょっとは控えないと…… このままだと体型がどんどん崩れるよね…… 「ダイエットするよ……」 「今回こそは真剣にしてよ」 帰宅後私はすぐに体重計に乗ってみた。 表示された体重は68kgで70kgの大台も迫っている水準。既に肥満と呼ばれても仕方ないレベルになっている。 「(こんなに太るなんて……)」 数字を眺めてテンションが下がっていく。 60kg台でも十分太ってるのに70kgもすぐそこなんて…… そして鏡に映った自分の姿を見てもっと落胆の思いが強くなる。 顔は更に丸くなってパンパンだし、二重顎も出来上がってしまった。 ウエストは贅肉がたっぷり付いてスカートの縁に乗っかってるし、制服越しでも出っ張ってるのが分かってしまう。 おへそ周りなんて脂肪の段が出来る程で括れなんてどこにもない。 お尻だってかなり大きくなって張り出してるし、脚はいっぱいお肉がついてブヨブヨに弛んでいる。 胸はかなり大きくふくらんで制服を引き伸ばすほどだけど、その下のお腹も同じく生地をパツパツにしていた。 私服だって大きいTシャツとかゴムウエストのゆったりしたスカートとかそんなのばっかりになっている。 ファッションには疎いけど、前にも増して「サイズが合えばいい」「ゆったりして着やすかったらいい」という感じになっていた。 これ以上太ったら制服だってビリっとなるかもしれないし、一刻も早く痩せなきゃ…… 今日ぐらいは走らないと。まずは前に買ったランニングウェアを着て……あれ…… サイズが合わない…… 仕方ないから学校の体操服に着替えて外に出た。 「(はぁ、ひぃ、走るの、しんどい……)」 近所を走ってるけど、もう早速くたびれそう。 足が地面を踏む度に体中のお肉が震えるし、汗びっしょりで気持ち悪い。 大きく育った胸も走るのを妨害してくる上に身体が重くて疲れてしまう。 こんなんじゃ恥ずかしいだけだよ…… 近くを歩いている男の人とか、女子高生たちからもクスクスと笑われている気がする。 早く帰りたい……でも走らないと…… 今15分は走った感覚だけど……時計を見ようっと。 えっ、まだ7分なの……? いきなり運動しすぎるのも駄目だよね。今日はこれぐらいにしとこう。 「(すっかりデブになっちゃった……どうして……)」 家に帰った私はまた鏡を見てそう思った。 どう見ても肥満なのは確かだけど、急激に太ったのがどうも腑に落ちない。 春までは特に太ったことも無かったし…… 沢山お菓子を食べることが習慣になっているのが原因なんだけど…… 自分でも食べ過ぎだと思ってはいる。でも何かが変な気がするなぁ。 あっ、そういえば…… 引き出しの中に確か入ってたはず。 『あなたの太る可能性は100%です』 あった、この紙。 太るって書いてたけど本当だったんだ。 疑ってごめんなさい……明日の学校帰りにまた寄らなくちゃ……