SakeTami
ドーン
ドーン

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仕入れ side 女冒険者



「ねえ、やっぱりこの依頼、おかしいと思わない?それにこの嫌な感じ……」


「ええ、そうね。男たちの視線が鬱陶しいのはいつものことだけど、それ以外からも見られてる気がして落ち着かないわ」


 隣を歩く女戦士の言葉に、ワタシは周りの森を見回しながら応えた。


――――――


 新たな拠点にした街の冒険者ギルドで受けた今回の依頼。

 内容自体は、商人たちとその荷馬車の護衛で、珍しくは無い

 目的地も、最近出来たリゾート村らしく、それほど遠くない。

 ただ、受けるための条件が『女性を複数含むパーティ限定』で、尚且つ、依頼主の面接をパスすることだった。


 胡散臭い条件だったが、手頃に受けれる上、報酬も通常より多めなので、女3人組のワタシたちはとりあえず依頼人に会ってみた。

 代表者だというその男は、ワタシたち3人を見ると露骨に喜色を示し、ロクに会話もしていないのに、報酬を上乗せするから是非と迫って来た。

 仲介してくれた冒険者ギルドに確認しても、定期的に出されている依頼で、今までも問題が無いとのことだった。

 結局、断る理由も無いので依頼を引き受ける事になった。

 だが、商人たちのワタシたちを見る視線が妙に気になるのだ。


 客観的に見て、ワタシたち3人はかなりの美人の部類に入る。

 パーティの前衛を担当する赤毛の女戦士は、実は貴族の出身で、凛々しい美貌に加えてその引き締まったカラダは、装備を鎧からパーティドレスに変えても活躍出来そうだ。

 神聖魔法を使う金髪の神官は、まだ少女といえる年齢ながら腕前は確かで、聖女候補とまで言われている清楚な美貌の持ち主だ。

 2人ともタイプは違えど、同性のワタシから見ても見惚れるような女性だ。

 このパーティのリーダーで魔法使いであるワタシも、この世界では珍しい黒髪のせいか、酒場での男たちの誘いを断るのに苦労する程度には魅力があるようだ。

 だから、ワタシたちを性的な目で見る男たちの視線には慣れているはずだし、それを理由に話を断っていたら仕事が無くなる。

 依頼時の奇妙な条件について問い質してみようかとも考えたが、その条件込みで仕事を引き受けた以上、むせ返すのも良くないだろう。

 どうせ道中、男たちの脳内でワタシたちの分身がたっぷりサービスするくらいだろうし、それも料金の一部だと割り切れば問題ない。


 そう考えていたのだが、商人たちの表情から読み取れるのはある種の『期待』だ。

 今、一緒に居るのは仕事上だけの関係であるはずなのに、まるでその先があるかのような雰囲気を感じる。

 ワタシたちの方から靡くことは無いし、無理矢理手籠めにして自分たちのモノにするような気概があるようにも思えない。

 

(もし『商品』にする気なら、返り討ちにしてやるわ!)

 

 思考力を奪う薬品を投与して、女を『商品』にする闇組織が存在することは知っている。

 ギルドが保障してくれた依頼ではあるが、警戒するに越したことは無いので、道中の食料と飲料水は自前で用意したモノで済ますことにした。


――――――


 そして今、ワタシたちは深い森の中を歩いていた。

 この森を抜けると目的地の村に着くらしい。

 道自体はしっかりしているので迷うことはなさそうだ。


 問題はこの森自体だ。

 踏み込んだ瞬間から異様な気配を感じる。

 魔法使いのワタシから見ると、薄い魔力が探知魔法のように張り巡らされているような感覚。

 この土地固有のモノなのか、それとも別の存在によるモノなのか……。

 今のところ危険な様子はないが、不気味なのは変わらない。

 他の2人も、このカラダに纏わりつくような魔力は感じているようだ。


「確かに気持ち悪いですね。でも、依頼者たちが何かしている訳でもないようですし、我慢するしかありませんね」


 最年少の神官の少女にそう諭されれば、ワタシたちも黙って護衛を続けるしかない。



 結局、何事も起こらず、目的の村に到着することが出来た。

 色々用心していた分、拍子抜けしてしまった。


「お!大将!いまお帰りかい?すげぇ美人を連れてるじゃねぇか」


 たまたま通りかかった常連客らしい男が、依頼主に話しかけてきた。


「ええ、『仕入れ』から今戻ったところです」


「『仕入れ』ってことは、その女たちもイケるのか?」


「いえいえ、この方たちは荷馬車の護衛をしてくださった冒険者の方々です」


 罰が悪そうに依頼主は、男の言葉を訂正する。


「おっと済まねえ。こっちの早とちりだ。お姉さんがたも勘違いしてすまねぇ」


 常連客の男は謝罪の言葉を述べながらも、露骨に性的な視線を向けてくる。

 この男からも、依頼主たちと同様、何かを『期待』している様子が伝わってくる。


「それじゃあ明日、伺わせてもらうぜ!よろしくな、大将!」


「……はい、ご来店をお待ちしています」


 常連客を見送った依頼主は、申し訳なさそうな顔をすると、ワタシたちに頭を下げた。

 

「すみません、あの方はうちの常連様なのですが、その……そういうサービスをする女性と勘違いされたようで……大変申し訳ありませんでした!」


 言われてみれば、この村に滞在している客は、男性が多い。

 娼館があっても不思議ではないだろう。

 報酬として用意されていた袋に何枚か追加して、依頼主は続ける。


「それで、迷惑料として依頼した時より少し色を付けさせてもらいました。これが今回の報酬です。お受け取り下さい。」


「……わかりました、あまり気分が良い訳ではないですが、今回は水に流します」


 娼婦扱いされて不機嫌だったワタシたちだが、目に見える形で誠意を見せられれば、少なくとも表面上は大人しくするべきだ。


「ありがとうございます!出来れば今後も護衛を引き受けて頂けるとありがたいのですが?」


「それは……またその時の話として考えさせてもらいます。では……」


 増額された報酬を受け取り、ワタシたちはこの村から急いで離れることにした。

 とはいえ、もう一度あの森を通るのは嫌だったので、遠回りになるのを覚悟で別の道を模索する。


「本当に何だったのかしら?この依頼……」


 ワタシは訝しく思いながらもそれ以上詮索することは諦めて、他の2人と共に帰路に就くのだった……。


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