SakeTami
ドーン
ドーン

fanbox


異世界転移したら霊体モンスターになった(仮) 第3話


第3話


「はじめまして、新人スペクターさん。わたくし、ソフィアと申します。よろしくお願いしますね」


「………」


 先輩に紹介された『上司』を見て、俺は色々な意味で固まる。


「どうかされましたか?」


 明るい金髪に少し目尻の下がった優し気な眼差しが印象的なその美女が、固まって声が出ない俺を心配そうに覗き込んでくる。


「まあ、お前が固まるのも理解できるが、この方はこの諜報部隊の隊長、つまり俺たちの直属の『上司』だ」


 今だ声を出せない俺に先輩が説明してくれた。

 このソフィアという女性、楚々とした品のある美貌の持ち主で、その知性と慈愛に満ちた眼差しはまるで聖女で、言葉遣いや物腰もそれっぽい。

 でも体の方は、『どこの悪の組織の女幹部だよ!』と言わんばかりのボンテージスーツを身に纏っており、男の視線を釘付けにするエッチなボディラインを惜しむことなく晒しているのである。

 そのギャップがエロ過ぎて、生身だったら鼻血モノである。


「えっと……初めましてスペクターBです。いや、凄く綺麗な方なので驚いてしまいました」


「あら、お世辞でも嬉しいですわ」


 色々ツッコミたくなる気持ちを堪えて何とか対応する俺に、彼女は満面の笑顔で返してくる。


「それではスペクターAさんにはお手間ですが、Bさんの指導、よろしくお願いしますね」


 彼女はニコリと笑顔を浮かべて、自分の仕事に戻っていった。


「いや~意外でした、あんな綺麗な女性が上司だなんて。まるで聖女のようじゃないですか、服装以外は」


「まあな、実はあの人、前職は魔王様直属の暗殺部隊だったんだ」


「ひぇ~、あの容姿で油断させて殺すんですか?それはある意味恐ろしい……」


「いや、ここに配属される前に会った時は、男のアサシンだった」


「はぁ?」


全身で疑問符を浮かべている俺に、先輩は説明してくれた。


「あの方の正体はドッペルゲンガーといって、喰らった相手に成りすます能力の持ち主なんだ。任務中『放浪の聖女・ソフィア』を喰らったんだが……。その聖女の力が強すぎたせいで、あの通り、写し取った相手の人格に引きずられてしまったんだ。それで暗殺は不向きになったんで、この諜報部隊に転属されたって訳だ」


「それは、それは」


「まあ、人間たちは『ソフィア』の中身が変わっていることは分からないから、諜報活動中は聖女として振る舞って、情報は引き出し放題だから便利だけどな。でも時々自分が魔王軍の一員であることも忘れそうになるとかで、それを防ぐ意味でもあの強烈な服装をしている訳だ」


「なるほど、なるほど」


「他人事のように聞いているかもしれんが、これは俺たちにも当てはまるんだぞ?」


「え?」


「意志の強い相手に強引に憑依すると、逆に俺たちの方が取り込まれてしまうことがあるってことさ」


ん?今、先輩の口から素敵なワードが聞こえたぞ?憑依?!


「俺たち、憑依できるんすか!?できるんすよね!やったぜ!やっぱ定番の『くっころ!』と叫んでいる女騎士を乗っ取って仲間を裏切るとか……妖艶な女魔導士に憑依してその知識を使って策謀を巡らすのもいいな……いやいや俺も聖女になって清楚な笑顔を振りまきながら裏で外道なことするのが最高か……」


俺が喜んでいるのをしばらく黙って見ていた先輩だったが、冷ややかな目で説明を始めた。


「……盛り上がっているところで悪いが、お前の期待している事、無理だからな」


「なんで!?」


More Creators