モイライズアルカディア 第1話
Added 2024-11-10 08:27:07 +0000 UTC某所
とある路地裏に、仕事帰りの女性が逃げ込んできた。
慣れない靴で、息を上げながら、奥へ奥へと走る。
「無駄ですよ」
そんな彼女の前に、突然フードを被った人物が現れた。声は中性的で、オーバーサイズの服を着ており、男女の判別ができない。
女性は後退りながら、
「何なんですかあなた……!? 昼間から追いかけ回して……! 警察を呼びますよ?!」
目の前の人物を睨む。フードの人物は、そんなことを意に介さず、女性に向けて手をかざす。
「呼んでもいいよ。そんな余裕もなくなるだろうけど」
次の瞬間、かざした手が光り、女性に向かって飛んで行く。光は怪しく光るピンク色で、どこかなまめかしい雰囲気を持っている。
飛んで行った光は、女性の腹部に当たり、ジワジワと浸透していく。
「ここからは奇跡の時間だ。『プレグネイション・バースト』」
そうフードの人物が呟くと、女性のお腹が一気に膨れ上がった。
ボン!!! という音を上げ、服を破ってバランスボール並みの大きさに膨らむ。まるで臨月の妊婦、それ以上の大きさに到達している。
「え?」
彼女が理解する間もなく、腹は更に膨らんだ。
ボン!! ボン!! と、大きくなり続け、あっという間にお腹が自身の身体より大きくなる。それと同時に、股間にある女性器から大量の潮が噴出した。
「お、ごおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?♥♥♥♥♥」
あまりの快楽に嬌声を上げ、真っ赤なアヘ顔を晒しながらビクビクと痙攣する。
潮吹きは断続的に噴出し、全身を仰け反らせた。同時に、胸も膨らみ始め、服を突き破り、Zカップを軽々と超える大きさにまで成長する。成長した乳房から母乳が壊れたシャワーの様に発射され、周囲は彼女の恥辱の体液でビシャビシャに濡れてしまった。
「あ、お」
短い言葉を最後に、白目を向いて気絶してしまう。
お腹は自身の身体より大きくなったのを最後に膨張を止め、乳房もZカップよりも少し大きいくらいで成長を止めた。
その様子を見ていたフードの人物は、舌打ちをする。
「ハズレか……」
それだけ言い残して、その場を後にした。
残された彼女は、大きく変異した体のまま、放置されるのだった。
◆◆◆
ジリリリ、と、やかましい目覚まし時計がなる。
ベットに眠る少女は、手だけ伸ばして目覚まし時計を止める。
目を開けると、締めてあるカーテンごしに、朝日がぼんやりと目に入ってきた。
大きめの布団をまくり上げ、身体を起こし、カーテンを開ける。朝日を受けながら大きく伸びをし、欠伸をした。
「ふああ~……。なんか変な夢を見た様な……」
紫色の瞳を擦り、ボサボサになった茶色のショートヘアを整え、身支度を済ませる。
顔を洗い、朝食を食べ、学校へ行く準備を完了し、
「いってきまーす!」
自宅から飛び出す様に外へ出て行くのだった。
ここは『孕魅ヶ胎《はらみがはら》市』。山々に囲まれ、大きな川が流れているだけの平凡な街だ。
そんな街で暮らす一人の少女『原御原 海芽《はらみはら うみめ》』は、今日も普通の日常を送っている。
海芽が学校へ向かう途中、
「おはよー海芽」
「おはようございます、海芽さん」
「おはよう嗣子《つぐこ》! 朱羽《あけは》!」
友人2人と合流した。
『沢山 嗣子』と『御門城 朱羽』。彼女達とは、3年来の友人関係にある。
「海芽、今日のテレビ見た? 女の人襲われたヤバいやつ」
「あー、見てない」
「昨日未明、この街で女性が襲われたそうです。幸い命に別状はないそうですが、犯人は逃亡中で、見つかってないみたいですよ」
「うへえ、今日バイトなのになあ……」
「犯人捕まるまで休んじゃえば?」
「それは他の子に迷惑掛かっちゃうから気が引けるなあ」
「海芽さんは真面目ですね。行くのだとしたら、十分に気を付けて下さいね」
「はーい」
そんな他愛もない会話をしながら、学校へ向かう3人だった。
◆◆◆
晴天に恵まれた昼間
孕魅ヶ胎市の建物の屋上を跳び回る人影がある。
先日女性を襲ったフードの人物、それを追うスーツ姿の女性3人だ。常人ではありえない脚力でビルとビルの屋上を跳び移り、凄まじい速さの追いかけっこが繰り広げられる。
「こちら第3班、星を発見。現在追跡中。進路方向は北。応援求む」
スーツ姿の女性の一人が、小型の無線機を使って応援を呼ぶ。それが聞こえていたのか、フードの人物は舌打ちをした。
(このままでは追い付かれる。この『宝』を渡す訳にはいかないというのに……!)
