カルマ値が低いMOBが何人かいますが、彼女も相当低いです。
変化事案に巻き込まれなくても、衆合地獄くらいには堕ちるほど、やばいことをしています。

【最新更新:性格のカルマ値を追加】 <概要> MOBに関する情報は、こちらから確認をお願いします。 今いる20人分のMOBキャラクターを、支援者さんが選びやすいようにまとめたページです。ワンドロリクエストの際は、ここから気になるMOBを選んでいただけると助かります。 ※内容は随時更新・整理していきます(今後M...
――――――――――――――――――――――
屋上の風は、いつもより少し熱を帯びていた。
或る日の午後。授業をサボって決まり悪そうに、十束りりは鉄骨に寄りかかる。ガラケーじゃなくてスマホをいじっている。画面には友達からのLINEが何件も。今日の放課後のデートのお誘い。それに、明日の私服の相談。全員、あーしを中心にグループが回っている。だから、あーしは偉い。あーしは正しい。誰にも逆らえない。
――そう、思っていた。
その時、だった。画面に映った自分の美しいピンク髪を、ぴゅるりと小さな光の粒が横切った。
「……ん?」
何だ、これ。虫か。そう思って、画面から目を離し、周囲を見渡す。
どこにもいない。
気のせいか。
そう思い、またスマホに視線を戻した。もう一度、ピンク色の髪を整える手つきが少し気取っていた。ふわっと風に舞う髪が、空気の匂いを運んでくる。ほんのり、サラサラしたシャンプーの香り。
だけど、何か他の匂いもした。カビ臭いような、湿っぽいような。嫌な匂いだ。何処から……。鼻をくんくんさせる。すると、その匂いの正体が、自分自身から出ていることに気づく。
「うわ……なんか、くっさ……」
スマホを置いて、制服のブレザーをくんくんと嗅いでみる。やっぱりする。この前、サボって行ったゲームセンターの匂い?いや、違う。もっと古臭い、ずっとずっと前に死んだ虫のような、粘つくような悪臭。背筋に、嫌な寒気が駆け上がった。
「最悪……わけわかんないし…」
再度スマホを手に取ろうとした、その瞬間。
何かが自分の中に入ってきたような感覚。脳天から背骨に沿って、冷たい氷の塊が流れ込んできたようだった。指先が痺れ、視界がゆらめく。スマホが滑り落ち、コンクリートの床にカチャンと音を立てた。
「や…った…!」
思わず声が出た。でも、それはあーしの声じゃなかった。もっと低く、こもった、男のような声。
顔の右半分が、ピリッと痛む。鏡があれば見ていただろう。右の頬の皮膚が、内側から押し上げられるように、ゆっくりと、歪み始めている。まるで、顔が剥がれていくような感覚…、いや、剥がれているのだ。自分の手を上げて頬を触る。すると、指先の感触が、生身の肌ではない、プラスチックのような、固く、つるりとした質感に変わっていた。
次の瞬間、身体の感覚が無くなり、ドサと言う音とともに、あーしは倒れた。あーし、じゃない。あーしの身体が、倒れたのだ。視界は、逆さまになった屋上の景色。青空、白い雲、灰色の鉄骨。それを眺める、宙に浮かぶ自分の顔。あーしの顔。
大声で笑い、叫んでいるのは、間違いなくあーしの顔だ。ピンクの髪、強気な目元、濃いメイク。だけど、そこから漏れる声は、憎しみと侮蔑の混じったものだった。。
――やめて、やめて、やめて……。
心の中で叫ぶ。口は動かない。声は出ない。ただ、宙に浮かぶ顔が、汚い言葉を吐き続けるだけ。
声は、屋上の空に轟き、校舎の窓ガラスを震わせる。体育館の方向から、バスケットボールが弾ける音が聞こえた。誰か来る。誰かが来て、このありさまを見る。
あーしは、そう思っていなかった。あーしは、そう言いたくない。なのに、口は、あーしの顔は、もはやあーしのものではない。男の魂が乗っ取ったお面なのだ。屈辱。恐怖。そして、どうしようもない怒り。
おかしい。おかしい。おかしい。なのに、笑い声が止まらない。
のっぺらぼうの体は、コンクリートの上で、まるで人形のように動かない。宙に浮かぶ顔は、悪意の塊となって、あーしの名誉を切り刻む。誰か、来てほしい。誰か、助けてほしい。いや、誰も来てほしくない。誰にもこの姿を見られたくない。
矛盾した思いが頭の中で渦巻く。でも、外にはただ、あーしの顔が発する、下品な叫びと嘲笑だけが、午後の陽光にさらされていた。
(誰か、助けて……。あーしの身体を、返して……。)
心の奥から、誰にも聞こえない声が、消えていった。
終わり
挿絵:黒蜂
SS:腹心A
――――――――――――――――――――――
とりあえず、身体はもらっておきます。