枯れ木に花を咲かせる老人
Added 2020-07-17 13:37:01 +0000 UTC先日配信しました朗読営業の台本をアップさせていただきます。
本編は現在非公開中です。近日中に編集して公開する予定です。
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これはかなり昔の話なのですが、とある田舎のカントリーハウスにご高齢の夫妻が在住しておりました。
聴いた話によれば、この夫妻はとても人柄のよいお二人だそうで、休日はゴミ拾いや花壇の世話、ホームレスへの炊き出しなどのボランティア活動を日々行っていました。
朝は笑顔で挨拶をしてくれると近隣住民からもとても評判の良いお二人だったそうです。
ただ、お二人の間には子どもはなく、かわりに犬を飼い白と名付けてとても可愛がっていたそうです。とてもいいですね。
そしてその隣にもまたご高齢のご夫妻が住んでいたのですが、まぁ触れなくてもいいんじゃないか、逆に触れてあげるないのが新設ってぐらいの欲深いジジイとババアでして、ジジイは脱法ハーブ、ババアは闇風俗の元締めとして村の闇社会を牛耳っていたとかいないとか。
ある日、前者のハートフルおじいさんが畑をくわでほりかえしているとついて来ていた犬の白が前足で土を掘り返していました。
思えば白を拾ってから数年が経ちました。
最初は雑居ビルの合間に捨てられ、土砂降りの雨に打たれて弱っていた小さな子犬だった白も今では元気に駆け回るようになりました。白は掘り返しながら吠えました。
「dig here バウバウ!」
ちなみに白の犬種はドーベルマンです。
犬が人語を介してまでおじいさんに伝えたかった想いは、英語が分からないお爺さんのシックスセンスにビシビシと伝わりました。
「何だか分からないんすけどここを掘削するべきだと感じましたねわたしゃ」
動物の死体とか出たら嫌だなぁ。わしデリケートだからそういうの見たら夢にでるし。と内心思いながらも
白が指した場所に鍬を入れてみるとカチリと音がして、キラキラと光るものが見えました。ずんずん掘ってみると、なんと中からは黄金に輝く小判やお正月限定たまごっち、キン肉マンマッスルタッグマッチ、ボスデザイン採用者限定ロックマンシリーズカートリッジ、一茶などプレミア価格が付加された財宝が出てきました。
ピュアおじいさんおばあさんはそれらを売り払いそれを元手にFXをはじめ急にお金持ちになりました。
それを面白がらないのが隣の反社爺婆です。
あまり気持ちのいい話ではないので省略しますが、この爺婆はお隣の飼い犬である白を撲殺したのです。
やはり闇社会を生きてきただけあってドーベルを手刀で仕留める程の技をあの婆は持っていたのでした。
最愛の犬、白を殺されペットロス状態に陥ったお爺さんたちはせめてもの供養のため、おらが庭の隅に白の亡骸を埋めて墓石の代わりにちいさい松の木を植えてあげると、その木はぐんぐんと育ち立派な一本のごん太な松の木になりました。
「これは白の形見です。この木で臼と杵を作って寒村の感動エピソードを加味させた餅を開発すれば広告会社も黙っては無いでしょう」
と大粒の涙を流しながらピュア爺は木を伐り、臼と杵をこしらえ米を入れ餅をつこうとしました。
しかし不思議なことに米が餅と化しません。
一般的に餅は炊いた米を木製のハンマーで突くことにより餅へと変異を遂げるのですが、何十回何百回と突くたびにパラパラの米が臼から敷いてあったブルーシートの上へ零れ落ちるだけでした。
「なんやこれ。ついてもついても餅にならへん。米の品質が悪いんちゃうか?」
婆がよくよく見てみると自分たちが餅にしようとした米以上の米が溢れていることに気づき、どうやらこの見ず知らずの米は杵ハンマーで臼を叩くごとに凹みから湧き出るものだと発見しました。
