SakeTami
ドーン
ドーン

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奪われた聖女



「こいつ、小娘と思って侮っておったわ!」


 勇者が率いるパーティを迎え撃つべく、彼らを分断し、各個撃破するつもりで仕掛けた戦いだった。

 迎え撃った壮年の男は、死を司る神に仕える大神官として、自分よりはるかに若く経験の浅い聖女との一騎打ちに負けることなど想像もしていなかった。

 確かに、仕える神から授かった魔法の使い手としての技量は完全に上回っているのだが、聖女は小刀も使いこなしている分、強力な魔法を使う機会が得られず、戦いを有利に進められていた。

 しかもその剣は小刀といえど、聖剣である。

 普段は温和で周囲の者たちをその笑顔で癒す美貌を鋭く引き締め、女は確実に男を追い詰めていく。


「これで終わりです!覚悟!」


 気合と共に白銀の鎧姿の聖女がもつ聖剣が突き出される。

 それは見事に暗黒のオーラを纏った闇の大神官の胸を貫く。

 完全な致命傷だ。


「ごふっ!!!」


 流れ出る血と共に男の体から力が抜けていく。

 諦めたように体が崩れるが、顔だけ起こし、その目に最期の気迫が宿った。


「もはや現世に干渉する力は、私には無い……だが、我が神は転生も司る……我が神よ!この命をもって我が最期の願いを叶えたまえ!輪廻剥奪!!!」


 尽きようとしていた己の命を捧げた大神官の最期の魔法が発動する。

 二人の体から光と闇の帯が流れ出る。

 聖女から流れ出た光の帯には、聖女自身の顔に続き、清らかな笑顔を浮かべた女性たちの顔が延々と浮かび上がった。

 彼女たちは、高潔な魂を受け継いできた聖女の前世の姿たちだった。

 闇の大神官から昏い帯にも、大神官自身から始まり、妖しい雰囲気を纏ったの男たちの顔が続く。


「な、なんなの、これは?」


 聖女が驚きを隠せない表情で見ていると、自分から出ていた光の帯が、自分の顔だけ残して消滅する。

 そして、闇の大神官から出ていた禍々しい帯が切り離され、聖女の続きに張り付いた。


「ふ、ふふふ、我が神よ、感謝します……」


 そう呟き大神官であった男は事切れた。


――――――


「こちらも勝負がついたみたいだな」


 別の場所で戦っていた仲間たちが、戦いの余韻に浸るように倒した相手を見下ろす聖女に合流して、声を掛けてきた。


「ええ、終わったわ……」


 だがリーダーである勇者は、聖女の顔を見て不思議そうな顔する。

 いつもは倒した敵にさえも憐れむ心優しい女性なはずなのに、何故か嬉しそうに笑みを浮かべていたからだ。


「どうした?なぜ笑っている」


「どうしてでしょうか?自分でも分からないけど、何か素晴らしいモノを手に入れた気分なの」


「そうだな、あれだけ激しい戦いだったんだ。勝利を喜ばないとな」


 聖女の笑みを誤解した勇者は、満足そうに呟く。

 聖女自身も彼が誤解している事は理解できて、それが何故かたまらなく可笑しいことのように感じられて、笑みを深める。


――――――


 数日後……


「ふふふ……」


 朝、目覚めた聖女はその日みた夢の内容を思い出し、笑い出す。

 それは自分の前世の姿だった。


「……あっはっはっは!そうよ、私は死を司る神に仕える大神官!こんな素晴らしいカラダに生まれ変われたなんて!ああ、神よ!感謝します!」

 

 身に着けているものを全て脱ぎ捨てた彼女は、自分のカラダを確かめるように弄り続け、その気持ち良い感触と女の快感に酔いしれる。


「信仰の証として、あのものどもを生贄に捧げてやりましょう。ふふふ、今の私ならば造作も無いこと……」


 そして自分の前世が闇の大神官だったことを思い出した聖女は、その立場を利用して仲間たちを罠に陥れる策に思いを馳せながら、その美しい顔を心底楽しそうに歪めるのだった……。


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