SakeTami
幽龍明刻
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モイライズアルカディア 第1話


 某所


 とある路地裏に、仕事帰りの女性が逃げ込んできた。


 慣れない靴で、息を上げながら、奥へ奥へと走る。


「無駄ですよ」


 そんな彼女の前に、突然フードを被った人物が現れた。声は中性的で、オーバーサイズの服を着ており、男女の判別ができない。


 女性は後退りながら、


「何なんですかあなた……!? 昼間から追いかけ回して……! 警察を呼びますよ?!」


 目の前の人物を睨む。フードの人物は、そんなことを意に介さず、女性に向けて手をかざす。


「呼んでもいいよ。そんな余裕もなくなるだろうけど」


 次の瞬間、かざした手が光り、女性に向かって飛んで行く。光は怪しく光るピンク色で、どこかなまめかしい雰囲気を持っている。


 飛んで行った光は、女性の腹部に当たり、ジワジワと浸透していく。


「ここからは奇跡の時間だ。『プレグネイション・バースト』」


 そうフードの人物が呟くと、女性のお腹が一気に膨れ上がった。


 ボン!!! という音を上げ、服を破ってバランスボール並みの大きさに膨らむ。まるで臨月の妊婦、それ以上の大きさに到達している。


「え?」


 彼女が理解する間もなく、腹は更に膨らんだ。


 ボン!! ボン!! と、大きくなり続け、あっという間にお腹が自身の身体より大きくなる。それと同時に、股間にある女性器から大量の潮が噴出した。


「お、ごおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?♥♥♥♥♥」


 あまりの快楽に嬌声を上げ、真っ赤なアヘ顔を晒しながらビクビクと痙攣する。


 潮吹きは断続的に噴出し、全身を仰け反らせた。同時に、胸も膨らみ始め、服を突き破り、Zカップを軽々と超える大きさにまで成長する。成長した乳房から母乳が壊れたシャワーの様に発射され、周囲は彼女の恥辱の体液でビシャビシャに濡れてしまった。


「あ、お」


 短い言葉を最後に、白目を向いて気絶してしまう。


 お腹は自身の身体より大きくなったのを最後に膨張を止め、乳房もZカップよりも少し大きいくらいで成長を止めた。


 その様子を見ていたフードの人物は、舌打ちをする。


「ハズレか……」


 それだけ言い残して、その場を後にした。


 残された彼女は、大きく変異した体のまま、放置されるのだった。



 ◆◆◆



 ジリリリ、と、やかましい目覚まし時計がなる。


 

 ベットに眠る少女は、手だけ伸ばして目覚まし時計を止める。


 目を開けると、締めてあるカーテンごしに、朝日がぼんやりと目に入ってきた。


 大きめの布団をまくり上げ、身体を起こし、カーテンを開ける。朝日を受けながら大きく伸びをし、欠伸をした。


「ふああ~……。なんか変な夢を見た様な……」


 紫色の瞳を擦り、ボサボサになった茶色のショートヘアを整え、身支度を済ませる。


 顔を洗い、朝食を食べ、学校へ行く準備を完了し、


「いってきまーす!」


 自宅から飛び出す様に外へ出て行くのだった。



 ここは『孕魅ヶ胎《はらみがはら》市』。山々に囲まれ、大きな川が流れているだけの平凡な街だ。



 そんな街で暮らす一人の少女『原御原 海芽《はらみはら うみめ》』は、今日も普通の日常を送っている。


 


 海芽が学校へ向かう途中、


「おはよー海芽」

「おはようございます、海芽さん」

「おはよう嗣子《つぐこ》! 朱羽《あけは》!」


 友人2人と合流した。


 『沢山 嗣子』と『御門城 朱羽』。彼女達とは、3年来の友人関係にある。


「海芽、今日のテレビ見た? 女の人襲われたヤバいやつ」

「あー、見てない」

「昨日未明、この街で女性が襲われたそうです。幸い命に別状はないそうですが、犯人は逃亡中で、見つかってないみたいですよ」

「うへえ、今日バイトなのになあ……」

「犯人捕まるまで休んじゃえば?」

「それは他の子に迷惑掛かっちゃうから気が引けるなあ」

「海芽さんは真面目ですね。行くのだとしたら、十分に気を付けて下さいね」

「はーい」


 そんな他愛もない会話をしながら、学校へ向かう3人だった。



 ◆◆◆



 晴天に恵まれた昼間



 孕魅ヶ胎市の建物の屋上を跳び回る人影がある。


 先日女性を襲ったフードの人物、それを追うスーツ姿の女性3人だ。常人ではありえない脚力でビルとビルの屋上を跳び移り、凄まじい速さの追いかけっこが繰り広げられる。


「こちら第3班、星を発見。現在追跡中。進路方向は北。応援求む」


 スーツ姿の女性の一人が、小型の無線機を使って応援を呼ぶ。それが聞こえていたのか、フードの人物は舌打ちをした。


(このままでは追い付かれる。この『宝』を渡す訳にはいかないというのに……!)