よき爺と婆はマジ?と驚きましたがお米を沢山得て、更に裕福になりました。
それを面白く思わないのはやはりグレー爺婆です。
「なんやそれ。おもろいもん持っとるやん。どれワシにかしてみい」
「いや、なんだかあなたに貸してしまうと臼を壊されてしまいそうな気がしますので嫌です」
「は?そんなことするわけないやろ。10倍にして返してやるわ」
ピュア爺の癖に立てついたことへ立腹したグレ爺はその場で臼を杵で突き、臼は真っ二つに割れ杵は膝を利用しこれもまた真っ二つにしてぽぅいっとその場で捨てました。
グレ爺はペッと唾を吐き捨てて家へ帰っていきました。
一度ならず二度までも大切なものを奪われたピュア爺の気持ちはマジ凹み。
しかし強靭的なポジティブシンキングのピュア爺さんは気持ちを切り替えて、その臼と杵だったものを丁寧に火葬し、その灰を持って白の墓の前へ行きました。どうやらイベントが発生しそうな気がしたからです。
すると温かい風が南の方から吹いてきます。
灰が枯れ木にかかります。
花が咲きます。
枯れ木だったのに。
その様子を偶然にもそこらで四つん這いになり馬の被り物をした武士と、それにまたがってかっぽかっぽおうまさんごっこしていた殿様が見ていました。
「は?なにアレ。マジできれいじゃん」
「うっわ。マジでやばいですね。ちょっと話を聞きに行ってみましょう」
家来にまたがったバカ殿を見てたじろいだピュア爺でしたが、拙者、征夷代将軍、水戸のなんちゃら…と気高く自己紹介されたので政治に疎い爺でしたがすぐに身分の高いお方だと分かりました。
「あのう、その灰さわらせてもらっても良いですか?」
「どうぞどうぞ。好きなだけおさわりください。なんだったら枯れ木にかけちゃってもいいですよ」
「えっマジっすか。うわっめっちゃ咲くやん。万田酵素より効くんちゃうかコレ」
などとわいわいキャッキャと良い歳のテンションをバカ高く騒ぎ歩いた。
乱痴気騒ぎをしながら町中の枯れ木に花を咲かせまくった三人は疲れ果て、青々とした野原でピュア爺、バカ殿、馬役の家来が寝転がって天空を眺めなていました。
そしてバカ殿がぽつりと
「オレ、今日の事ぜったい忘れねぇ」
と空高く昇る太陽に向かって拳を掲げました。
「身分とかそういうの取っ払って遊んでるのってオレらだけだよなっ」
みたいな事を言ったのちにバカ殿は身に着けていた高価なものをピュア爺に授けパカラパカラと言いながら帰っていきました。
一連の遊びは全く羨ましくないのですが、貰ったものに対してとても羨んでいたグレ爺はピュア爺の灰をこっそり盗み、自分もあの程度の事なら簡単に成し遂げてすぐに財を成してやると対抗心を燃やしました。
するとタイミング良く枯れ木の前に今度はしっかりとしたまるで競走馬のような筋肉質の馬に乗った大名行列が現れたので
「もし、よろしいですか。私であればこの枯れ木に花を咲かせることができます」
と前置きもなくいきなり現れたので偉い人を取り巻く家来達は一斉に刀を抜き臨戦態勢をとった。
「まぁ見てなさいな。ホレ枯れ木に花を咲かせましょう」
と灰を枯れ木にかけたのですが、いくらかけても花は咲きません。
それどころか灰は風にのって大名行列のスタッフ達の目や鼻腔に侵入しひどく不快にさせました。
「やはり目くらましであったか。斬れ」
はっ。
偉い人が支持を与えて家来の一人が刀を振るい、斬りつけられたグレ爺はその場で絶命したのですが、しばらくたってから灰に含まれる細胞活性化ウイルスが突然変異したものが傷口から侵入して、グレ爺は動く死体になり、その後江戸で大混乱を引き起こす事件へ発展するのですがそれはまた別のお話。
欲張ることで財を成しても、正直でいなければ人を幸せにできない。そう心がけて生きていきたいものです。