心の中で悪態をつきながら、更に速度を上げて、追跡者達を巻こうと躍起になる。
そんな異常事態が上空で起きているともつゆ知らず、街の住民達はいつもの日常を過ごしていた。
◆◆◆
夕方
放課後のチャイムが鳴る中、海芽は走ってバイト先へ向かっている。
「うわーん! 補習で遅れちゃったー! 急がないと!!」
本日提出した宿題が全問不正解という失態を犯し、放課後の補習を受ける羽目になっていたのだ。
そのため、バイトの時間までの余裕が無く、こうして全力で走って向かっている。
「このままじゃ確実に遅刻しちゃう……! そうだ!!」
本来の道とは別の道へ進路を変え、小高い山のある方へ向かった。
「確か神社の横道を使えばショートカットになる! 神主さんに見つかったら怒られるけど!!」
山にある小道に入り、一気に階段を駆け上がる。しばらく整備されていないせいで、あちこち草木が生え、ボロボロになっていた。
そんな事には目もくれず走っていると、上の方からガサガサという音が近付いてい来る。
「? 何の音?」
つい上を見た海芽。視界に入ったのは、ガラスケースが自分の目の前に落ちてくる光景だった。
「うおわ!?」
突然の事態に驚きながら、咄嗟にガラスケースを掴む。幸い割れる事は無く、無事に海芽の胸の中に納まった。
「あ、危なあ。……ていうか、なにこれ?」
掴んだガラスケースを見ると、中には白と黒のマーブル模様が施された、少し大きめの、楕円形をした宝石の様な物が入っている。怪しい光沢を放ちながら、ガラスケースの中でしっかり固定されていた。
(見たこと無い石……。宝石、じゃなさそうだし。何かの美術品かな? この前授業で見た作り物の石)
色々と考察するが、結論は出ない。頭を悩ませ、どうしようかと考えを切り替えた時だった。
今度は更に大きな音を立てて、フードを被った人物が降りてくる。あちこちボロボロになり、息がかなり上がっている状態だった。
突然現れた人物に、海芽はさっきよりも驚き、数歩後退する。
「今度は何?!!」
「……おい、お前……。それを、返せ……!!!」
フードの人物は急に海芽に向かって駆け出した。ここは山中にある細い小道。逃げ場はさっきまで走って来た足場の悪い古い階段のみ。
「なになになになになに!?!?!?」
突然の事態に混乱しながらも、方向転換して階段を駆け下りる。
それが全ての原因だった。
海芽はボロボロになった石の階段の上にあった草木を踏み、大きく滑ってしまう。その拍子に、持っていたガラスケースを前へ落としてしまった。ガラスケースは回転しながら石の階段へ落下し、ものの見事に粉々に割れてしまう。
ガシャーン!! という大きな音を上げて、中に入っていた白黒の石が飛び出してしまった。
「あ」
「貴様! 何という!!」
フードの人物が叫んだ時には、何もかもが遅かった。
白黒の石から、禍々しくも神々しい光が爆発し、2人を巻き込みながら、光は天へと撃ち放たれる。雲を突き破り、宇宙と青空の境界に到達した瞬間、波紋状に星全体へと広がっていった。空一面に満天の星空の様な煌めきが振りまかれた後、光は消えていく。
光が落ち着くと、ようやく海芽は目を開けられるようになる。ゆっくりと周囲の状況を確認し、
「な、何が起きたの……?」
困惑しながら立ち上がる。
その時、身体の前に重い物が付いている感覚に襲われた。前に倒れそうになるのをグッと堪え、態勢を立て直す。
「? なんだろう、身体が重い……」
おもむろに下を向くと、そこには大きく膨らんだ、自分自身のお腹があった。
まるでお腹にスイカでも入っているかのように、丸々と大きくなったお腹は、臨月の妊婦のようだ。
「…………へ?」
情けない声を上げる海芽だったが、この現象は、世界各地で同時多発で起こっていた。
世界中の適齢の女性が、一斉に『ボテ腹』になったのだ。
何が起きたのか、理解する間もなく、また異常事態が発生する。
『あー、もしもし、人間界の皆様、聞こえてますでしょうかー?』
今度は空から声が響いてきたのだ。それも美しい女性の声だ。
『先程『狼煙』が上がりましたので、今から次代の女神を決める『母神胎戦』を開催しまーす! 詳細は明日、適性のある人達にお伝えしますので、よろしくねー!』
言うだけ言って、声は消えてしまう。
次々と起こった突拍子もない事態に、海芽はポカーンとしながら、
「……どうなってんの、これ?」
呟くしかないのであった。