 心の中で悪態をつきながら、更に速度を上げて、追跡者達を巻こうと躍起になる。


 そんな異常事態が上空で起きているともつゆ知らず、街の住民達はいつもの日常を過ごしていた。



 ◆◆◆



 夕方



 放課後のチャイムが鳴る中、海芽は走ってバイト先へ向かっている。


「うわーん! 補習で遅れちゃったー! 急がないと!!」


 本日提出した宿題が全問不正解という失態を犯し、放課後の補習を受ける羽目になっていたのだ。


 そのため、バイトの時間までの余裕が無く、こうして全力で走って向かっている。


「このままじゃ確実に遅刻しちゃう……! そうだ!!」


 本来の道とは別の道へ進路を変え、小高い山のある方へ向かった。


「確か神社の横道を使えばショートカットになる! 神主さんに見つかったら怒られるけど!!」


 山にある小道に入り、一気に階段を駆け上がる。しばらく整備されていないせいで、あちこち草木が生え、ボロボロになっていた。


 そんな事には目もくれず走っていると、上の方からガサガサという音が近付いてい来る。


「? 何の音?」


 つい上を見た海芽。視界に入ったのは、ガラスケースが自分の目の前に落ちてくる光景だった。


「うおわ!?」


 突然の事態に驚きながら、咄嗟にガラスケースを掴む。幸い割れる事は無く、無事に海芽の胸の中に納まった。


「あ、危なあ。……ていうか、なにこれ?」


 掴んだガラスケースを見ると、中には白と黒のマーブル模様が施された、少し大きめの、楕円形をした宝石の様な物が入っている。怪しい光沢を放ちながら、ガラスケースの中でしっかり固定されていた。


(見たこと無い石……。宝石、じゃなさそうだし。何かの美術品かな? この前授業で見た作り物の石)


 色々と考察するが、結論は出ない。頭を悩ませ、どうしようかと考えを切り替えた時だった。


 今度は更に大きな音を立てて、フードを被った人物が降りてくる。あちこちボロボロになり、息がかなり上がっている状態だった。


 突然現れた人物に、海芽はさっきよりも驚き、数歩後退する。


「今度は何?!!」

「……おい、お前……。それを、返せ……!!!」


 フードの人物は急に海芽に向かって駆け出した。ここは山中にある細い小道。逃げ場はさっきまで走って来た足場の悪い古い階段のみ。


「なになになになになに!?!?!?」


 突然の事態に混乱しながらも、方向転換して階段を駆け下りる。



 それが全ての原因だった。



 海芽はボロボロになった石の階段の上にあった草木を踏み、大きく滑ってしまう。その拍子に、持っていたガラスケースを前へ落としてしまった。ガラスケースは回転しながら石の階段へ落下し、ものの見事に粉々に割れてしまう。


 ガシャーン!! という大きな音を上げて、中に入っていた白黒の石が飛び出してしまった。


「あ」

「貴様! 何という!!」


 フードの人物が叫んだ時には、何もかもが遅かった。


 白黒の石から、禍々しくも神々しい光が爆発し、2人を巻き込みながら、光は天へと撃ち放たれる。雲を突き破り、宇宙と青空の境界に到達した瞬間、波紋状に星全体へと広がっていった。空一面に満天の星空の様な煌めきが振りまかれた後、光は消えていく。


 光が落ち着くと、ようやく海芽は目を開けられるようになる。ゆっくりと周囲の状況を確認し、


「な、何が起きたの……?」


 困惑しながら立ち上がる。


 その時、身体の前に重い物が付いている感覚に襲われた。前に倒れそうになるのをグッと堪え、態勢を立て直す。


「? なんだろう、身体が重い……」


 おもむろに下を向くと、そこには大きく膨らんだ、自分自身のお腹があった。


 まるでお腹にスイカでも入っているかのように、丸々と大きくなったお腹は、臨月の妊婦のようだ。


「…………へ?」



 情けない声を上げる海芽だったが、この現象は、世界各地で同時多発で起こっていた。



 世界中の適齢の女性が、一斉に『ボテ腹』になったのだ。



 何が起きたのか、理解する間もなく、また異常事態が発生する。



『あー、もしもし、人間界の皆様、聞こえてますでしょうかー?』


 今度は空から声が響いてきたのだ。それも美しい女性の声だ。


『先程『狼煙』が上がりましたので、今から次代の女神を決める『母神胎戦』を開催しまーす! 詳細は明日、適性のある人達にお伝えしますので、よろしくねー!』


 言うだけ言って、声は消えてしまう。


 次々と起こった突拍子もない事態に、海芽はポカーンとしながら、


「……どうなってんの、これ?」


 呟くしかないのであった。




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